NYから生まれる新しい女性のキャリアウェア

ニューヨーク・ファッションウィークは、やはりビジネスを大きく打ち出す結果となった。女性がリーダーシップを発揮する今という時代に贈る女性のキャリアウェアを、ヴィクトリア・ベッカムやジョナサン・サンダースが発表した。

by Anders Christian Madsen
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15 September 2016, 2:51am

Victoria Beckham spring/summer 17

ニューヨークで開かれるショーは、なぜだかビジネスウーマンを連想させる。映画『ワーキング・ガール』で女優メラニー・グリフィスが残したイメージだろうか。なんにせよ、ニューヨークで発表されるウィメンズウェアが他のファッション都市で発表されるそれに比べて、ひときわビジネスを想起させるのはなぜなのだろうか。ガールパワーの母とでもいうべき存在のヴィクトリア・ベッカムが、ニューヨークでコレクションを発表したのもそれが理由だ。そして、素晴らしいショーの後、バックステージでジャーナリストたちから「いつテリーザ・メイ首相のドレスを手掛けるのか」と質問され、「さあ、どうかしらね」と遠慮がちに微笑んだのも、そこに理由がある。「メイ首相は綺麗な体をしているし、ドレス好きと聞いているから、このコレクションには気に入ってもらえる服がたくさんあると思う」。女性がリーダーシップを握る新しい世界と、そこに生まれている新しいビジネス服に関して、ヴィクトリアのコレクションは見事に的を射ていた。フォーマルな雰囲気を保ちつつも、肩周りは軽く、裾には細工を凝らしてセクシーさも忘れていない。用いた生地は伝統的なものばかりだが、工夫を重ねた結果、ベルベットなどの冬素材が夏らしい風合いを持つに至っている。「洗ってみたりクラッシュしてみたり、プリーツ状にしてみたり、刺繍を施してみたりして、新しくてフレッシュな感覚を作ろうとチャレンジした」と言うあたり、さすがはリリシストだ。

Victoria Beckham spring/summer 17

「ニュー」と「フレッシュ」はヴィクトリアが今季のコレクション制作で掲げたテーマで、それは軽さに焦点を絞った今回のコレクションに顕著に見てとることができた。「サマーブーツがお気に入り」とヴィクトリアは、コレクション全体を通して見られたブーツについて語る。「クールでありながら軽くて、新しくてフレッシュなサマーブーツなんて、もう何年も発表されていなかったはず。夏のアイテムとして、とても新しく感じるの。自分でも早く履きたいわ」。重役クラスの女性は揃ってグレーのパンツスーツを着て、女性らしさを隠すよう助言されていた時代はもう過去のもの。ヴィクトリアのコレクションは、新たな時代のビジネスウーマン像を見事に反映していた。「フェミニンさをより演出するために、下にはブラを合わせているの」とコレクションに見られたブラトップについてヴィクトリアは説明する。いつも非の打ち所のない服装のテリーザ・メイは、一夜にしてその新たなビジネスウーマン像を体現する存在となったが、ヴィクトリアをより興奮させたのは、話題がヒラリー・クリントン大統領候補に変えたときだった。「ヒラリーに是非とも着てほしいわ!ハイウエストのパンツを選ぶはず!というか、そうであってほしいわ!」。ドイツの首相に関しては、クラッシュベルベットのスーツを「アンゲラ・メルケル」と名付けた。

Diane von Furstenberg spring/summer 17

重役クラスの女性が着るビジネスウェアの変化を語るうえで、メゾンDiane von Furstenbergの存在を避けて通ることはできない。創始者であるダイアン・フォン・ファステンバーグこそが、洋服で万能性を表現する方法を女性に与えた第一人者なのだ。「リラックスした感覚を自然に打ち出していながらも、イマジネーションに溢れている服」と、ダイアンに替わりDiane von Furstenbergのデザイナーに就任したジョナサン・サンダース(Jonathan Saunders)は、自身が同ブランドのデザイナーとして初めて手掛けた今季のコレクションについて話す。「最近の女性の着こなしに沿った服の考え方だと思う」。ショーを見ていた女性エディターたちの反応を見るかぎり、サンダースがさまざまなドレスコードを融合して作ったコレクションは大ヒットとなったようだ。軽く、レディ然としたドレスの数々は、フォーマルな建築的構造にDiane von Furstenbergならではのセクシーさが絶妙に加えられていた。そして何より、そこにはサンダース自身が言うように、リラックスした感覚があった——その感覚こそが、新しい時代のビジネスウーマンを語るうえでのキーワードのようだ。「ダイアンは、さりげなくも計算された美しい服を『面倒なのはイヤだけど、想像力をかきたてるデザインは必須』とする女性のために作ってきたのです」 とサンダースは、ダイアンについて語る。ダイアンはデザイナーの座からこそ身を引いたものの、現在もブランドの運営には大きくかかわっている。「あくまでも優雅さと楽しさを盛り込んだコレクションにしたつもりです」。ヴィクトリア同様、サンダースがこの「ヒラリー/メルケル/メイ」時代のキャリアウーマンに掲げるヴィジョンは、過剰なほど挑発的なスタイルを打ち出すものではない。むしろ、控えめな表現を用いることによって、フォーマルとセクシー、イージー、グラマラス、そして機能的といった要素の融合がパワフルな力を獲得している。このビジネス時代、女性は着たいものを着て良いのだ。

Diane von Furstenberg spring/summer 17

Credits


Text Anders Christian Madsen
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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