MOMENT JOONについて知っておくべき10のこと

韓国出身・大阪在住のラッパーMOMENT JOON a.k.a MOMENT。生きる上で感じる喜びや悲しみを独自の視点から表現し、現代にメッセージを送る彼の魅力に迫る。

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mar 27 2018, 6:45am

幼い頃からリリックを書き始め、ラップを続けたい一心で日本での生活を選んだMOMENT JOON。韓国での懲兵体験や日本での差別、恋人との日常など、自らの経験を落とし込んだ歌詞には現代社会が向き合うべきリアルが含まれている。挑発的なヒップホップから甘いR&B調のトラックを作り、リスナーの共感を得るMOMENTの生い立ちや日々感じていることを聞いた。

1. 日本留学のキッカケ
「ラップを始めたのは小学校の頃。LAに住んでいたときです。家に帰ってきて、誰も見てないところで歌詞を書いていました。韓国に戻ってからは友達と作ったミックステープを校内で売って、音楽のことばかり考えていました。自分の進路を考えたとき、音楽の道に行きたかったんですが、親の希望もあり大学受験することに。もともと日本語が好きだったので、韓国の現実から逃げる選択肢として日本留学を決めました」

2. 日本での大学生活を歌った『I LOVE HANDAI』
「大阪大学に通い初めて、日本の学生は受動的な人が多いと感じました。一番驚いたのは、学生会がないこと。韓国では、授業料や学内の様々な出来事に対して学生たちが自ら声を上げるのが一般的で、日本と比べて民主的な意識が強い。学生が不当な扱いを受けたときに、権利を守ってくれる人はいないのかと思って、自分で学生会を作ったこともあります。2年生になってから余裕ができたので、ラップを再開して完成した歌が『I LOVE HANDAI』です」

3. 3つの言語をミックスしたリリック
「韓国語・日本語・英語のどれが一番話しやすいかは、場面によって違います。イラっとしたときに出てくるのは英語。難しい概念を説明しようと思ったら、日本語が先に出ます。歌詞の中では、意識的に韓国語をあまり使わないようにしています。日本のリスナーにとって、英語って憧れだったりかっこいいフレーズになるんですけど、韓国語が入ってくると変に意識してしまうと思うので。それを狙って、挑発的な意味合いで入れることもありますけど」

4. 「ラッパー」「学生」という2つの顔
「今は大阪大学の大学院で音楽学を勉強しています。今は大学院に通っています。阪大生として求められる自分と、ラッパーとしてリスナーが求める自分がいるので、二重生活をしている気分。学生としての自分は外国人という弱い立場なので、そういうものを洗い流すためのラップが僕にとってはとても重要です。少しはつらいですが、こうやって2つの人生を生きていく中で僕のラップは作られています」

5. 日本の生活がインスピレーション源
「日本で生活する上で、日々感じることがメッセージとして歌詞に現れています。彼女はロシア人なんですけど、一緒に生活すると2人とも留学生で、日本社会や人々の外人に対する反応や扱を一緒に経験したり、またその中でも白人とアジア人で違うことを感じたりします。白人とアジア人で違った風に感じます。音楽面では、若いアーティストに惹かれていて、例えばコラボもしているGokou Kuyt(ゴコウ カイト)という千葉のラッパーがいて、彼の曲はエモーショナルなのにチャラくないんです。僕の場合は伝えたいメッセージがあるので悩みがあったりするんですけど、彼はやりたいことをやってる感じ」

6. 徴兵制度を終えて変わったこと
「社会から隔離されたところで生活していたので、ラップゲームに対する憧れが強くなりました。俺が誰よりも優秀であることを、誰かに認めてもらいたいという欲求もあって、徴兵が終わった直後に「Fight Club」という曲をリリースしています。それから、政府のことをもっと批判的に見るようになりました。国のせいで2年間もちゃんとした給料ももらえずに働いてたわけですから。人によっては自分の愛国精神を強くするかもしれないですけど、僕はその逆でした」

7. 大切なものは自分のストーリー
「ラッパーや曲を作っている人が"ヒップホップっていうものはこういうもんだ”の以外に他の話が出来ないのはダサいと思います。ネットで検索すれば分かるようなヒッポホップのカルチャーを曲に入れるよりも、自分だけの物語を入れていけばいい。あなたにしかできない話や他の人が歌ったら意味が分からなくなる話を歌ってほしい。そうでなきゃ、お前じゃなくて他の誰かが代わりに歌っても大丈夫じゃん?って思うので」

8. 夢は「移民者ラッパー」と呼ばれること
「日本では、よく”外人ラッパー”と呼ばれます。外人はいつまでも外のもので、日本社会の一部だと思っていないから。でも誰に何を言われようとも、僕が知っている社会は日本社会なのでここで生きていく。周りの人が求めている通りに生きていくのではなく、自分という存在を守りながら生きたいので、”移民者ラッパー”と呼ばれることで、僕みたいな立場にいる人や日本にいる人々に何かが伝わればいいなと思います」

9. 若者に伝えたいこと
「トレンドやサブカルチャーなどを見て、学んで、自分がより洗練された人間になってる気がすると思うんですけど、人間の深みっていうものは知識から生まれるものではなく、感じるところからだと思います。そういう意味で僕はとても恵まれています。ただ韓国人として韓国で生活していたら、そこまで強く感じなかったと思うんですけど、自分の人生のチョイスが自分自身を追い込んでしまった。兵役中に自殺も考えたし、日本に帰ってきて差別されたことが悔しくて悲しかった。だけどステージの上では、愛を感じて幸せになれた。そうやって何かを感じていると、人間は複雑になっていく。見て勉強することじゃないんです。ただそういう人々こそ、僕が言うことに興味を持ってくれると思うので、日本でどういうことが起きているのかを経験して、一部になってくれれば嬉しいです」

10. 今年アルバムをリリース予定
「夏のリリースに向けて、自分が移民者やアウトサイダーとして感じたことを伝えられるように作品を作っているところです。アルバムを発売する前にも、サウンドクラウドやYoutube上に数曲アップロード予定で、つい先日公開した『Effortlessly(簡単)』ではラップだけでなく映像を使って表現したいことを見せています」