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      photography Jane Helpern 13 January, 2017

      ボウイの公認フォトグラファー:ミック・ロック

      伝説の写真家ミック・ロックに、「ジギー・スターダストの誕生」について聞いた。デヴィッド・ボウイが自身のメイクにかける時間とは?

      1972年、星の王子様が地球に舞い降り、ロックンロールの世界を永遠に変えた。アルバム『ジギー・スターダスト』がリリースされ、そのサウンドと合わせて、ジェンダーの概念をいとも簡単に超え、さらに人間と異星人との違いすらも曖昧にした輝くスター、デヴィッド・ボウイが世界に激震を与えたのだ。グラマラスを極めたボウイの世界観は、写真家ミック・ロックの力によるところも大きかった。「70年代を撮った男」として知らる彼は、ケンブリッジ卒のイギリス人。キャリアの初期には雑誌『Oz』でフォトジャーナリストとして従事した。ミックは、イギー・ポップやデヴィッド・ボウイ、ルー・リードなど、彼がアイドルと崇めたスターたちと仲良くなり、次第に多くの時間を共にするようになった--それが結果的に歴史のドキュメントになったというわけだ。それから40年以上経った2015年、ミックは冊数限定の写真集をリリースした。『The Rise of David Bowie: 1972-1973』には、彼がボウイの公認カメラマン(ミック曰く、この「公認」の定義はいたって曖昧だったそう)だった1972年から1973年までに撮られ、これまで公開されることがなかった数百枚に及ぶ写真が収められている。1972冊のみが印刷・出版されるといい、すべてにボウイとミックが手書きのサインを添えられている。

      i-Dはロサンゼルスのルーズベルト・ホテルでミックと会い、ボウイについて、ファックス発明以前の世の中で好きなように生きることについて、そして最新写真集と、ロサンゼルスのギャラリーTaschen Galleryで開催されるエキシビション『Shooting for Stardust: David Bowie and Co.』について話を聞いた。

      あなたはボウイの「公認」カメラマンだったそうですが、それはどういうことだったのでしょうか?
      レコード・レーベルは専属カメラマンを使いたい、でもアーティストは自分が個人的に知っているカメラマンを起用したい--あの頃は誰も私の撮影に対して金を払っていなかった。デヴィッド(・ボウイ)のマネージャーは、私に限らず誰にも報酬を支払ったことなんてなかったよ。でも、私とデヴィッドはいい友達関係を築いていて、周囲もそこに興味を示すようになってきた。デヴィッドのキャリア初期、ある撮影をしていて--それがあの鏡を使った写真なんだけど、撮影のときにデヴィッドがマネージャーにこう言ったんだ。「僕が思う僕を撮れるのはミックだけだ」って。あそこで何かが変わった。その直後に依頼を受けて、私はアメリカまで彼らと同行したんだ。相変わらずギャラは出なかったけど、すべての経費はデヴィッドのマネージメント持ちだったよ。金じゃなかったんだ--それにあの頃は生きるのに今ほどお金は必要じゃなかったしね。

      ということは、あなたは公認の非公認カメラマンだったわけですね?
      手配できるカメラマンが私しかいなかったというのもあるだろうけどね。メディアと呼べるような体制もないに等しかったし。あの頃は、「無名のアーティストが公認カメラマンをつける」というアイデアがもてはやされてね。それが話題作りの一環だったんだ。プラザ・ホテルで撮った写真で、ボウイが全身白で固めているのがあるだろう?警備員が3人、彼を取り囲んでる写真だよ。あの写真を撮ったときには、誰一人として彼を知る者なんかいなかったから、ボウイが道を歩いていても騒ぎなんか起きなかった。ところがツアーを終える頃には、彼はスターになっていたんだ。イギリスへ帰ると、もうスーパースターの扱いでね。今になって当時の写真を見ていると、ツアー序盤はただステージのボウイをボーッと見つめていただけの観客が、ツアーの終盤になるとボウイに少しでも近づいて、あわよくば触れたいと、ステージに上っていたりするんだ。

