名前を知らないお気に入り——オリビア・ロカー

マシュマロやアイスクリーム、風船ガムなど、インターネット上で好まれるものを、オリビアは熟知している。

by Wendy Syfret
|
07 September 2016, 9:43am

オリビア・ロカー(Olivia Locher)という名を聞いたことがあるだろうか?読者の多くは「ない」と答えるだろう。しかし、オンラインで可愛いものを探すのが好きな読者は、彼女の名前は知らずとも、彼女の作品を知っているにちがいない。リポストしたり、シェアしたり、ひょっとするとスマホの壁紙に使っているひともいるかもしれない。ペンシルバニア州に生まれ、現在はニューヨークを拠点に活動をしているアーティスト、オリビア。彼女は、インターネットで好まれるものを熟知している。シュールで可笑しく、しかし入念に考え込まれた写真の多くはInstagramに夢のようなスペースを作り出している。

しかし、デジタルでスイートなものを提供するというのは、ときに「誰からも感謝の意を示されない」仕事を意味する。オリビアが手にした成功は、インターネット普及以降の時代における典型——100万シェアを誇るにもかかわらず、アーティスト自身が得るものはほとんどないという状況だ。しかし、幸いなことにこのストーリーにはハッピーエンディングが待っている。オリビアの作品集『I Fought The Law』が来年、発売されるのだ。

オンラインでのアーティスティックな活動について、そして正当な評価を得るべきだということについて、オリビアと話した。

あなたの作品はシュールで幻想的ですが、扱っているアイデアは現実世界のものです。ファンタジーな写真を通して現実を見せることについて聞かせてください。
小さい頃、私は極端なレベルの白昼夢を見がちな子供だったんです。幻想と現実の境界線がまったくなかった。幸いなことに、親はそんな私を注意することも叱ることもしませんでした。ティーンになるとそういう自分を卒業することができましたが、意識の底ではシュールなテーマ性が深く埋もれて残っていたようです。
写真を撮り始めた頃から、幻想や夢の世界をそこに写し出すことに夢中になりました。アートスクール3年生のとき、モデルに履かせた白いナイロンのストッキングにマシュマロを詰めた様を撮影したんです。それを見た先生がとても気に入ってくれて、このスタイルを追求するべきだと。既成の物体が持つバカバカしさが面白くてしかたなくなり、また人々が日常的に繰り返す習慣に興味が湧いていきました。

あのマシュマロ画像はネット上で大きな話題となりましたね。あれで作品がネット上で拡散され、あなたは「名前は知らないけれど作品は見たことがある」アーティストになりました。作品がヒットするということ、そしてときにその評価がアーティスト自身には向けられない現状について、聞かせてください。
一般の人は、インターネット上で見かける画像の出どころなんてどうでもいいという人がほとんどです。それは、写真というものが誰にでもアクセス可能なカルチャーであることの、いわば副作用のようなものです。驚くのは、私の作品を使って他のクリエイターが別の作品を作ってしまうことですね。私の作品で、アイスクリームコーンを女の子のパンツのバックポケットに突っ込んだものがあるんですが、この作品が使われている他人の作品を、これまで少なくとも8点は見ています。
それは嬉しいことでもありますが、やはり私のコンセプトを使って誰かが金銭的な利益を得ていることには複雑な思いがしますね。同じアイスクリームの作品は、アルバムジャケットにも使われていたし、私の他の作品はベルリンで開かれた映画祭に使われたりしていました。ファッションブランドにリメイクされたりもしています。私は自分の作品で利益を得ていないので、私のアイデアで誰かが利益を上げているのを見るのはやはり悔しいですよ。これはずっと私につきまとっている問題です。アイデアに著作権は発生しないから、それを生み、表現したアーティストに対して人々が十分な敬意を持ち、それが盗まれないことを祈るぐらいしか、私にはできないのです。

