マリメッコはなぜストリートウェアを始めたのか?

Marimekkoの初となるストリートウェアコレクション〈マリメッコ キオスキ〉がローンチ。現在DOVER STREET MARKET GINZAでは、ポップアップイベントが開催されている。来日していた同ブランドのディレクターに、創業者アルミ・ラティアの精神とフィンランドのユース文化について話をきいた。

by Tatsuya Yamaguchi; photos by Nobuko Baba
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23 August 2019, 10:34am

「創業からずっと自分らしさを表現することを大切にしてきたMarimekkoですから、ストリートウェアや次世代のユースカルチャーと自然にマッチすると確信していました」と、Marimekkoのグローバル・マーケティング・ディレクター、サンナ-カイサ・ニイッコ(Sanna-Kaisa Niikko)は言う。「むしろなぜやらないの?と声が上がってくるほどにね(笑)」

世界に先駆けてDOVER STREET MARKET GINZAでローンチされ、9月5日(木)までポップアップイベントを開催しているのはMarimekko Kioski(マリメッコ キオスキ)。都会に住むミレニアルズに向けたストリートウェアコレクションの新ラインだ。

DOVER STREET MARKET GINZA

Marimekkoの代名詞であるプリントやカラーパレットを再解釈し、「Connectibility(繋がることができる)」と「Collectibility(コレクションできる)」を切り口にしたTシャツ、フーディー、キャップなどのアスレジャーアイテムが揃っている。シンプルなカッティング、優しい肌ざわり、大胆なプリントづかいに、ユニセックスなラインナップ。実にMarimekkoらしいコレクションだ。

新ラインをローンチする背景には若者たちのリアリティがあった、とニイッコは話す。「興味深いことに、ここ数年Instagramで、私たちの洋服を自分らしくアレンジして着たユースたちの投稿を目にすることが増えました」

第一弾でフォーカスされたのは、もっともアイコニックなプリントのひとつである、ケシの花を描いた〈ウニッコ〉だ。

今回のコレクションにもラインナップされている、1960年代生まれのボーダー柄の〈タサライタ〉は、均等・等幅のストライプによって男女の平等が表現され、年齢、性別、サイズを取り払いすべての人に着てもらえることを目指してデザインされている。このように、Marimekkoのすべてのファブリックには固有の「名前」と、誕生秘話やメッセージ性を内包した「ストーリー」がある。

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〈ウニッコ〉は、その最たる例だ。

「この柄が誕生した1964年当時、ファッション業界はロマンチックな花柄に溢れていました」とニイッコは話す。「一方、流行には決してなびかない、独自の美学を持っていた創業者のアルミ・ラティアは、花は咲いている方が美しいという考えで“花柄禁止令”を出していたのです」

しかし、初期のMarimekkoを代表するデザイナーで、〈ウニッコ〉の生みの親であるマイヤ・イソラは、「ダメと言われたらやりたいタイプ」だった。

「彼女もまた自己表現と信念を貫くために、すべてが花柄で構成されたコレクションをアルミに提案したのです。抗議といえるかもしれませんね。アルミはその美しさに驚き、〈ウニッコ〉を採用しました」

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以来、ドレス、食器、インテリア、ペーパーナプキンにいたるまで、少しも古びることなく愛されている〈ウニッコ〉は、「Marimekkoにとってクリエイティビティと勇気、そして自由の象徴」するプリントとなった。

「〈マリメッコ キオスキ〉のファーストエディションのモチーフになるべくしてなったのです」

シンプル、タイムレス、ユニセックス。世代を超えて受け継がれていく流行に左右されないデザインは、今も昔もMarimekkoのシンボルだ。ニイッコはこうも話す。

「人々、特に女性を勇気づけること。それがアルミが貫いてきたことであり、今日のMarimekkoをかたちづくるスピリットのひとつでもあります。例えば、バランスを取ってくれる6%の男性もいますが、現在Marimekkoの社員の94%が女性です。ガールズパワーで運営されているのも創業当時から変わりません」

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第二次世界大戦後の復興期、そして今以上にキャリアウーマンへの風当たりが強かった1951年に、Marimekkoを創業したアルミ・ラティアの精神は、今なおフィンランドを代表する世界的デザインハウスの中に息づいているのだ。

「女性の権利がまだまだ抑圧されていた第二次世界大戦後のフィンランドで、女性たちの自己表現を支えたかったアルミは、新しいハピネスとエネルギーを伝えたかった。Marimekkoという名前が誕生する数日前、彼女がオリジナル生地の良さを伝えるためにフィンランドで開催したファッションショーで披露されたドレスのシルエットは、自由でルーズなものでした。ライフスタイルの意味を変えてしまうほどに、『私ってなんでもできる』と女性に思わせるようなデザインだったのです」

既製服が台頭しはじめた時代、レースやコルセットから解放された現代女性のための洋服が、大成功を収めることは必然的だった。

「その瞬間だけ綺麗でいられるものは作らないという方針に基づいています」とニイッコは話を続ける。

「品質とデザインに関する美学を貫きながら、生地を裁断するにあたって捨てる部分を極力少なくしていくこと、在庫を持ちすぎないこと。サスティナビリティにつながるこうした考えは、ファッション業界が背負うべき責任のひとつだと私たちは思っています」

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アールト大学と共同で木材をベースにした素材開発に取り組みながら、Instagramでは公開質問会を開くなど、サスティナビリティに関心の高い顧客とのコミュニケーションも積極的に行っている。当然、今回の〈マリメッコ キオスキ〉コレクションも多分に漏れない。

「フィンランドのユースたちの特徴? まさに〈マリメッコ キオスキ〉につながる面白い質問ですね。例えば、Marimekkoのお店に来る若者から、『どういう背景で作られているか?』『どんな目的でデザインされているのか?』と質問されることがとても多いんです。彼らはこれまで以上にサスティナビリティに関心を傾けているし、自分が買う物の価値や意味に重きを置いています」

「ファッションの歴史があまりないフィンランドだからこそ、ブランドからストリート、アンダーグラウンドカルチャーまで、本当にさまざまなスタイルがありますが、ポジティブで大胆な若者たちにとって“価値”の真実を見つけることと、洋服で自己表現を楽しむことはとても近いところにあるようです」

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DOVER STREET MARKET GINZA

「Marimekko Kioski Pop-up Store at DOVER STREET MARKET GINZA」
会期:2019年8月17日(土)〜9月5日(木) *11:00〜20:00
場所:ドーバー ストリート マーケット ギンザ 4階
住所:東京都中央区銀座6-9-5 ギンザコマツ西館

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