東京を暗躍する若きクリエイティブレーベル:PERIMETRON インタビュー
若くして多彩なクリエイションを手がけるチーム・PERIMETRON(ペリメトロン)。インディペンデントに制作活動を行う彼らのコアとは?
PPERIMETRONとはミレニアル世代のアーティストMVをはじめ、ファッションブランドのコレクションムービーからプロダクト、ジャケットのデザイン、音楽制作と多彩なクリエイションを手がけているチームだ。しかも、その作品の高いクオリティにもかかわらず、系統立った組織としてではなく、各自のスキルを持ったメンバー間の横のつながりによって運営されているという。
プロデューサーの佐々木集が「インディペンデントに活動する”ソウルブラザー”はどんどん増えてくんじゃないかな」と語るように、生き方や表現も含めてどんどん息苦しくなりつつある現代において、20代で構成されたアーティストやクリエイターを中心に、ある意味で身勝手に、そして自由に、自分たちのスペースを持ったり、活動を展開したりする人々のコミュニティは拡大していくのではないだろうか。巨大な企業や資本とは関係ないところから、しかししたたかにそれらに介入しながら。
King Gnuを率いる音楽家、常田大希がミュージックレーベルとしてスタート。その後クラブイベントを共同主催していた佐々木集と映像作家であるOSRINが加入し2016年よりクリエイティブチームとして活動を始めた。間も無くしてフリーランスでスタイリング・衣装デザインを務める松田稜平が加入。さらに広告映像制作会社から独立したプロデューサーの西岡将太郎、3D・ビジュアルエディターの神戸雄平とアシスタントの井本翔が加わり現在の体制となったPERIMETRON。 彼らの実践のコアを探るため、明大前にある事務所で話をきいた。
——PERIMETRONとして初めて作った作品はなんだったのでしょう?
佐々木集(以下 佐々木):FILAの映像ですかね。FILAが東京でポップアップストアを開いていた時にマネージャーとして関わったのですが、グローバルチームが来るっていうから、予算は何も出ないけどFILAの広告用の映像作ってみて見せちゃおうよって。それを作って先輩に見せたら話を通してくれて。オフィシャルで使ってくれることになったのでラッキーって感じでした。(笑) ありがたい話です。
——メンバーそれぞれの役職があるなかで、PERIMETRONのワークはどのようにつくられているのでしょうか?
OSRIN:みんなで相談して作る作品もあるんですけど、案件によっては仕事をするタッグがバラバラだったりしますね。
佐々木:例えばKing Gnuの最新MV「Flash!!!」は現メンバーになって初めて全員で作り上げた作品。King GnuのMVは一発目からPERIMETRONがやってるんですが、毎回全員参加で、各自の持ち場以外の所まで会話するようにはしていて。役職にはあまりこだわらずやりたいですね。みんな得意分野でぶつかり合えばいい。
King Gnu 「Flash!!!」
OSRIN:とはいえ結成時に比べてチームとしての案件が格段に増えましたね。元はみんな個人の仕事で食いつないでたんだけど。最近PERIMETRONで映像以外にもプロダクトやアートワークも作ったり。
松田稜平(以下 松田):僕はスタイリストという役職以外に絵も描くので。描いた絵を元にプロダクトをデザインしたりね。
佐々木:僕はもともとアパレルをやってたので、工場に行ったりして、デザインと生産管理を兼任して作りたいものを作ってます。割とランダムな動きですね。

——個々の得意分野の組み合わせで作っていく、と。HPもクオリティが高いですよね。
OSRIN:トップページの一枚絵は、カナダ発のMutekというフェスにDTMP(Daiki Tsuneta Millennium Parade)が参加した際にVJ用に僕と神戸で作ったビジュアルを使用していて。手探りに近い形でみんなであーだこーだ言いながら作ってます。神戸が入ってくれてより一層チームでクリエイトできる幅が拡がったんで。

