ストックホルムパンクに誕生した反逆の女王たち

「ドロレス・ヘイズ。我が人生の光、我が腰の炎。我が罪、我が魂、我がお気に入りニューバンド」。真に素晴らしいバンドはそう頻繁に現れるものではない。ストックホルムの奇跡をどうか見逃さないでほしい。

by Francesca Dunn
|
08 June 2016, 6:40am

ゴス的セックスとディーバ文化を掛け合わせ、グランジとガールパワー・パンクポップで表現する4人組、ドロレス・ヘイズ(Dolores Haze)。彼女たちのパフォーマンスを生で見れば、あなたもその世界観に圧倒されるはずだ。表現豊かにフロントのベーシストであるグルーヴィー・ニックズ(Groovy Nickz)が歌い、叫び、ライブ会場の空気を揺さぶり、ラッキー・ロロ(Lucky Lollo)とグルーヴィー・ファック(Groovy Fuck)がリード&リズムギターでノイズを奏で、フォクシー・サグズ(Foxy Sagz)がドラムを打ち鳴らす。

最年長が20歳という若いメンバー構成のドロレス・ヘイズ。中でも最も若いラッキー・ロロはまだ18歳の学生だ。数週間後に控えている卒業の後は、晴れて自由の身となり、世界へと羽ばたき、世界を破壊して回ることになるだろう。2年前、ドロレス・ヘイズはアルバム『Fuck The Pain Away』とデビューシングル「Accidental EP」をリリースした。そして数ヶ月前、ガールズパワー全開のフルアルバム『The Haze Is Forever』をWoah Dad Recordsから発売した。リリースされた2本のビデオは、フランス映画の名匠ゴダールの『気狂いピエロ』(1965)から引用されたセリフを、グルーヴィー・ニックズと男の子がスーパーマーケットの床で再現している場面から始まる。スローモーションのパーティビデオに、90年代グランジ風「Touch Me」を始め秀逸なトラックの数々が流れるという内容だ。冒頭で、「なぜそんなに悲しそうな顔をするの?」とグルーヴィーが訊く。「君は言葉で僕に語りかける。でも僕は感情で君を見るしか術がない。だからだよ」と男の子は言う。彼女は彼の顔を見る。そんなことを言われたら誰だってそうするだろう。そして、棚に陳列されたシャンパンとポッキーを手に取り−−そこからはドロレス・ヘイズの世界が炸裂する。

その強烈なルックスとニックネームで、彼女たちはスーパーヒーローのようにも、映画『スコット・ピルグリム』(2010)に登場する悪役のようにも見える。いずれにしろ、彼女たちはパワフルな音楽を作り出すパワフルな個性の集まりだ。あのイギー・ポップも彼女たちに魅了され、自身のラジオ番組でドロレス・ヘイズの曲を紹介している。先月ストックホルムで行ったライブでは彼女たちを前座として起用したというのだから相当の惚れ込みようだ。ブライトン地区のライブハウスThe Green Door Storeで開催される「Great Escape Show」を前に、i-Dは彼女たちを駐車場でつかまえ、話を聞いた。ストックホルムのミュージックシーン、彼女たちの未来、そして酔っ払うことについて、彼女たちが爆笑の渦のうちに話してくれた。

まず、素晴らしいニックネームをつけたわね。どうやって考えついたの?
グルーヴィー・ニックズ(以下GN:夢で見たのよ!
グルーヴィー・ファック(以下GF:私とニックズが70年代にハマっていた時ね。ペイズリーのシャツがあったり、70年代って何もかもがグルーヴィーだったでしょ?
GN:そうそう、なんでもグルーヴィーよね。私たちはレッド・ツェッペリンを……まあファックはベイビーシャンブルズが好きだったみたいだけど。なんにしても、私はニックズって名前にしたの。本名がニッキーだから。で、ファックは、どうなの、ヤるのが好きだからファックにしたんでしょ?
GF:そうよ。
GN:で、他のふたりにも名前をつけようってことになって……。
フォクシー・サグズ(以下FS:私の本名はサガ(Saga)で、キツネが好きだからフォクシー・サグズにしたの。
ラッキー・ロロ(以下LL:私はただラッキー・ロロっていう名前の響きが気に入ったの。それから本名もロヴィーナ(Lovina)だから……。

