「世界はどこへ?」:LA FEMME インタビュー

パリでの新たなミュージック・シーンの起爆剤ともなったLA FEMME(ラ・ファム)。東京でもサーフ、サイケ、ガレージ、パンク、エレクトロとごった煮の強烈なステージを披露した彼らの奥底を知るべく、パリでヴォーカルのマーロンとキーボードのルーカスにインタビューを行なった。

by Shoichi Kajino
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23 May 2017, 1:45am

東京でのライブもすごい盛り上がりでした。LA FEMMEのステージは客席を巻き込むエネルギーが強いですね。言葉の壁を感じさせませんし、ライブがとてもフィジカルです。
Lucas Nunez Ritter(以下L) : 終演後、たくさん声をかけてもらったけど、そうだとしたらすごくいいな。フィジカルであることは、僕らが求めていたこと。僕らに言葉の壁なんてないんだ。
Marlon Magnée(以下M):東京でライブをするのは、長いあいだ夢見ていたことだったから、とにかく面白いことをしたかった。僕とサシャの故郷の踊りパキート(バスク地方に伝わる伝統的な踊り)をライブの終盤ですることにした。みんな罠にかかったかのようだったけどね。

毎回セットリストや仕掛けが変わりますね。例えば、パリでは多数のダンサーを交えたテアトル的な演出の2時間にも及ぶショーで、いつもレコードとはまったく異なるLA FEMMEの世界を見せてくれます。
M:パリはツアーの集大成のような特別なものだったのは確かだよ。スタジオでやれることとステージの上でやれることはすごく違うからね。スタジオでは何度も修正できるわけだけど、僕らはそんなふうに人為的に作り上げていく過程も好きだよ。今作は、家で1人で聴いてるとき、あるいは旅しているとき、踊りたくなったり、気持ちを解放したくなったり、そういう様々な場面を想定して作ったんだ。

バンドの結成についてうかがいたいと思います。もともとはマーロンとサシャの2人で始めたとのことですが、このにぎやかな6人はどのように集まってきたのでしょうか?
M : 僕らがライブをしようと思ったとき、問題だったのは、PCとやるのか? それともメンバーを集めてやるのか? ということだった。結局、友人の中から誰とだったら一緒にやれるだろう、と考えて、ノエ、サム、ルーカスとバンドを組むことにしたんだ。(ヴォーカリストの)クレマンスはもともと友人だったわけではないんだ。彼女とはインターネット、Myspaceを通して知り合った。2010年頃、何人か女の子を探していたんだけど、クレマンスは、キーボードを弾けたし歌えたから、まさにぴったりだったんだ。

LA FEMMEの曲は、さまざまな影響のごった煮というか、あらゆるものがぐしゃっと混ざっている感じがします。LA FEMMEの魅力を誰かに紹介するときに、フランスのソヴァージュさを集めたバンドという言葉を使っています。
M : まさにその通りだと思う。すべての曲でスタイルを変えているんだ。というのは、僕らはひとつのスタイルに満足することができないからね。それに、僕らは僕らに固有の独特の音を見つける力があると思っている。ラジオから君の知らない曲が流れてきたとしても、すぐにそれがLA FEMMEの曲とわかるはずさ。僕らがレゲエ、ロック、バラード、エレクトロ、すべてを混ぜるのは、そこから唯一独特の新しい音を見つけることができるからなんだ。

アルバムには16~18曲と、たくさんの曲が入っています。スタジオを訪れたときに驚いたのは、とにかくそのスピードであっという間に曲を作っていたことです。
M : レコーディングには6ヶ月や1年かかるというけど、そんなことはないと思う。もっと自由なんだ。たしかに僕らはたくさん曲を作るけど、同時に僕らは自分たちのしていることに意識的で、完璧主義的なところもあるから、作曲したものすべてを外に出せるかというと、それはまた別の話だけどね。

リードトラックになっていた「Où va le monde(世界はどこへ行く)」のクリップの最後には(パリでのテロ後のシンボルにもなった)レピュブリック広場も映ります。何か社会的なメッセージが込められているのでしょうか?
M : 「Où va le monde」は今作への導入だったんだ。サシャが作っていた実験的な曲がもともとのアイデアなんだけど、それはタランティーノの西部劇をもとにしていた。ギターの音や、荒野に孤独でたたずむかんじとかね。そんなかんじで作詞もすすめていった。人間関係が上手くいかず、孤独になって、後悔して、そんな世界を表現したんだ。
L : 実はあのクリップは、日本のカラオケにインスピレーションを得ているんだ。歌詞が出て、徐々に塗られていくよね。おかしなクリシェだらけのクリップにしたかったから、日本のカラオケ風というのは本当にぴったりだと思ってね。カラオケの映像って、めちゃくちゃひどいよね。奇妙で滑稽で、見るべきところが何ひとつない。それが気に入ったんだ。まさに僕らの日常と同じなんだよ。そういう意味では、このクリップは、ドキュメンタリーのようでもある。
M : 確かにレピュブリック広場が映るのは、ちょっとした目配せでもある。新しい街で、決してうまくいくことのない悲しい人間模様を描いているんだ。一方ではおかしな面があるけど、同時にそれなりに真剣だった、かつての結婚関係を讃えている。消えゆく物語を思い出として残すように。ああ、これが新しい世界なの? 世界はどうなってしまうの? オーララ!っていう具合にね。

