「可能性を狭めずに写真を撮っていきたい」:フォトグラファー上田桐子と吉田圭佑が語るKEISUKEYOSHIDA 2019SS ルックブック

KEISUKEYOSHIDAのデザイナー吉田圭佑が2019SSのルック撮影に声をかけたのは、セントマに在学中のフォトグラファー上田桐子だった。ブランドにターニングポイントをもたらしたこの取り組みの舞台裏を二人に語ってもらった。

by Tatsuya Yamaguchi
|
21 December 2018, 7:03am

2019年春夏コレクションのAmazon Fashion Week Tokyoでショーをするブランドリストに、これまで継続して参加してきたKEISUKEYOSHIDAの名はなかった。とある会場で再会したデザイナーの吉田圭佑に尋ねると、今季はルックブックと展示会だけでプレゼンテーションするという。さらに、新たなコレクションの制作に取り掛かる当初からショー以外の発表方法を模索していたことと、セントラル・セント・マーチンズ(CSM)のファッション・コミュニケーション&プロモーションコースの最終学年に在籍中だというフォトグラファー上田桐子の、傑出したセンスに惹き込まれているのだと話してくれた。彼が撮影のために、初めてロンドンに降り立つ数週間前のことだ。

前シーズンのショー終わりに「ファッションは新鮮なものが大事」だと語っていた吉田。「展示会を数日後に控えていて、アトリエのスタッフたちには引き止められた」というロンドン行きを断行し、ルックブックという従来的なフォーマットでの発表にこだわった理由は、彼なりの“新鮮さ”の追求なのだろうか? ブランドの新しいフェーズを感じさせる取り組みについて話を訊く約束をその場で取り付け、後日、ロンドンにいる上田と、東京にいる吉田がチャットを通じて語り合った。

1545375094419-IMG_6154
1545375133611-IMG_6153

——早速ですが、吉田さんはいつ上田さんの存在を知ったのですか?

吉田:現在、CSMのBAの最終学年でファッションニットを勉強している児玉耀(ひかる)という立教大学時代の後輩に「今のセントマの子たちは誰に撮ってもらっているの?」とラインしたんです。それで送られてきたフォトグラファーのInstagramのアカウントのなかに桐子さんがいて。
上田:そうだったんですね。耀くんとは昨日もばったりマーケットで会いましたよ。
吉田:そうなんだ(笑)。桐子さんにお願いしようと思った決め手は、Instagramにポストされていた裸婦とピアノの写真でした。

上田:嬉しいです! これは以前住んでいたウェアハウスで撮ったもので、友達に紹介されたデザイナーの卒業コレクションですね。
吉田:どこか「情緒」のある感じが今季のコレクションに合うだろうと直感したし、いわゆるルックブックのフォーマットで撮ることは初めから決めていました。

1545375490821-IMG_6150
1545375462886-IMG_6149

——ブランドの歩みとして、ショーを休止してロンドンでのルック撮影に注力した変化のシーズン。ルックブックにこだわった理由を教えてください。

吉田:国内でのショーは、たくさんのプロに助けてもらいながらも、同じフォーマットの規模感でしかできないもどかしさを感じていました。それはそれで最高なのですが、今季は振り切って、自分が行ったことのない場所で、自分より若いチームでやりたかったんです。自分の作品がどう見られるのかも気になるし、ある意味丸投げしちゃおうと。
上田:それでロンドンに来たんですね。

——デザインへの向き合い方で変わった部分はありますか?

吉田:めっちゃあります。このシーズンを挟んで一番良かったと思ったのは、ここ2シーズンくらいモヤモヤしていた“やったろ感”をなくせたことですね(笑)。それと、スタイルやシェイプ、コンセプトから離れて、服とスタイリングをベースにしてデザインする隙を作ったこと。コレクションをつくる姿勢の変化として、いい意味で転換になりましたね。

1545375511099-IMG_6142

——撮影は、かなり弾丸だったようですね。お二人の初対面もロンドンですか?

吉田:はい。僕がロンドンに到着した、撮影の2日前に初めて会って、近くのパブで軽いミーティングをしました。会ってすぐに意気投合しましたよね(笑)。デザイン画とサンプルの写真、ざっくりとしたイメージは事前に送っていましたけど、東京を出発する前に決まっていたのはスタイリングとモデルだけ。メイクさんがいないことに気付いたのもロンドンに行ってからでした(笑)。
上田:そのテンションが逆に良かった気がします。ロンドンは日が暮れるのが4時頃なので、撮影日が1日しかない状況で全部撮りきれるのかなという話にもなったり。前日に一緒にロケハンしたんですが、場所は耀くん宅の周辺が良さそうだってなったのもパブでしたね。しかも、お手伝いも土壇場で何人か来てくれて。
吉田:うん。〈ここのがっこう〉の同級生やCSMに通う子たちなど、続々と人が集まってなんか文化祭みたいな楽しさがありましたね。

1545375375605-IMG_6147

——ビジュアルの方向性を共有するために、現地でどのようなコミュニケーションがあったんですか?