特にラッキーなことが起こったりするの?
LL:ときどきね。
GN:学校での成績はいいわよね。

こういうニックネームをつけるというのは、スパイスガールズ的な発想だったのかしら?
LL:ニックネーム、独自のスタイル、ヘアスタイルって、ガールバンド的といえばそうよね。
GF:でも、ニックネームをつけたのには、自分たちの分身を生むっていう意味合いもあったの。

あなたたちが出会ったときの第一印象は?
GF:6年前のちょうど今日、私とロロは出会ったのよね。彼女はエモだったけど、私は全然違って、"きっとこの子は私のことをオタクだと思っているんだわ"って思ったのを覚えてるわ。
LL:いや、すごくいい子だなと思ったのよ。彼女は、私のエモ友達の友達だったの。オタクっぽかったといえばそうだったかもしれない。ニッキーの第一印象は……典型的なビッチって感じだった。
GN:でも私は典型的でもなんでもなかったわよ! どうなのかしら、当時まだ私は高校1年生で、ビッチというよりヒップスターだったんじゃない?
FS:あなたに初めて会ったとき、"とても可愛い子だな"って思ったわよ。フローラル柄があしらわれたフレアジーンズに、腕にはたくさんフェスティバルバンドをしていたのよね。
GF:ニックズはとにかくクールだと思ったわ。ディップダイヘアでね。
GN:あなただって! 赤い髪を長く伸ばして、でもサイドは剃っていてね。懐かしいわね。

ストックホルムの音楽シーンはあなたたちのことをどう捉えているのかしら?
GN:カテゴライズできないみたい。音楽的にもね。私たちがものすごくアンダーグラウンドなシーン出身で、いま急激に人気が出てきているってことで、良く思ってない人もたくさんいるのよ。私たちの音楽が変わっただの、大手レーベルの色に染まり始めただの言う人たちもいる。だけど、私たちは自分たちの音楽にひたすら取り組んでいるだけよね。
GF:アンダーグラウンドだったのは、そこでしかチャンスを与えられなかったからだしね。

人々があなたたちのことをどう思うか、気になる?
LL:気になるときもあるわ。
FS:たまに、私たちについて書かれた記事を燃やしたりね。
GF:人々がどう思っているかは知りたいわ。
GN:ネガティブなことを言われれば、やっぱり腹が立つわよね。それにはこれからもずっと慣れないと思う。
LL:そう、私たちと関連もなければ知り合いでもない人のコメントでも、やっぱりショックを受けるわ。
GN:どっかの馬鹿がああだこうだクソみたいなコメントを書くわけよね。「気にならない」って言いたいところだけど、やっぱり気にはなるのよ。

ストックホルムの音楽シーンについてどう思う?
LL:インディーポップのボーイズバンドがたくさん出てきてるわね……。
GF:……シューゲイザーにたくさんギターペダルを使ったような音が多い。でも、いいパンクバンドもいるわ。サイコファント(Psykofant)とかね。
GN:去年は、シルヴァーナ・イマム(Silvana Imam)とか、とにかくラッパーがたくさんヒットを飛ばした年だった。みんなが政治についてラップしていたわね。いまスウェーデンでは政治がアツいのよ。民主党が人種差別主義の集まりだから。