Daiki Tsuneta Millennium Parade × Ryoji Yamada (Animation VJ)
—— MVに加えて、 ファッションやコスメブランドの映像なんかも手掛けてますよね。ビッグネームで言えば、shu uemuraも!
OSRIN:名前で受けちゃった(笑)。

shu uemura × yazbukey “Mattitude” Grobal Movie
佐々木:ファッション系の仕事で言えば、Mihara Yasuhiroさんの「Nehanne」は稜平がスタイリストで入ってて、そこから。みんな職種が違うし、それぞれ違った角度から仕事が来るから、そこで話し合って決めるってのもこういうチームの面白さの一つですね。
Nehanne MIHARA YASUHIRO 2018 SS Collection
——それぞれの個性がありつつもPERIMETRONの統一色みたいなものも見えます。参照している表現の形や共通意識はあるのでしょうか?
佐々木:みんな日本の東京発であるという点は意識してると思います。ちゃんと“東京感”があった方が自分たちのアイデンティティが出るので。
—— 特に、日本国内に閉じた“東京”ではなく、グローバルな目線で見た“TOKYO”のように感じます。
佐々木:みんな日本発のモノをすごく見てきたわけじゃないけど、ジャンルレスに見てきたモノがありつつ、ちゃんと日本や東京を意識してるからそれは生まれる気がしてて。そこにグローバル感というか俯瞰した感じがあるっていうのはみんな各々海外生活や仕事をやってきたということも関係してるのかもしれないですね。
—— なるほど。WONKの「Gather Round feat. Matzuda Hiromu」もカオティックな面とファッショナブルな面が絶妙なバランスでPERIMETRONらしいなと感じましたし、PAELLASの「Echo」は引き算の美学が効いたスタイリッシュなものでした。
OSRIN: WONKのMVはこの事務所で撮影したんですよ。壁を真っ白にしたり銀紙で覆ったり、ミラーボールつけたり、超大変でした。最後は廊下で虹色のゲロを吐く(笑)
常田大希(以下 常田):あれを機に省エネ志向に切り替えたっすね。
OSRIN:毎回一つずつ何かしらのチャレンジはしていて、狭いところでステディカムでMV撮ったことないからWONKでやろうとか、 「Echo」は長回しのフィックスで勝負しようとか。新しい要素を入れないと自分たちがつまらないですから。
WONK 「Gather Round feat. Matzuda Hiromu」 (Official Music Video)
PAELLAS (パエリアズ)「Echo」 (Official Music Video)
—— PERIMETRONとしての今後のビジョンはありますか?
松田:立ち止まらずに一歩先まで俯瞰して見た東京を打ち出せていけたら、それが色になって、僕らのカルチャーとして広がっていくのかな。メンバーみんなが主役で、ぶつかり合いながらずっとやって行きたいですね。
佐々木:浮かんだアイデアをどうすれば世界に届くか、より多くの人に見てもらえるか、よりエッジィになるかは、一回一回の発想を形にする瞬発力と思想が大切だと思ってます。今これだけ移り変わりが早いと、流行だけを追うのって難しいじゃないですか。だったら自分たちの一歩の早さや閃きを信じて、それを純粋に伝えていきたいですね。
西岡:僕は既得権益から引っ張るだけじゃない、みんなを横につなげるシステムを作りたいですね。一つひとつは小さいかもしれないけど、それがシーンを変えていくと思います。
常田:「なんとなくカッコいい」で作っちゃうと、他とあんまり差が出ない。ブレないためにも、芯をもっと明確に持ちたい。だからファッションや映像なんかの過去の流れをもっと学んで各々がよりプロフェッショナルになる必要がある。
OSRIN:今は当たり前にコンテンツが溢れててなんでも手に入るし、次々と新しいものは出てくる。もちろんスキルアップは当たり前として、それをどう、何に生かすのかは、頭を使わないと二番煎じになる可能性がある。だから、光を浴びるためには常に違うものにチャレンジし続けないといけないという気はしますね。
—— ありがとうございます。最後に、そもそもなぜ「PERIMETRON」という名前なのですか?
常田:響きがかっこいいから。
佐々木:PERIMETRONって響きが特撮ヒーローっぽいよね。ロゴはカプセル。宝箱みたいに色々詰まってそうで、面白いものが生まれそうじゃないですか?
