Fashion East MAN AW17:フル・ファンタジー

先シーズンでロンドンを沸かせたファッション・トリオが再結集した今季のMAN。中国に古くから伝わる「第六感」から、男性というセクシュアリティを夢遊のうちに解釈した世界、そしてトランプ大統領就任を目前に控えた地球から逃避を試みるクラブ・キッズまで、圧巻の世界が広がった。

by Charlotte Gush
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12 January 2017, 12:12pm

昨シーズンのFashion East MANを大いに盛り上げたデザイナー3人が今季2017年秋冬シーズンでもコレクションを発表した。チャールズ・ジェフリーにとっては3度目にして最後の参加となる今季MAN、特別なイベントとなることは間違いなかった。会場となったオールド・セルフリッジ・ホテルは熱狂的な雰囲気に包まれた。

スウェーデンのPer Götessonがショーのオープニングをつとめた。「Sleepwalkers」と名付けられたこのコレクション、「夢遊病患者」というタイトルが示す世界観をトニー・ホーネッカー(Tony Hornecker)が解釈し、セットのデザインにあたった。枕やマットレスを青いロープでくくりつけたインスタレーションが中心に置かれ、その周りをモデルが取り囲んだ。場内の照明が上がると、モデルたちは眠そうに起き上がり、ランウェイを歩いた。肌に張り付くほどタイトなヌードカラーのフード付きトップスには、フード部分から続く紐が胸の前、そして腹の前を通って裾まで続き、下にはオーバーサイズのパンツが、上にはオープンシャツが合わせられていた。Per Götessonのトレードマークともいえるオーバーサイズで荒削りなデニムも健在だったが、新たにデザインされたスリムカットのデニムもまた対照的で新鮮な世界観を打ち出していた。また、大胆な赤色のタータンやネイビーのパジャマなども強く新しい印象を与えた。

「身体に興味があるんです。僕にとっては、"惹かれる"ということがまず大事で、服に興奮を覚えるということが重要なんです」とデザイナーのPerはバックステージでi-Dに語った。「パジャマを見ていたら、なんだか覗き見をしているような興奮をおぼえたんです。それと、パジャマのトップスを着て歩いているひとを見かけて、その脱力した感じ、"人の目なんか気にしない"といった感じをいいなと思ったんです。あの寝間着感はたまらないですね」。官能的でロマンチックなコレクションだったが、Perは映像作家のプロスパー・ウンガー=ハミルトン(Prosper Unger-Hamilton)とともにこのコレクションを悪夢の視点で解釈した映像も制作している。薬やゾンビが出てくる映像だ。「物事にはかならず善悪の両面が潜んでいるんですよ」とPerは笑いながら語った。i-Dで初公開となる下の映像を、是非ともチェックしてほしい。

次に発表されたのは、Feng Chen Wangのコレクション。MANで2シーズン目となる今回のプレゼンテーションは、中国に古くから伝わる「第六感」をテーマとしていた。五感によって記憶された身体的体験を脳が解釈することで生じる、説明のつかない感覚を「第六感」としている。コレクションは官能的でありながら、同時に「保護」もテーマの一部となっていた。最初にランウェイへと登場したのは、ピーチ・カラーのタイトなトップスにピンクベージュのレザーYフロント、そしてバラのルーシュがあしらわれたレザーのガーターベルトというルック。そこからコレクションは徐々に官能の色を濃くしていった。切り離され、それがまたつなぎ合わされるショーツ/パンツや、蚕がたくさん付いたようなダウンジャケット、メタリック・シルバーやカナリア・イエロー、ガンメタル・グレー、ブラック、ホワイトといったカラーの80年代調スポーツ・ジャケットが重ねられたスタイルなどに、ホワイトのジップフロント・ハイヒールブーツが合わせられた。

「自分の身を守ろうとするとき、人間は手を使います。しかしそれも頭からの指示が伝達された結果なのです」とFengはバックステージで説明してくれた。「人間の体の動きに合わせたシルエットを作ろうと努めました。でもパターンはクレージーですよね。ひとつの洋服で、ひとつの体を包みました。十分な幅の生地が見つからなかったので、細い生地を縫い合わせて作ったんですよ。縫い目は内側にあるから外からは見えませんけどね」

ショーのフィナーレを飾ったのは、デザイナーのチャールズ・ジェフリーと、彼が率いるLOVERBOYのメンバーたちによるコレクション。これがチャールズにとって3度目にして最後のMANプレゼンテーションとなる。根っからのショーマンである彼は、今回、ダンス・カンパニー「セオ・アダムス・カンパニー」の振り付けで踊るパフォーマーたちの全身に泥を塗ってランウェイへと送り出した。彼らが会場の支柱を取り囲んで踊る中、アーティストでクリエイティブ・ディレクターであるゲイリー・カード(Gary Card)が作った女神のようなモンスターのような物体が、モデルたちに混じってランウェイを歩いた。

テーラリングを深く追求した印象が強く残った今回のコレクションについて、チャールズは「パタンナーたちを限界まで追い詰めました。歴史にインスピレーションを得てデザインしたスーツやジャンプスーツ、スカート、コートなどに、カットやドレープ、シルエットの新たな可能性を探ってもらったんです」と話す。それらのスタイルには、破かれたパルプ紙が用いられていたり、メトロポリタン美術館で彼が見てスケッチに残したシアリング付きフェンシング・ジャケットが独自の解釈をはさんで再現されたりしていた。

i-Dとともにニューヨークへを訪れ、LOVERBOYナイトを開催する様子を動画『Loveboy、ニューヨークをゆく』に収めたチャールズ。ニューヨークでは志を共にする仲間に出会い、彼らが唱えていた"フル・ファンタジー(Full Fantasy)"の世界に触発されたという。そして、それをそのまま今回のコレクションのテーマとタイトルに起用した。「フル・ファンタジーは、いま世界に起こっていることへのリアクション」と、チャールズはランウェイを歩いたモンスターの女神たちについて説明してくれた。モンスター女神4体のうちひとつは、ボディ部分に歪んだアメリカ国旗がペイントされ、泥に体を覆われたダンサーたちはそれに向かって嘔吐するように踊っていた。「"世界に起こっていること"とはもちろんイギリスのEU離脱とアメリカのトランプのこと。世界の現状を受けて『そうだ、そんな世界の化身を作って、それをランウェイで燃やしてしまおう』と考えたんだけど、許可が下りなかったんです!」

「メディアの言うことは信用していない。政治家たちのことも信用できない。それなら、完全なファンタジーの中に新たな世界を見つけようよ、と考えたんです。もう現実には見切りをつけてね。ニューヨークでクラブ・キッズたちがこの新たなコンセプトを現実のものにしていたんです。それを実践して、毎晩をファンタジーの世界に仕立て上げていた。『ドレスアップして夜を楽しむ』なんて次元じゃないんです。フル・ファンタジーは彼らにとって仕事であり、彼らはその世界を作り上げることに全身全霊であたっているんです」。2017年のクリエイティブなマニフェストは、私たちが必要としているときに開示された。

Credits


Text Charlotte Gush
Photography Finn Constantine
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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