吉田:僕が桐子さんに唯一お願いしたのは、「同じ距離で立っている」ことだけは崩さないでほしい、と。
上田:そうでしたね。ストレートなルックブックを今まで撮ったことがあまりなかったので、モデルとの距離感や、いつもは実験的に撮っている構図や角度など、これまでとほぼ逆の発想が必要でした。そういう制限は、私にとって新鮮な経験でしたね。全部のルックが違うロケーションだったから同じ距離感という構図がすごく映えたんだと思います。

——場所は、屋外と屋内がありますね。

上田:あれはアクシデントだったんです。
吉田:そう。すべて外で撮る予定だったんですけど、当日すごく寒くて、モデルの子に風邪を引くとごねられて(笑)。
上田:モデルも頑固! でも、アクシンデントも含めた制約の中、屋内で場所を探して撮れたのは良かったですよね。友達の部屋に侵入してベッドの上で撮ったり。あの写真、好きです。
吉田:結果的にすごく良かった。彼らがあの家に住んでいてくれたことが奇跡。もしこの状況が日本だったらアパートだから、ぞっとしますよね(笑)。

1545375405039-IMG_6148

——これまでのKEISUKEYOSHIDAにはない光も印象的でした。「ロンドンは光の表情が違う」というフォトグラファーもいます。やはり東京の環境とは異なりますか?

上田:たしかに光が違うかも。ロンドンは色がくすんでいるような気がします。日本の方が青空の色が濃い気がするし、彼氏が日本に来たとき、建築を含めた風景がカラフルだって驚いていました。ターナーとかの画家をとっても、イギリスは色がどんより寂しい感ありますよね。
吉田:言葉にするのは難しいけど、確かに日本の「どんより」とは違いましたね。東京の景色は情報量が多くて、ノイジー。日本に帰ってきた日に新宿を歩いていて、うるさいなと思いました。今回はテーマに、「生きているか死んでいるかわからない」という空気があって、それもロンドンが合うだろうと思った理由の一つでした。メイクの表現にもつながりますが、日本のホラー的な怖いじゃなくて、寂しい質感が良かったんです。

——モデルのキャスティングにも今季のテーマは反映されていますか?

吉田:そうですね。また情緒の話になりますけど、彼女が、本当にロンドンのそこらへんに住んでいそうだから良かった。コレクションにメンズウェア的なアプローチもあったし、性差を感じない方が良い。桐子さんが紹介してくれた素人の方なんですけど、プロのようにピシッと決められたら、むしろ生き生きしちゃいますからね。
上田:たしかに。坊主なのもよかったですね。ポーズをとらないでただ立ってくれる人だったし、後半寒くてふてくされてきたときも良かった。

1545375636891-IMG_6145

——上田さんは今後、フォトグラファーの道を歩まれていくのですか? 例えばいま、傾倒しているテーマがあれば教えてください。

上田:フォトグラファーとして進んでいきたいと思っていますが、ファッション写真にこだわる気はありません。最近は、いわゆる伝説上の生き物とか昔ばなしのキャラクターの心理に興味があって、どこかクラフト感のあるアプローチが好きで、昨日は影絵劇場を友達と作って人形作りから撮影までして面白かったです。いろいろな組み合わせを追求したいし、可能性を狭めずに写真を撮っていきたいと思っています。

——最後に吉田さん、デザイナーとして見据えている次のステージとかありますか?

吉田:最近、KEISUKEYOSHIDAは僕自身もどこに向かっているのかよくわからないというのが裏コンセプトなんじゃないかと思っていて。言わば、僕のサクセスストーリーのような。今季は頑なにロンドンにこだわって本当に良かった。ロンドンありきのコレクションと言っても過言じゃないかもしれませんし、ブランドにとっても良いターニングポイントになりました。だからまさに今、新鮮な気持ちで、こんな自信満々に来季のデザインをしているのは久しぶり。僕自身が常に“新鮮さ”を追いながら、もがいて、もがきながら、彷徨っていたい。そうやって泳いでいるうちに、気づいたらファッションの中心に辿り着けたら良いなと思っています……あ、桐子さんがゴム版でプリントを作ったTシャツ欲しいんだけど!
上田:嬉しい! 来週、東京に戻るときに持って帰りますよ。サイズは何です?

1545375553721-IMG_6146
1545375583312-IMG_6156
Tagged:
CSM
keisukeyoshida
Kirico Ueda