Nico wears all clothing model's own. 

ロンドンのギラギラ輝く6人組、HMLTD

異様で奇妙、そして凶暴─ロンドンの音楽シーンに新たな息吹を生む6人組バンドHMLTD。ライブを控えたメンバーがi-Dのインタビューに応えた。

by Matthew Whitehouse
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06 June 2017, 8:40am

Nico wears all clothing model's own. 

想像してみてほしい。ロンドンの<Corsica Studios>─暗く熱い空間に、ジェンダーという枠組みを超えた6人のクラブ・キッズが、顔にはフルメイクをほどこし、全身ベルベットの装いで現れるところを。大きな音で音楽が響き、ギターはところどころ突拍子もない音をあげる。ボーカルは十字架にかけられたキリストをかたどったポリスチレン製の大きな人形を、観客に向かって投げる─それが、HMLTDのライブだ。

HMLTD(Happy Meal Ltd.)はロックの過去であり現在であり、そして未来でもある。大衆演芸場で奏でられる音楽あり、スパゲッティ・ウエスタン音楽あり、はたまたゲイクラブの雰囲気あり、快楽主義で破壊分子的な彼らの音楽は、デヴィッド・ボウイとトーキング・ヘッズ、アダム・アントを足して3で割ったような世界観だ。彼らは本物だ─そんな彼らがいま、イースト・ロンドンにある写真スタジオでわたしの前に座り、ポリスチレン製のキリストについて詳しい話を聞かせてくれている。

「あれは劇場にあった小道具だったから、『ロイヤル・ナショナル・シアターに返してやるぜ!』という気持ちで投げたんだ」と、ギターのデュークとジェイムズ、ドラムのアキレアス、ベースのニコ、キーボードのザックとともにHMLTDとして活動しているボーカルのヘンリーは笑って言う。「あの人形は7フィートもあるんだよ。ジ・オーバル(クリケット場)から地下鉄でエレファント&キャッスル駅まで自分で運んだんだ。なぜだか観客席に放り投げてしまって、気づいたときにはもうバラバラに壊れてたんだ。ナショナル・シアターには、『失くしました』って説明したよ」

Henry wears top and harness Dior Homme. Trousers, belt, boots and cap model's own.

HMLTDのショーが盛り上がりすぎてしまったのは、これが初めてではない。いま、スタジオのスポットライトから外れて座り、穏やかに話しているヘンリーだが、パフォーマンス時には取り憑かれたように目を見開き、『バットマン』に出てくるジョーカーのように不気味で豪快な笑みをみせる。彼を見ていると、2017年という時代にステージ上で唯一無二のキャラクターを打ち出すアーティストがいかに少ないかを痛感せずにいられない。ヘンリーの信者とも呼ぶべきファンたちが、彼の顔に似せたマスクをかぶり、キラキラと光る衣装を着て、ショーに現れる─それも当然のことのように思われるのだ。「思いもしないようなことがたくさん起こるよ」とヘンリーは認める。「ロンドンを離れて地方でショーをするとき、僕たちの世界観に合わせた服装で皆が来場してくれるのを見ると嬉しくなる。リーズでは、僕と同じ髪型にして来てくれた子がいたんだよ。あれはよかった。僕たちの周りにひとつのコミュニティができはじめているように感じるよ」

そんな現象が起こっているのは、HMLTDのメンバーがひとりとしてロンドン出身でないからなのかもしれない。テムズ川南岸で開かれたパーティで出会った彼ら─歴代の偉大なグループのほとんどがそうであるように、それもアウトサイダーの集まりだった。アキレアスはギリシャ出身、デュークはパリ出身、ヘンリーは「最近ではデヴォンに暮らしている」。田舎町に暮らす彼の姿が想像できない。「バンドをやりたいとはずっと思っていたし、それが確実にできるのはロンドンだけだと思ったんだ」とヘンリーは続ける。「どこに行ってもチャンスはあるだろうと思うけど、ロンドンにかぎっては確信があった。才能を開花させてくれる可能性に満ちているというかね」

Duke wears top McQ. Trousers and belt model's own.

そうしてできあがったのが、これまでにリリースされた2曲─ときに控えめに、ときに思い切りよくグラマラスな世界観が炸裂する「Is This What You Wanted」と、デス・グリップスの曲からのサンプリングが激しく繰り返される「Stained」だ。「Stained」のビデオは、現存のMVとしてはもっともグロテスクな作りの作品(ダルストンのVogue Fabricsで、狂乱のパーティのうちにローマ帝国が終焉するところを想像してみてほしい)だろう。「撮影場所にスタジオを再現したんだ」とヘンリーは説明する。「音楽だけじゃなく、プロジェクト全体としてひとつの世界観を作り上げられるようにね。アート作品として、より完成されたものを作り上げるにはほかのアート形式を取り入れる必要があった。音楽がプロジェクトの中心的な存在であることは変わらないけど、音楽だけでは成り立たない。もっと大きな世界観の一部として音楽があるんだ」

そのアートの背景にあるものとは、いったい何なのだろうか? 「インターネットの存在は大きい。インターネットが創作と消費文化にいかに寄与しているかということだね」とアキレアスが続ける。「インターネットの登場で創作も消費文化も劇的に変わった。消費はもはや、客が店に買いに店に行くという単純な構造じゃない。今は100本の矢が100の方向から客をめがけて飛んでくるような構造。この時代に何かを創作するなら、その発信の仕方として100本の矢を100の方向に放つしかない。そうしないことには、存在を外に示していけないんだ」

Achilleas wears jumpsuit and coat stylist's own. Necklaces Charles Jeffrey LOVERBOY.

HMLTDの素晴らしさは"音楽番組『トップ・オブ・ザ・ポップス』に取り上げられそうだが、起用されるにはちょっと奇妙すぎる─でも、スティーヴ・ハーレイ&コックニー・レベルやセンセーショナル・アレックス・ハーヴェイ・バンドなども起用されたのだから、やっぱり起用されてもおかしくない"と思わせるところにある。「メインストリームから外れたアーティストが陥りやすい傾向として、"自分たちのファンだけに延々と同じ世界観を提供し続ける"というものがある」とヘンリーは言う。「そういった限定的な世界に満足して、より広い世界での活躍の可能性を拒絶していると、結局ファンだけに届く作品しか作れなくなってしまう」

そうしたミュージシャンたちとHMLTDのあいだにある違いとは、いったい何なのだろう? 「そのひとつは、僕たちが作り出すスピード感と異様さだと思う」とアキレアスは話す。「ギターを弾いて曲をやって、クリーンなイメージを作り出しているようなミュージシャンはたくさんいる。それもいいけど、僕たちはそういうアーティストじゃない。そこに生まれるスピード感を排除せず、そこに漂う異様な感覚をも取り入れて自分たちのものにしたい」。アキレアスはしっかりとポップスの頂点に照準を合わせているかのように微笑む。「ショーを観に来てくれてるひとたちがいるんだ。せっかくなんだから、最高のひとときを提供しなきゃ」

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James wears suit and belt Dior Homme. Vest Sandro. necklace model's own.

Zac wears top McQ. Trousers Wooyoungmi. Belt Paul smith. Bracelet model's own.

Credits


Text Matthew Whitehouse
Photography Pani Paul
Styling Bojana Kozarevic
Hair Nicole Kahlani using Kiehl's Since 1851. Styling assistance Lula Ososki.
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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