FKA twigsが語るヴォーギング文化と子供時代

FKA twigsがショートフィルムのプレミア上映を開催。上映後のQ&Aセッションでは、作品制作に影響を与えた子供の頃の遊び「ラブイン」や心服しているヴォーグ文化を語った。

by Emily Manning
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18 August 2016, 2:05am

ヴィジュアルと見事な振り付けのダンスは、FKA twigsの魅惑的なサウンドと切り離せない関係にある。彼女はこれまで、2012年リリースの『EP1』および2013年リリースの『EP2』に収められた全トラックに、MVを制作してきた。そして1作ごとにその世界観はシュルレアリスムの色を濃くし、より挑発的で、より摩訶不思議な作風になっている。キャリアが新たな高みへと到達するたびに、彼女が打ち出すヴィジュアル作品はより複雑さと不可思議さを増していった。しかし、今回彼女がブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージックでプレミア上映したショートフィルム『Soundtrack 7』は、FKA twigsのもっともクリエイティブな作品にして、もっとも"裸"の、原点回帰の作品となっている。そしてそれこそが、彼女がこの作品に求めたものだった。

昨年の夏、FKA twigsは第10回マンチェスター・インターナショナル・フェスティバルに参加した。ビョークやジェイミーXXも参加した今回のフェスティバルに、FKA twigsは招待アーティストとして7日間参加し、ダンス作品を振付からリハーサルまで行ない、出来上がった作品を映像化する際の監督を務めつつ、作品制作の模様をつぶさに自身のTumblrにリアルタイムでアップ・更新し続けた。期間中、参加者たちは小さなグループに分けられ、各グループにはFKA twigsのクリエイティブプロセスを覗くための30分が与えられた。リハーサルを覗くことができた者もいれば、ただそこに光るスポットライトを30分間見せられただけの者もいたそうだ。これについて、FKA twigsはQ&Aセッションで触れ、「スポットライトを見ただけの人たちは『なにも見れなかった』ってぼやきながら帰ったみたいだけど、でもそれがシアターというものよ。何もないところから生まれるの。それを参加者に解ってほしかった」と説明した。

『Soundtrack 7』は7本のビデオから成っており、FKA twigsが呼ぶところの「抽象化された自叙」となっている。映像は彼女の粘りある力強さと、そこにある優雅さをともに捉えている。『Soundtrack 7』は怒涛の展開でヴィジュアルとライティング効果をふんだんに用いてはいるものの、これまで彼女が作り出してきたコンセプチュアルなビデオの世界観からは逸脱した内容になっている。そのなかでも特に秀逸なのは、リック・オウエンスの妻でありミューズでもあるミシェル・ラミー(Michele Lamy)が発光する深海魚を演じ、FKA twigs自身は空気注入型の性具を演じた『M3LL 155X』だろう(ブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージックは『Soundtrack 7』の上映を前に興奮で騒がしくなった観客に、この16分のビデオを上映した)。彼女は『Soundtrack 7』について「巧妙なトリックやヒットソング、おしゃれな衣装、セクシーな体についての作品ではない。踊ること、感じることに献身してきた人たちを讃える作品よ」と語っている。Q&Aセッションで彼女が語ったなかでも特に重要なこと5つを紹介しよう。

「才能は真似できないし、鍛錬もまた真似できないもの」
ここ数年のあいだ、FKA twigsはマントラのようにそう自らに唱えてきたのだという。そしてそれが『Soundtrack 7』を完成させる際のもっとも大きな原動力となったそうだ。「コスチュームを多用して魅せようともしてない。ごまかしがない作品にしたかったから。この作品に登場しているダンサーは、本当に感じてるの。顔にそれが表れている。技術的に優れているダンサーもいるし、ただ感じて動くダンサーもいる。それがこの作品制作で何よりも素晴らしかったこと。創造に情熱を傾ける若き才能たちと一緒に取り組めたことがね」

