Eliann Tulve Photography by Riku Ikeya

エリアン・トゥルヴェ:感情のおもむくままに

ジェイミー・ホークスワースの被写体を務めたこともある、エリアン・トゥルヴェ。エストニア出身のバンド、ホーリー・モーターズのボーカルを務めながらモデルとしても活動する彼女に、音楽とファッションの質問を投げかけた。

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aug 17 2018, 8:37am

Eliann Tulve Photography by Riku Ikeya

エストニア出身のホーリー・モーターズ(HOLY MOTORS)は、映画好きならピンとくるであろうバンド名からも想像できるようにシネマティックな世界観で、ウェスタンのムード漂うドリーミーなシューゲイズサウンドを奏でる5人組だ。そこに乗せられた郷愁を語りかけるようなボーカルもリスナーの心を掴んで離さないが、その歌声の持ち主、弱冠20歳のエリアン・トゥルヴェがモデルとして来日した。UK版のi-Dでは、ジェイミー・ホークスワースの被写体を務め、表現者として積極的に活動する彼女のパーソナリティや、最新作『スロウ サンダウン』について、さらには音楽とファッションを繋ぐ存在ならではの視点にもフォーカスする。

ー まずは日本の印象からおしえてください。

とても軽やかでいいバイブスが流れてる。その空気感からもすごく歓迎されていると思えたわ。来日してからずっと都会にいたんだけど、数日前にモデル仲間とオフで箱根を訪れたら、まるでデヴィッド・リンチのドラマ『ツイン ピークス』の世界みたいでとてもインスパイアされたの。自然豊かで、霧がかかっていて、グルーミーな光景を歌詞にしたり、温泉に浸かってリラックスできて最高な一日だった。

ー デヴィッド・リンチの映像作品は、ホーリー・モーターズの音楽性に通じるところがありますね。

そうね。『ツイン ピークス』はバンド全体でかなりインスパイアされたわ。これはドラマだけど彼の映画も含めて、音楽のチョイスまで最高だから大ファンよ。ほかにバンドが影響を受けたものとしては、60年代の西部劇、セルジオ・レオーネの『続・夕日のガンマン』やヴィム・ヴェンダースの『パリ、テキサス』も挙げられるわ。私以外のメンバーは全員7歳年上なんだけど、かなりアメリカナイズされているの。

ー ウェスタンはバンドのコンセプトのひとつと言えますか?

ええ。もちろん。遡ると友達同士だったギターのローリー(・ラウス)とヘンドリック(・タムヤルヴ)がよくセッションしていて、その2人が結成の中心人物なんだけど、私が彼らと出会った頃には、既にさっき挙げた映画をヒントにしたコンセプトが決まっていたわ。そこに私が表現したかったドリーミーな側面をプラスしてバンドの全体像が構築されたのよ。

ー ドリーミーな部分も映画からの着想なのでしょうか?あなた自身が好きな映画も併せておしえてください。

ううん。それは結成当時に私が聴いてきた音楽から。バンドで言うとタマリン、マジー・スター、ブラウス、クロマティックスとかね。そこから、サウンドだけでなく歌詞でも幻想的なものを表現したいと思うようになったわ。私が個人的に好きな映画は、ロバート・アルトマンの『三人の女』よ。シーンの運びが緻密に計算されていて、予想を越える展開に驚かされるの。

ー ファーストアルバムの『スロウ サンダウン』では具体的にどのようなことを歌っているのでしょうか?

エストニアの首都タリンの郊外に住んでるんだけど、その風景や、月明かり、朝日とか自然と向き合ったときに湧き上がる感情や、ダイアリーのような内容になっている。たとえばエストニアの冬はとても寒いんだけど、そんなときに孤独を抱いて歌詞にしたのもいい思い出ね。悲しいことが必ずしもネガティヴな感情と捉えないようにしているのは、私らしい視点と言えるかもしれない。

ー リリースはNYのレーベル、ワーフ・キャット・レコーズからですね。

4年前に地元で音楽フェスティヴァルがあって、そこに後々プロデュースをお願いすることになるカーソン・コックスが所属するマーチャンダイズというバンドも出演していたの。彼は私たちのパフォーマンスを見ながら、その様子をiPhoneのムービーで撮影していたみたいなんだけど、その3ヶ月後に「そのとき撮影した動画を毎日再生しているくらいバンドの大ファンだ」ってメッセージをくれたのよね。後日、彼はワーフ・キャット・レコーズを紹介してくれただけでなく、プロデュースまでしてくれることになってラッキーな出来事だったわ。

ー では、モデル活動についてもおしえてください。

あるとき、JWアンダーソンのキャンペーン広告をエストニアで撮影するから、モデルを公募するという噂を聞いたの。興味本位でそれに応募したら合格して、撮影に参加できることになったわ。それが一番最初の仕事なんだけど、白黒だったし、現場に行ってみたら20人の集合カットだったから、掲載はかなり小さいのよ(笑)。

ー そこにはあなたのように、アーティストがたくさん出演していたのでしょうか?

アーティストはいなかったはずよ。ストリートにいる女の子から、モデル事務所に所属している子まで色々だった。そこからモデルの仕事にも興味が湧いて、エストニアの事務所に所属することにしたの。そのときの写真家ジェイミー・ホークスワースには、後々イギリス版のi-Dで撮影してもらう機会にも恵まれたわ。彼はホーリー・モーターズのことは知らなくて、あくまでモデルとしてフォーカスしてくれたんだけど、作品のファンだったから、被写体に選んでもらえてすごく嬉しかった。実のところ、バンドのメンバーであるというパーソナリティに注目してくれたのは、日本の事務所unknown modelだけなのよね。

ー シンガーをしながらモデルをする将来を、幼い頃から思い描いていましたか?

父が指揮者で母は作曲家なんだけど、2人の仕事の関係でクラシックにまみれて育ったのもあって、音楽の道に進むことは物心ついた頃から想像してたわ。それで、いざ何をやろうかってなってときに、漠然と楽器をプレイするよりも、歌いたいと思って、自分の声はギターサウンドにしか合わないから今に至ったってわけ。モデルはさっき話したJWアンダーソンの撮影が楽しかったから、続けているだけね。

ー 音楽とファッションのフィールドで活動していて、これらの距離は近いと感じますか?

今まで考えたことがなかったけど、アーティストという立場から語るならば、どちらもとても近いと思うわ。思考や感情を表現するためのものであって、ただ創造するものが違うだけだから。

Model Elian Tulve

Photography Riku Ikeya Styling Emma Schwarz Text Ayana Takeuchi