あのアイスクリーム作品は、『I Fought The War』シリーズからのものでした。不可思議なアメリカの法律を問う作品で、インターネットで大きな話題となりましたね。インターネットで自分の作品が社会現象となるのはどんな気分がするものなのでしょうか?
面白いなと思うのは、自分ではそれがどんな経緯で流行となったのかがまったく分からないということですね。あのアイスクリームの作品をアップしたら、まずはTumblrで2万件のコメントが付いたんです。ライターから「シリーズについて記事を書きたい」という依頼が来たりして。まだ作品は8点しかなかったし、どれもまだ未完成の状態だったけど、それでも話題になりました。後に、シリーズのうち4作品をより力強く手直しして、元のバージョンと入れ替えたんです。話題になった作品は、私にとって完成形への序章だったんです。

あなたの成功の陰には、インターネットの存在が大きく貢献していますが、インターネットの存在なしにあなたは今と同じアーティストになっていたと思いますか?
作品は私の内なる所から生まれてきているので、まったく別人のアーティストになっているとは思わないけれど、まったく違うキャリアになっていたと思います。編集者が私に作品の使用許可を得ようとアプローチしてくる場合、そのほとんどはInstagramで私の作品を知った人たちです。デジタルプラットフォームは、紙のポートフォリオに完全に勝っていますね。ポートフォリオの更新なんて2013年以来していません。誰も興味も示さないですから。Instagramは、アカウント主の生き方や日常が見れるから、パワフルで楽しいんだと思います。

作品そのものについて伺います。あなたの作品は、ヘルシーの概念やファッション、美について、面白おかしく表現しながら問うているように思えます。そのような探求は、そこに愛があるからなのでしょうか?それとも、批判的な観点から問いを投げかけているのでしょうか?
ここ数年の間、ニューヨークのファッションウィークでショーの裏側を撮っているんですが、そこで生まれる美にはとてもインスパイアされています。そこで見た美しさをなんとか写真で再現したいという衝動が湧いてくるんです。でもそんな試みはいつも失敗に終わって、再現に"近い"状態まではもっていくことができますが、それでもやっぱり私が見た美しさからはかけ離れている。だけど、そんな未達成の世界観も嫌いではないし、私が作品に求める美しさは実際よりもドラマチックな空気感を持ったりするんです。質問への答えですが、私の作品は、そういったものに対する祝福も批判も同じように含んでいると思います。

あなたはホームスクーリングで育ったのですよね?
そうです!高校からですね。オンラインスクーリングというものが登場して、チャットルームで授業を受けるというようなことが可能になったんです。まだベータ版といった感じで完成もしていなくて、法制度も追いついていない段階だったんですが、両親に「これで勉強させて!お願い!」と頼み込みました。学校に通っていたときは8時間がとられていたのが、オンラインスクーリングでは3時間で済みました。従来の学校と決別した頃に、写真と出会って夢中になったんです。

その経験は、今のあなたの作品に影響しているのでしょうか?
あの環境があったからこそ私は写真にのめり込んで集中することができたわけですからね。たくさんのファッション誌を購読していたんですが、そこに見る写真のような世界観をなんとか自分でも作りたくて、友達をモデルに写真をたくさん撮りました。ファッション以外で、写真の世界についての知識なんて皆無でしたね。ユルゲン・テラーが手がけたMarc Jacobsの作品に夢中でした。

あなたの兄弟もアーティストになったということからも、あなたの家庭環境がいかにクリエイティブなものだったかが窺い知れます。兄妹で影響を与え合っていたのでしょうか?
もちろんです!スタジオ兼住居という形で、マンハッタンに小さなアパートを借りていて、常に顔を突き合わせて生活しています。最近では同時に同じことを言い始めたりして、周りにいる人たちは気味悪がっていますね。

@olivialocher

Credits


Text Wendy Syfret
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

Tagged:
Instagram
going Viral
viral content
Olivia Locher​