子供の頃の遊びがクリエイティブプロセスに影響を与えた
彼女の作品に影響を与えているものについて訊かれると、彼女は決まって「私には学問的バックグラウンドがない。そしてそれを恥じてもいない」と答える。実際のところ、作品へ対する彼女のアプローチは、子供の頃に興じた遊びから生じたものだそう。「ラブイン(Rub-in)っていう遊び、知ってる?」とtwigsは観客に向かって訊いた。「でこぼこした表面に紙をのせて、色のついたクレヨンでこすると、物の触感や素材感がそこに浮きあがる——フロッタージュね。子供の頃、母がよく『この家のなかでいくつ違った素材感を見つけることができるかしらね?』って紙とクレヨンを私に渡してラブインで遊ぶよう促してくれたの。私は家のなかをくまなく回って、何時間も夢中でやり続けたわ。それこそが今わたしが作品作りでもやっていることなんだと思うの。異なる素材や色を組み合わせたり、"異質なものを重ねることで、そこに何が起こるか"といったことをね」

ヴォーギングの公平で献身的な姿勢をリスペクトしている
観客のひとりが彼女のボールルーム(ヴォーギングの技を競い合うコンテスト)シーンとの関わりについて訊くと、twigsはイベントVogue Knightsで起こったことの顛末を話し始めた。Vogue Knightsでは、参加者が即興のヴォーギングを披露するのが恒例となっているが、ヴォーギングが完璧にきまらないと、会場からは容赦ない反応が示される。この手厳しい反応は「チョッピング」と呼ばれ、twigsはこのイベントでチョッピングを受けたのだ。「チョッピングされるのは、クリエイターとしてもパフォーマーとしてもとても大切なプロセス。完璧だと思って披露してみたら、まったく見ず知らずのひとから『違うわよ。こうやるのよ』って手ほどきを受ける。それは成長のプロセスだし、ありがたく思うわ。私はヴォーギングとボールルームの文化における公平さをリスペクトしてる。私が何者であろうと、トレーニングを積まないで踊れば満点は絶対にもらえない。チョッピングを浴びて当然なの。それを録画してネットにアップされる……というのは困るんだけど」と言ってTwigsは笑った。「でもね、そういった姿勢をリスペクトしてるの。それと、ヴォーギングを十数年間も追求し続けているひとたち、伝説的なヴォーキングダンサー、ヴォーギングやボールルームのコミュニティのために献身的にやってきた人たちのことも、心から尊敬しているの。華やかさやお金、名声のためじゃなく、とにかくコミュニティのために身を捧げている人たちのことをね」

真実は彼女の目に
音楽作りであってもダンスパフォーマンスであっても、twigsはそこに直感的な真実を織り込もうとしている。「歌詞を書く。もしそれが真実から外れていたら私にはそれが直感的にわかるし、真実じゃなければ口にしたくない。ダンスも、体の内側から湧いてくる衝動と連動していければ、体がそれにすぐ気づく」と彼女は説明した。「真実を語り、表現するのにはたくさんの重要なことがそこに注ぎ込まれなければならない。まず、エゴは捨てる。真実は美しいとはかぎらないから。そして、オープンでなくちゃならないし、自分を信じることができなきゃいけない。周りにいる人々をリスペクトすることも同じく重要ね。助けてくれるのはその人たち以外にいないから」。また、本当の感情を感じ取る感覚は誰しも生まれ持っているのだともTwigsは言う。エネルギーに揺れる指や引きつる顔などはその好例なのだという。「誰も、感情と体を切り離すことはできない。ただそれに耳をかたむけるかどうかの違いなの。私にとっては目。目が敏感なの。不思議だけれど、目で感じるのは自分の感情に忠実なものばかりよ」

刺激的なクルーに囲まれている
観客席には自閉症の息子を持つ母親がいた。twigsが『Glass & Patron』のビデオやCalvin Kleinのキャンペーンで共演したダンサー、ケイナー・フレックス(Kaner Flex)もまた自閉症とともに生きるひとり。このイベントに参加していたケイナーに、この母親は「息子に自信を与えてくれてありがとう」と感謝の意を表した。これに対し、ケイナーは心からのメッセージを送った。「僕は自分の自閉症を障害だとは思っていません。むしろ利点だと考えています。自閉症は僕という存在の大きな一部。僕はそれを祝福し、誇りにすら感じています。それが僕という存在に輪郭を与えるものですからね。それは恐れるべきものでもない。僕は僕という人間に自信を持っているから人前で泣いたりもできるし、良心的な人間だからちゃんと怒りを表に出すことができる。宇宙に、世界に向けてそうした感情を発信できることを誇りに思っています」

Credits


Text Emily Manning
Photography Jamie Strachan
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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