ヨン・リーン(Yung Lean)と彼のクルーについてはどう思う?
FS:大好き!
GN:独自のスタイルを作り出してインターネットであそこまで大きなムーブメントを巻き起こしたってすごいことよ。
GF:そうね、あれはすごいわね。
LL:あまりにも身近すぎて、彼らがあそこまで大きくなったってことがうまく理解できないわ。
FS:そうなのよね。ニッキーと私はヨン・リーンたちと同じ学校に通っていたから。
GN:国内より、海外でのほうが有名なんじゃないかな。ストックホルムでは、彼らのことをバカにするような言動も多いの。解らないひとには解らないものなんだと思う。ヨン・リーンのスタイルにはアイロニーがあったりして、ああいうものに慣れていないひとも多いのよ。

ひとを混乱させるという手法を用いたわけね、ヤンリーンは。じゃあ、あなたたちはストックホルムの音楽シーンで何を打ち出しているの?
GF:私たちは基本的にロックバンドなわけだけど、ポピュラーなもの、ラジオでかかっているようなものも好きなの。だから好きなものはどんどんミックスしていく。スタイルについてもそうよ。ロックバンドってみんな落ち着いていてカジュアルなスタイルばっかりだけど。
GN:ドレスアップしたりメイクをしたりするのが好きじゃないのよね、きっと。でも私たちはそういうことが大好きなの。
GF:スパイスガールズでもあり、ロックバンドでもあり、っていう存在になりたいのよ。

これまでで最も印象に残っているライブは?
GF:セカンドシングルのリリースパーティかな。2015年初め頃。私は完全に酔っ払っていて、壊れたギターを抱きかかえて、観客に取り囲まれた状態で床に寝てたの。あれが一番ね。
酔っても演奏できるのね? でも床に寝転がって、ギターも壊れているんじゃそうもいかないわね……。
GF:演奏するとき、私はいつも飲んでいるわ。
GN:マネージャーが先週、ちょっと控えろって言っていたわね。
GF:そうね、あんまり良いことではないかもね。

酔いも適度な具合でないとね。緊張はする?
GF:しないわ。酔っているんだから。
GN:5月1日に、政治関連運動のイベントで演奏したとき、すごく大きなイベントだったんだけど、あのときは緊張したわ。
GF:あのときは私もすごく緊張した。ステージで真っ赤になって、汗がたくさん出た。

緊張したのはなぜかしら? 通常のライブとは違ったから?
GN:酔っ払ってなかったからというのと、あとは日中だったしね。
GF:明るくて全部見られている感覚だったわ!

あなたたちのファンにはどんな人たちが多いの?
LL:3タイプいると思う。ロック好きのおじさん。90'sとロックが好きな19歳の男の子。それから髪はパステルカラー、顔はキラキラの15~16歳の女の子たち。
GF:最後のタイプがいいわね!

16歳のときに知っていれば良かったと思うことは?
GF:努力は必ず報われるってことかな。
GN:でもそれを知っていたら努力しなかったかもよ?
GF:いつも、「今年こそは契約のチャンスがくるかしら?」って思っていたのよね。契約をオファーしてくれるレーベルが現れるのを待っていた。そうしたら現れたの!

契約が大事だったってこと?
GF:そうよ。だって、私たちにとって契約を結ぶってことは有名になるってことだったんだから。まあ、それほど、とんとん拍子にはいかなかったけど……。

でも契約があってこそ、その先に名声があるんだものね。歳をとったらどんな女性になっていると思う?
GF:偉大な老人になってるはずよ!
LL:お年寄りは大好き。年をとった女性って素敵!
FS:種を蒔いた庭を毎日歩いてまわるような老人になってると思うわ。

大きな家でみんな一緒に暮らしたり?
LL:いやだ、それはイヤ! 本をたくさん読んで、散歩に出かけてコーヒーを飲む。たくさんの友達に囲まれて暮らすような晩年がいいな。
GF:今の私みたいね! 私は自転車で走り回ったりしていたいわね。
GN:気持ち悪いぐらい熱烈な恋をしていたいわ。大きなトイレがある大きな家に暮らしたい。枕がたくさん置いてあるベッドルームがあるようなね。でも一番は、うんざりするくらいラブラブな人との結婚生活。
GF:大勢の可愛い子供たちとね。
FS:レディオヘッドのジョニー・グリーンウッドって全然歳をとらないじゃない? あんなふうに歳を重ねたいわ。

