縮れ毛と巻き毛、髪の文化

ニューヨークを拠点とする写真家サブリナ・サンティアゴが、多様性と個性をたたえるポートレイトシリーズを発表。

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nov 8 2018, 9:55am

サブリナ・サンティアゴは、幼い頃の家族旅行で、父親の使い捨てカメラをこっそり持ち出したことを今でも覚えている。「カメラを店に持っていって現像し、完成した写真を眺めるのが大好きでした」と彼女は当時を振り返る。最初のフィルムカメラを手に入れて以来、彼女は集中力を要するこのカメラを使い続けている。「自分が何を撮っているのか画面で確認できないのがいいんです。そのほうがずっと実験的だから。失敗することもありますが」とサブリナ。「フィルムを現像に出してしまったら、そのあとの1〜2日は不安と期待が半々ですが、この感覚なしでは生きていけません」

ニューヨーク大学を卒業したばかりの22歳のサブリナは、日常生活のなかの一瞬や、写真はいかに夢と現実の橋渡しをするのか、という疑問に興味を抱いている。そんなサブリナの最新シリーズ〈On Hair〉は現実に根ざしているが、その鮮やかな色彩や幻想的なトーンは、いかにも彼女らしい不思議な雰囲気を醸し出している。個性と文化的なアイデンティティを映し出すシリーズだ。「私にとって、髪はずっとパワーと個性の象徴であり続けています。私の写真を通して被写体の個性を引き立たせ、彼らの美しさを伝えたい」とサブリナ。「縮れ毛やカール、カラー、長さなど、髪にはそのひとのアイデンティティが表れます」

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「私にとって、髪とはアイデンティティを表し、自分を主張するもの。幼い頃から、私の髪は女性としてのパワーの象徴だと教えられてきた。この考えかたを思い切り楽しんで、髪からエネルギーを放つためにいろいろ工夫してみたい」-エル

ニューヨークのあちこちで3週間かけて撮影されたサブリナの写真には、それぞれ被写体の言葉が添えられている。このシリーズはポラロイドカメラ〈OneStep+〉の発売を記念したPolaroid Originals社とのコラボレーションだが、彼女は35mmフィルムやスーパー8での撮影も行なったという。ブルックリンで彼女に会い、最新シリーズについて詳しく訊いた。

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「今日はここにあるけれど、明日には抜けているかもしれない。髪は、そうやって生え変わっていくもの。触るな。これは僕の王冠なんだ」-クリスチャン「私にとって、髪は魂の延長。私が世界に発信し、世界から受信するためのアンテナ。アフロヘアでも編みこんでいても、私は自分自身を表現してる」-タージャ

ニューヨークのあちこちで3週間かけて撮影されたサブリナの写真には、それぞれ被写体の言葉が添えられている。このシリーズはポラロイドカメラ〈OneStep+〉の発売を記念したPolaroid Originals社とのコラボレーションだが、彼女は35mmフィルムやスーパー8での撮影も行なったという。ブルックリンで彼女に会い、最新シリーズについて詳しく訊いた。

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「ずっと髪を伸ばしてること、小さい頃の私、わたしと同じ父さんの巻き毛、古い写真に写るおばあちゃんのふわふわの白髪。そんな時を超えたつながりに感動する」ーパリス

——Polaroidから連絡が来たあと、どのように構想を練り、髪にフォーカスしようと決めたんですか?

以前ブルックリンのフラットブッシュで、アフリカ系カリブ移民の髪を撮るシリーズに取り組んでいたとき、4、5ヶ月かけて40件以上の美容室を訪ねました。そこで彼らの髪への想いについて話したんです。私にとって、髪は身体のなかでもっとも自分らしさを感じるパーツです。髪は私という存在の延長線上にあり、私が誰かの話題に出るときに必ずといっていいほど言及される、わかりやすい特徴なんです。例えば誰かが「ボリュームたっぷりのカーリーヘアで、デニムを履いた女の子」といったら、すぐに私のことだとわかります。ずっと髪について考えていたので、いつかじっくり取り組みたかったんです。

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「これまでに3回ポニーテールを切って寄付した」ーカミール

——モデルや被写体はどこで見つけたんですか?