アルバムタイトルの『Mystère(ミステール)』ですが、どういう意味が込められているのですか?
M : ペネトレーション(侵入・挿入)とピュア・ヴァイブ。ミステリアスな女性(La Femme)を表現してるんだ。アルバムが完成したとき、僕らは良いタイトルを見つけることができなかったんだけど、僕らの曲には謎めいたところがあるし、『ミステール』というのはいいなと思ったんだ。

初めてのシングルでは、クールベの『世界の起源』を使ったジャケットだったと思います。今回も女性器をモチーフにしていて、常に女性の神秘に興味があるようですね。
M : よく、なぜLA FEMMEをバンド名にしたの? ってきかれるんだけど、いつも女性はミステールだから、と答えているんだ。
L : 僕らのジャケットは、毎回検閲に引っかかってしまう。『Psycho Tropical Berlin』のときも同じだった。裸であることとセクシャルなことには違いがあると思うんだけどね。
M : 日本でも、ツアーのポスターが2週間経った頃に剥がされてしまったんだって。髪の中にあるものにみんな気がついてね。あの絵には詩的なものを感じると思うんだけどな。

SAINT LAURENTのショーで、Mystèreという名義で曲を提供していましたね?
M : 実は、Mystèreというのは、LA FEMMEの秘密の名前でもあるんだ。シークレットでコンサートに参加するときなんかに使ってる。エディ(・スリマン)から、ショーのための曲を作ってほしいと言われていたんだけど、同時に、エクスクルーシブなスペシャル・プロジェクトとして参加してほしいとも言われていたんだ。

LA FEMMEの登場以降、フランスに新しいバンドのブームが起きたような気がします。
M : たしかに、僕らがスタートしたとき、シーンは停滞していた感じはあった。60年代のスタイルやエレクトロニックのスタイルも過去のものになっていた感じがしたし、フランス語で歌うグループも3つくらいだったと思う。今は、ずいぶん変わったよね。僕らのしたことが影響を与えたのかもしれない。

たしかに新しいバンドは、みんなフランス語で歌いますね。2000年代のフランスのバンドは、英語で歌うことを好んだと思います。AIR、PHOENIX、MODJOなど…。
L : 当時は、インターナショナルであることが求められた時代で、彼らは英語で歌ってたんだと思うけど、その一方で、もちろんフランス語で歌っているバンドもいて、多くの人はこう考えていた。フランス語で歌ったり、フランス語の詞を書くのはフランス人のため、と。でも実際のところは誰でもフランス語の歌を聴くんだよ。僕がドイツ語のラップを聴くようにね。

詞を書く際、英語よりもフランス語の方がポエジーを入れやすいということはありますか?
L : フランス語の方が英語より優位かと言われたら、それはまったく違うよ。例えば、君が同じ言語を話すとしても、同じエスプリを持っているというわけではないし、同じように考えるわけでもない。僕がフランス語を話すからといって、より詩的になるわけでもない。話す人のビジョンの問題で、言語の問題ではないと思うんだ。世界にはたくさんの言語があって、例えば日本語にも、信じられないような詩的な表現があると思う。反対に、英語の方が優れているかと言えば、それだってそうとは思えない。僕らは英語を話さないけど、英語で歌うことはできる。だけど、フランス語を話す人間にとって、ポエジーを英語に翻訳することはできない。なぜって、英語では考えないからね。

もしインターナショナルであるために、英語で歌わなければならない、と言われたら、どう考えますか?
M : 実際によく言われたよ。小さなころ、僕はアメリカのバンドの音楽を聴いていたけど、もちろん歌詞なんてまったく理解できなかった。だからといって、そのバンドの魅力を妨げるものなんて何もなかったことも事実だね。
L : 音楽は、素晴らしい映画や美味しい料理のようなもの。そこにはすべてがある。僕がタンポポを見つけて、眺めているだろ? 難しいことはよく理解できないとしても、ほうら、こんなふうに音楽で再現できてしまう。音楽は言葉を必要としないマジックなんだ。

Credits


Text and Photography Shoichi Kajino

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