ストレート アップス:アイルランドのLGBTコミュニティ

写真家ドナール・タルボット(Donal Talbot)が現代アイルランドのLGBTを自宅や彼らにとって心地よい空間で写真にとらえた。7人のLGBTに、アイルランドでLGBTとして育つことの難しさ、自分の意見を見つけることの大切さについて聞いた。

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nov 1 2017, 9:54am

2017年11月17日——アイルランドは同性婚を認め2周年を迎えた。

2015年の11月17日、ふたりのアイルランド人男性がアイルランドのティペラリー州で結婚式を挙げた。ふたりは国民投票の結果を受けてアイルランドが「法に基づき、結婚は性別を問わずふたりの成人の間に成立する」という条文を憲法に加えてから国内で初めての同性婚カップルとなった。アイルランドでヘテロセクシュアル(異性愛者)と平等の権利がLGBTのひとびとに認められてから2年が経った現在、平等のための戦いは世界で続き、オーストラリアでも同性婚合法化の是非を問う国民投票が行われることとなった。

同性婚の権利には興味ない、というひともいるだろう。しかし、それが認められたことはLGBTコミュニティにとって大きな意味を持つものだった。アイルランドに暮らすクィアたちにとって、よりフェアで平等な社会実現への大きな一歩となったからだ。この国民投票の結果はアイルランドという国を変えゆっくりながらもアイルランドが国民のニーズを尊重する方向に向かっていると世に知らしめた。

それをきっかけに、「この国に良い変化を」と立ち上がるアイルランドの若者の間で政治ムーブメントが生まれた。アイルランドは1993年の同性愛非犯罪化の後もLGBTの人たちに苦難を強いてきた。そして同性婚が合法化された現在も憲法第8条に「胎児の生命権」を掲げて「母体の生命が危ぶまれるなどの場合を除き、中絶を禁止する」と女性が持ってしかるべき権利などがおざなりになっている現実もある。

i-Dはアイルランドに暮らすLGBTたちに、同性婚合法化がもたらした変化や現代にクィアとして生きている意味、そして平等な世の中のために今後は何がなされなければならないかについて聞いた。

リア(19歳)とルー(20歳) (トップ写真のふたり)

—アイルランドでLGBTコミュニティの中で育つというのはどのようなものでしたか?
ルー:自分がLGBTコミュニティの一員として育ったのかはわからない。トランスジェンダー女性として大人になっていくことは、世界のどこでもそうだと思うけれど大変なときもあった。でも、比較的恵まれた環境にいたと思う。物理的なクィアコミュニティでも、他の場所と変わらず自分はアウトサイダーなんだと感じていた。いろんな意味でね。友達との親密な関係がもっともリアルなコミュニティだったし、成長する上で一番影響を与えると思う。

—アイルランドをより良くしていくには、わたしたち若者に何ができるのでしょうか?
ルー:自分自身を批評的に見つめることと受容することが大切だと思う。LGBTだけじゃなく世の中には問題がたくさんあって、同様にアイルランドのクィアの若者たちにも苦難が蔓延している。労働階級の人々や少数派の人種、女性、女性らしさをさらけ出したLGBTメンバーなどは黙殺されがちだと思う。矮小化されたひとたちの声や訴えはなかなか光がが当てられない。社会政治的な思想が強まる一方で、それが慈悲の心と行動に結びつけば良いと思う。わたしは楽観的。そんな未来が実現したらいいな。

フランシス(19歳)

—アイルランドを訪れたことがないひとのために、この国を紹介してください。
田舎は外国のひとが思い描くアイルランドのイメージそのもの。ダブリンは常に変化している街。ひとつ言えるのは、一度訪れたらこの国のひとたちのことを忘れられなくなるはず。

—アイルランドでLGBTコミュニティの中で育つというのはどのようなものでしたか?
LGBTコミュニティをとりまく状況は劇的な進化を遂げた。わたしがファミリーと呼ぶ仲間のなかでも年上のひとたちは、セクシュアリティを隠して生きることを強いられていたようだけれど、今は誰かがLGBTだと知っても誰もなんとも思わない。LGBTのひとたちが社会のなかで共存しているのは普通のことになった。こんな話をすることすら"退屈なこと"と考えられる未来がすぐそこに来ているような気がする。

