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『ゲットダウン』が私たちに教えてくれること

すべてを駆使して、無から創造する——Netflix史上もっともお金のかかったこの番組が、私たちに教えてくれること。

by Tom Ivin
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25 August 2016, 6:31am

Still from The Get Down

『ストレンジャー・シングス』が終わってしまった。そして来シーズンには、『ゲーム・オブ・スローンズ』までもが完結してしまう。しかし、ありがたいことに無視できない新たな番組が始まろうとしている。

脈打つビートが否応なしに興奮を煽るオープニングから『ゲットダウン』は、「愛はすべてに打ち勝つ」と信じてやまないバズ・ラーマン監督らしい、ダイナミックなロマンスを打ち出している。この作品で、ラーマンは崩れゆく70年代ニューヨークの世界観を完璧に、そして仔細に模倣すべく、ラッパーのナズ(Nas)を製作総指揮に迎え、夢や邪念、貧困、古い家族観に引き裂かれる恋人たちの物語を描いている。

1977年、猛暑のブロンクス。学校が休みに入り、エネルギーを持て余した若者たち。温かみのあるセピアのトーンに、プロジェクターでは補正しきれないフィルム映像の粗さ、そしてグラフィティに塗りつぶされた地下鉄の過去の映像がふんだんに使われた『ゲットダウン』は、これでもかというほど様々な要素が盛り込まれたディスコ時代のコメディドラマ。エネルギーに溢れ、スタイルに富み、そしてアフロを完璧に自分のものとしているジェイデン・スミスの見逃せないパフォーマンスなど、どこをとっても力強い作品だ。家がなければクラブにシェルターが、衝突があってもそれに勝る音楽への共通の愛が、ギャング間の抗争があってもそこには家族の絆が——そんなことを感じさせてくれる作品だ。

女の子の心を射止めるためにクラブに潜り込むにしろ、赤いPumaを履いたカンフー好きの主人公シャオリン・ファンタスティックのように華麗なグラフィティを描くにしろ、そこで求められるのは「速さ」だ。とにかく速く。イースト・リバーを越えてブロンクスを出るためなら、喧嘩に巻き込まれようと親に激怒されようと、とにかく速く前へと進まねばならない——それが『ゲットダウン』の現実だ。

『ゲットダウン』が私たちに教えてくれるのは、言葉、音楽、ムーブメント、愛、恋、女友達、スタイル、友情、家族、そして止めようにも止められない、まっすぐな若いエネルギーこそが何よりも大切だということ。サウンドトラックにカン(Can)やグランドマスター・フラッシュ(Grandmaster Flash)を起用した『ゲットダウン』は、素晴らしいキャストと共に、スコセッシの『ヴァイナル』が描ききれなかった1970年代ニューヨークのアフリカン/西インディアン/プエルトリカン地域の現実を活写し、70年代のコカインよりもハイな質でもって、"理性では説明がつかない感情のパワー"を教えてくれる。

いま私たちがすべきは、初心にかえってやりなおすことだ。ムーブメントを起こし、関係をまた築こう。動こう!愛そう!もっと動こう!もっと愛そう!「ユナイテッド・キングダム="連合"王国」などとうたっていながら欧州連合からの離脱する決断をしたイギリスと、大統領選で不適任きわまりないドナルド・トランプの理解しがたい好調が続いているアメリカ、そして犯罪率上昇とテロリズムの脅威が止まらない世界だからこそ、"荒れ果てたところから起こるムーブメント"のことを考えてほしい。『ゲットダウン』のキッズは、いつの時代のキッズともなんら変わらない。彼らは音楽をかけ、踊る。仲間と共に。ローマ花火のように激しく火花を散らし、明日など来ないかのように夢中で踊りながら、心には常に目標を見据えている。いつでも、何かに向かって前進するのだ。いつでも変化を求めろ。仲間と共に。ブロンクスが焼け落ちたら、そこに自分の世界を築き上げるのだ。

「ゲットダウンが何だか、お前知らねえのか?」——『ゲットダウン』は崩壊しゆく世界に生まれた、止められない何かについて教えてくれる、Netflixの最新番組だ。

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Credits


Text Tom Ivin
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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