      あなたはこれまで、「私はボウイのイメージを守る責任がある」というような発言をしていますが、その意味について詳しく教えてください。
      私だけでなく、他にも多くの写真家が生前のボウイを撮っていて、私たちカメラマンは全員が彼のイメージを守る責任を負っているんだと思う。写真を撮るときに--私は、正直なところ、エディターが私の写真をどう思おうがまったく考えないんだ。イギーやルー、デヴィッドがどう思うかにしか興味がなかった。あれだけ際立った個性を持ったひとたちといると、私は自分自身を彼らに投影することができた。僕が作るものを喜んでもらいたくてね。私には、「今後も絶対に公開しない」と心に固く決めている写真がたくさんある。極貧だった時代にも、それらの写真を売ろうなんて考えなかった。私は、彼らが大好きだし、親しい関係を築かせてくれた彼らにとても感謝しているんだ。メディアは興味深いストーリーを伝えようと、例えば私のような人間を利用する。私は、アーティストたちの作品をより興味深く見せようと、写真を通して実際とは違う世界を表現する。そういった表現は、アーティストの作品に関わったすべての人々、それを報じた人々のイメージに色をつける--それがメディアというものなんだ。それを理解した上で、やはりそこにはある程度の責任がついてまわると信じているんだよ。

      電車の中でボウイとミック・ロンソンが食事をしている写真が大きな話題となっていますが、なぜなのでしょうか?
      なぜなんだろうね......逆に教えてほしいよ!考えられる理由のひとつは、エキゾチックなふたりがあまりにも日常的な風景の中にいて、あまりにも俗世的なものを食べているところかな。デヴィッドに眉毛がないというのもシュールさに拍車をかけているだろうけどね。デヴィッドはね、昨日まであった眉毛が、次の日にはなくなっていたりする--そういうひとだった。あの写真は、私が作ったボウイの写真集『Moonage Daydream』で最初に公開したもので、当時はそれほど強烈な印象を与える写真だとは思っていなかったんだけど--あの本は、私の写真集の中でも飛び抜けて売れたんだ。ちょっと変わった本だよね。あの写真には、もうひとつの要素があるんだと思う。ふたりが交わしている眼差しには、どこか共謀のニュアンスがあるよね?ロックンロールってものを揺るがしてやろうぜっていうね。あの写真は、発表と同時に多くのメディアに取り上げられたよ。

      みんなが知りたいと思っているはずなので、単刀直入に訊きます――ボウイは、あのルックスを作り上げるのにいつもどのくらいの時間をかけていたのですか?
      メイクはほとんど自分でやってたね。今回の写真集では、デヴィッドがパフォーマンス前に準備をしている写真がたくさん収められているよ。特に気に入っているのは、マスクを引き裂きそうになっている瞬間の写真。実際にはもちろん引き裂くようなことはなかったけどね。いつもそれなりに時間をかけて準備をしていたけど、回を重ねるごとに手際が良くなっていってた。髪型にはこだわりがあって、マーク・ロンソンの妻でデヴィッドのワードローブを担当していた女性がいつもヘアメイクや衣装の手伝いをしていたね。コスチュームを次から次へと新しく考えるアーティストだったな--数えてみたら、あの20ヶ月間で、私はなんと74スタイルもの衣装を着たデヴィッドを撮っていたよ。

      あなたの写真は、徐々に評価を高めて、現在は人気最高潮ですね。なぜそうなったのでしょうか?
      ロック・フォトグラファーが有名になるなんてこと、昔じゃ考えられなかったんだよ。誰もカメラマンに興味なんか示さなかった。インターネットが登場して、一般的に普及を見せた。1996年に心臓のバイパス手術をした後ぐらいから、クラシック・ロック写真がネット上で人気が出はじめて、ギャラリーがそれを取り上げるようになった。そうなってくると、もうムーブメントだったね。どんどん広がっていって、私の名前も知れ渡った。私の写真には、シド・ヴィシャスからルー・リード、イギー・ポップ、デヴィッド・ボウイ、そしてデビー・ハリーといった、"現代でも人々に影響を与え続けているアーティスト"が多く写っているしね。誰にでも運命というものがあるんだと思う。でも誰もがその運命を最大限に生かせるとは限らない。私の場合は、まず名前が「ミック・ロック」だろう?この名前を授かっていてロック写真を撮らない手はないよね。

      今後はどのようなプロジェクトを?
      まずはボウイの写真集が出る。この本を出せるのが心底嬉しいんだ。全体の4割がこれまで未発表だった写真でね。それと、私を追ったVICEのドキュメンタリー映像が公開される。Ovation TVでの『On the Record with Mick Rock』の撮影も始まる。私個人としては猫の写真集を作りたいとずっと考えてるんだけど、周りは私に「ロックな本をもっと」って言うんだ。

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      taschen.com

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      Credits

      Text Jane Helpern
      Images courtesy Taschen
      Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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      Topics:photography, culture, david bowie, mick rock, 70s, the rise of david bowie

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