—同性婚合法化の是非を問う国民投票はあなたにとってどのような意味を持ちましたか?
クィア間の恋愛関係を社会として"普通"とするための最後の一歩だった。以前は社会がわたしたちの存在を異質のものとして扱うことが許されてきたけど今は平等に扱うことが法律で定められているから。

ショーン・チェローニ(19歳)

—いまアイルランドのLGBTの若者が直面する最大の問題とは?
トランスジェンダーのひと向けの医療サービスが行き届いていなくて、もともと面倒なプロセスが強いられるトランスジェンダーにさらなる苦悩を強いられている。

—同性婚が合法化されてからこの国はどのように変化したと感じますか?
同性愛が前よりオープンに認められるようになったけれど、それはダブリンに限ったことで他の地域ではそれほど大きな変化はないと思う。

—アイルランドをより良くしていくには、わたしたち若者に何ができるのでしょうか?
女性の中絶の権利を訴えること。

イーマー・ウォルシュ(25歳)

—アイルランドを訪れたことがないひとのために、この国を紹介してください。
10代のときに付き合った最悪の彼氏みたいな存在——いつもイライラしていて落ち着きがなく、感情表現が下手で、道徳心に欠け、とんでもなく美しくい……だけど、根っからの男性至上主義。

—いまアイルランドのLGBTの若者が直面する最大の問題とは?
気軽に寄れるクィア・スペースが少ないこと。性教育とトランスジェンダーのための健康保険が普及していないこと。誰にでもホームレスになってしまう可能性がある経済状況。それと街中の暴力。

—アイルランドのLGBT文化にはどんな未来を思い描いていますか?
住宅と福祉の待遇は決して良いと言えないし、中絶の権利も認められていない。移民関連の体制も最悪。「誰かが黙殺されているかぎりはこの国が平等なんて言えない」と強く訴えていくべき。

オルワフェイティミ(18歳)

—アイルランド人であることを誇りに思いますか?
アイルランド人であるとは考えていないけれど、ずっと暮らしてきてここに存在することで誇りを持てるのはたしか。

—同性婚が合法化されてから、この国はどのように変化したと感じますか?
良い方向へと変化したと思う。自由があり、自己表現が認められ、社会が強いてきた規範を一度は疑ってみようという風潮が生まれた。すごくいいことだと思う。

—アイルランドのLGBT文化は将来どうなっていてほしいですか?
たくさんのレイヴやパーティ、そして自己表現に溢れた明るい未来。

トニー・ウォルシュ(56歳)

—アイルランドでLGBTコミュニティの中で育つというのはどのようなものでしたか?
同性愛が非犯罪化されるまでは本当に大変だった。あらゆるものが犯罪として取り締まられ、国全体が抑圧のムードだったたから。貧困の蔓延もあの時代のホモフォビア(同性愛嫌悪)を助長していたね。でも解放に向かってLGBTの仲間たちが立ち上がった当時は刺激的でもあった。

—同性婚が合法化されてからアイルランドはどう変化したと感じますか?
表面的なレベルだと街中で同性のカップルが手をつないだりして、同性愛が目に見える形で存在できるようになった。もっと本質的なレベルでは、社会がようやく成長して、早急な対応が求められる問題を受け止め始めたなと感じる。

—アイルランドをより良くしていくうえで若者には何ができるのでしょうか?
責任をもって自分らしく生きるということ。コミュニティの一員として役立つ存在になってもらいたい。自分の意見を見つけ、それがまだ見つかってないひとたちを代弁できる存在になってもらいたい。

アリッサ(19歳)

—アイルランドでLGBTコミュニティの一員として育つというのはどのようなものでしたか?
わたしが小さい頃は誰もクィアについて話そうとしなかった。誰も触れないからゲイやバイセクシュアルであることは問題なんだって考えるようになっていた。でも今はわたしの家族も友達もそれを問題だなんてまったく思っていない。

—同性婚が合法化されてからこの国はどのように変化したと感じますか?
同性婚が認められてわたしの人生は変わった。17歳で同性婚合法化の運動に参加してわたしは「国民の意志で国が変わるわけがない」って思っていたけど大成功を収めた。あれには人生が変わってしまうほど感動した。

—アイルランドをより良い国にしていくには、わたしたち若者に何ができるのでしょうか?
投票登録をして、投票の前にはきちんと勉強をして、投票日に自分の意見を反映させるためにきちんと投票所に行くこと。

@donal.talbot