キャスティングとスタイリングは全て自分でやったので、ひとつのトピックを深く掘り下げることができました。街で声をかけたり、Instagramで見つけたり、以前撮ったことのあるモデルもいます。でも私がいつも惹かれたのは髪でした。街でカミールを見かけたときは、思わず駆け寄りました。私が見たのは彼女の後ろ姿、彼女の髪だけです。腰まで届く三つ編みで、この子を呼び止めなきゃ、と直感したんです。「すごくステキな髪ね!」と話しかけました。

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「私の髪は、私のアイデンティティや先祖を反映している伝統的、儀礼的な体験を表すもの。出身地に関わらず、全ての黒人女性にとって、髪は文化を表す、自分自身の延長だと思う。髪にまつわる習慣、髪にかける時間、スタイリングは、ささやかな儀式のようなもの」ーアクア

——モデルのなかにはニューヨークを拠点とするクリエイターも何人かいたんですよね?

そうです。被写体のひとり、アクアはHouse of Aamaという新しいブランドを立ち上げたデザイナーです。アンジーは詩人、ライターで、モデル活動もしています。他にもモデルが2、3人、それからスケーターもいます。髪に思い入れのある様々な分野の人びとに出会えました。写真に添えた彼らの言葉から、彼ら自身のことや、髪を大切にする理由をより深く知ることができます。

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「「私の髪は、私のスタイルと同じで、何度も変化を繰り返してる。今は白髪が生えてきた」ーイサベラ「髪は私自身を表し、みんなが私だと認識するとても目立つパーツ。でも、変えたくなったらいつでも変えられるのもうれしい」ーエミリー

——このトピックやシリーズへの個人的な思い入れはありますか?

もちろんです。私の髪の多さはパキスタン人としての半面を、カールはプエルトリコ人としての半面を表している気がします。先ほどいった通り、髪はパワー、アイデンティティ、強さの象徴です。私たち女性は、髪と自分を同一視していると思います。例えば、髪の調子が良くないと理想の自分じゃない、とか。もちろん、ただの毛なんですけどね。髪はわかりやすい特徴であるだけでなく、他人にどう認識されるかにも関わってきます。撮影に協力してくれた友人のイサベラとエミリーはふたりともボブで、「私のボブは私自身」といっています。ヘアスタイルは私たちを別の場所へ連れていってくれたり、ファッションやスタイルのいち部になったりします。

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「6年前から髪には何も手を加えていない。いちばん純粋で自然な状態の自分の髪が好きになった。編みこんでない自分の髪を愛せるようになって、すごく解放された気分」ーブリア

——過去のシリーズ〈East Flatbush - Hair Culture〉について、もう少し詳しく教えてください。

サブカルチャーに興味があるので、ひとつの地域にフォーカスするのはとても楽しかったです。この地域の存在を知り、ジャマイカのすばらしい仲間と知り合い、シリーズを進めていくうちに夢中になりました。たくさんの知り合いができ、何度も美容院に通ってお客さんを撮りました。施術を受けている人びとはすごく無防備な状態です。特にアフロカリビアンの文化である編みこみをするときはなおさら。完成するまではベストな自分ではないと感じているはずですから、撮影させてくれた人びとは、〈アフロカリビアンの髪の美しさを最初から最後までカメラに収めたい〉という私の意図を、きちんと理解して受け入れてくれたんだと思います。私自身、自分を変えたくて縮毛矯正をしていた時期がありました。でもあるとき「待って、こんなの馬鹿げてる」って思ったんです。自分の文化や髪を大切にしなきゃ、と。ここ3年くらいはストレートにしていません。誰だってありのままの髪を受け入れられないときはあるでしょう。

——髪が重要なトピックだと思うのはなぜですか?

ひとりのモデルが、髪は文化とつながっている気がする、といっていました。髪は文化だけでなく宗教にも関係しています。聖書には、髪を大切にしている人びとの描写があります。髪は外見のいち部ですが、重要なのは見た目じゃない、と感じることもあります。自分の髪のカールからおばあちゃんの長い髪を思い出したり、髪の色から母親を思い出したり、髪はDNAを感じさせる。私たちを形づくるいち部なんです。

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「小さい頃、母は毎晩のように私と姉妹の髪にブラシをかけて編んでくれた。そのおかげで自分を心から愛し、他のひとの美しさを見出せるようになった。たくさんのすばらしい文化が混ざり合うなかで暮らす自分を誇れるようになったのも母のおかげ」ーダコタ
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「髪や体毛は私らしさを感じさせるもの。私をエンパワーし、自分の美しさに気づかせてくれる」-ジェニー

This article originally appeared on i-D US.