イギー・ポップとのライブはどんな経緯で実現したの?
GF:彼がラジオ番組で私たちの曲をかけてくれたの。そこからすべて始まったんじゃないかしら。
GN:そうね。ラジオがあって、それから間もなくして、ストックホルムでのライブの前座をやらないかってオファーがあったのよね。

もちろんそれに飛びついた、と。
GN:もちろんよ! ライブの前に少しだけ会うことができて、握手したの。
GF:「握手したの」って! ものすごく興奮してたくせに!
GN:そうなの! 握手してもらった手を舐めているセルフィーを撮りまくったのよ。でもその後、間違えて手を洗っちゃったの……。

あらら。
LL:イギー、もう老人だったわよね。
GF:私が気になったのは背の低さ。あんなに小さいとは知らなかった。
LL:彼がライブを終えてバックステージに戻ってきたとき、友達と一緒に見ていたんだけど、まともに歩けていないの。大きい男がふたり、イギーを葬っていたわ。
GF:葬るんじゃなくて、"運んでいた"でしょ!

年で死んじゃったから葬ってたのかしら?
LL:年を取りすぎて、歩けてなかったの! 2時間のギグを終えたら、イギーはもう人の助けを借りないと控え室にも歩いて戻れないみたい。

もうステージでしか歩けないのかもしれないわね。ステージで放出するために、少ないエネルギーを温存しているのかも。
LL:彼って、片脚がもう片方より短いって聞いたことがある……。
GF:それに、誰かが運んでくれるなら誰だってそれに甘えるわよね。

それもそうね。出会う前からイギーのファンだったの?
GF:もちろん。ライブに行ったこともあったし。
GN:私は家に『Raw Power』をレコードで持っているわ。

イギーのサポートを務めることになるなんて、最高にクールね。
GF:ほんとよね。バンド活動を始めた当初、これが分かっていたらと思うわ。
GN:「3年後、お前はイギー・ポップの前座を務めることになるだろう……」って。あの時そんなこと言われていたら、私死んでいたわ。
GF:私はもっとちゃんと服装のことを考えたに違いないわ。

あなたたちの曲がサウンドトラックに使われるとしたら、どの映画がいい?
FS:『ドニー・ダーコ』。
GF:もっと変わったのがいいわよ……。
GN:『ランナウェイズ』とか、女の子がやらかしまくる映画がいいかもね。
GF:『テルマ&ルイーズ』みたいなね。あれはよかったわ。女がふたり、間違えて男を殺しちゃって、警察の追跡から逃げまくる。最高にクールよね。
FS:『ヘザーズ』もいい!
GN:『スプリング・ブレイカーズ』とかね。
GF:若い子が変なことする映画じゃないとダメよね。
GN:『シャークネード』もいいかも。

『シャークネード』なんかなんで観たの?
GN:史上最低の映画よ。読者の皆さん、観ないほうがいいわ。

最後に、これまでで一番身になったアドバイスは?
GF:スウェーデンでは有名な格言があって、誰でも親から聞かされるんだけど、「眠ってしまって雪の中で凍死しちゃうから、酔っ払うな」っていうのがあるの。80年代にはそうやって死んだひとがたくさんいたんだと思う。
FS:そうね、親なら誰でも、周りにひとりは雪の中で凍死した知り合いがいるわよね。

@doloreshaze

Credits


Text Francesca Dunn
Photography Céline Barwich
Styling Carl Gustaf von Platen
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

Tagged:
Interviews
Punk
Sweden
Stockholm
Dolores Haze
music interviews
scandi music