NANA KOMATSU FOR “ORIENTAL IN PARIS” BY ANGELO PENNETTA FOR I-D JAPAN THE JOY ISSUE NO.4 2017

小松菜奈:パリで見つけた新しい私

ハリウッド進出がいよいよ目前に迫ってきていることを感じさせられた映画『沈黙』の日本公開から数ヶ月。パリに降り立ちシャネルのオートクチュールに身を包んだ小松菜奈は、いつにも増して宝石のような輝きを放っていた。

by Kazumi Asamura Hayashi; photos by angelo pennetta
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05 October 2017, 7:11am

NANA KOMATSU FOR “ORIENTAL IN PARIS” BY ANGELO PENNETTA FOR I-D JAPAN THE JOY ISSUE NO.4 2017

7月頭にパリで行われたCHANEL2017/18年秋冬オートクチュールコレクション。真夏の日差しが照りつける会場のグラン・パレにはエッフェル塔が再現され、シ ョーの終わりにはパリ市長からカール・ラガーフェルドにパリ市大金章を授与されるというサプライズがあった。観客を魅了する圧巻のショーが繰り広げられたその特別な機会に招待された小松菜奈は、興奮冷めやらぬ面持ちで翌日のインタビューの場にやってきた。何度か訪れているというパリで会った彼女とは、東京から遠く離れてリラックスした雰囲気の中、ゆっくりと話すことができた。グレープフルーツジュースを片手に「オートクチュールのショーは、ずっと直に見てみたいと思っ ていたんです」と嬉々と語る。小松は飾らない気さくな性格の持ち主だ。

NANA KOMATSU FOR "ORIENTAL IN PARIS" BY ANGELO PENNETTA FOR I-D JAPAN THE JOY ISSUE NO.4 2017
NANA MKOMATSU FOR "ORIENTAL IN PARIS" BY ANGELO PENNETTA FOR I-D JAPAN THE JOY ISSUE NO.4 2017

12歳からモデルのキャリアをスタートした彼女は、すぐにローティーン向けのファッション誌の表紙を飾る。そうしたファッション誌で活躍するのは日本の女優にとって登竜門となっているが、そのなかでも世界を舞台に活躍できるのはほんの一握りだ。中学2年生のときには『装苑』をはじめ成人向けのファッション雑誌の撮影のため、高速バスで山梨から東京にずっと通い続けていたという。「12歳のときから自分でマネージャーさんとずっとやりとりしてたんですよ。スケジュールもひとりで管理して、スケジュール帳にいつも書いていました」というのだから、なんともたくましい。こうして育まれた行動力は、彼女の強さの基盤となっている。モデルとして着実にステップアップしていくなかで彼女に訪れた転機が、演技の世界への入り口となった映画『渇き。』へのオーディションの誘いだった。話すのが得意ではないと自分を評価する彼女は当時、モデル業のほうが相性がいいと考えていたようだ。「女優業って、あんまり興味がなかったんです」と言いながら「最初のオーディションが『渇き。』でした。中島哲也監督のオーディションを受けることにまず意味があるって周りの人にも言われたので、受けてみようと思いました」と振り返る。

『渇き。』は鬼才・中島哲也による長編映画で、その過激な描写とストーリーで公開時には大きな物議を醸した問題作だ。日本映画界を代表する面々が名を連ねた豪華なキャスト陣、CMから映画へ主戦場を移した監督の独創的かつ洗練された感性など、本作を際立たせる要素は多分にある。しかしなによりも、この作品を見終えたあとには、とても初主演とは思えない小松の堂々たる雰囲気が最も印象に残ることだろう。彼女が扮した主役の加奈子は、清純で可憐な印象とその端正な容姿とは裏腹に、実は薬物や売春の斡旋を行い、破滅へと周囲を巻き込む悪魔のような人物だ。10代とは思えない魔性の魅力をもつ難しい役柄を、初の本格的な演技でこなしてしまうのは、才能と呼ぶ以外に言葉が見当たらない。中島監督は当時のインタビューで、内面の理解しづらい加奈子という役のビジュアルに も苦悶するなかで小松と出会い、「こういう子じゃないかなと思えた」と語っている。本人は「楽しくないのに笑って、怒ってもいないのに怒らなきゃいけないの? みたいな疑問からはじまって、出演が決まってからは全部が初めてで辛いというか、大変でした」と言いながらも、「でも、現場では笑っていたいな、楽しくいたいなと思ったんです。役がすごくテンションが高いので、逆に何も考えなければいいやと思っていて、それで監督が指示をしてくれて......とにかくそういう感じですごく楽しかった」のだと教えてくれた。

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演じることの喜びを見つけた彼女は、そこから瞬く間に飛躍していく。"インディーズの巨匠"と称される真利子哲也監督のメジャーデビュー作品となる『ディストラクション・ベイビーズ』では、柳楽優弥演じる無言で暴力を貫く主人公に巻き込まれる場末のキャバクラ嬢を見事に演じきった。若者の葛藤を描く青春映画は、新進気鋭の監督がクリエーションを最大限に発揮する題材としてこれまでに多くの作品が世に放たれてきており、本作はその文脈に沿った作品だ。一方でジョージ 朝倉による原作の実写化である『溺れるナイフ』(山戸結希監督作品)では、夢と恋に翻弄される美少女を演じてみせた。少女漫画を原作にした映画は十代の観客をはじめとして絶大な人気を誇る、近年最もヒットを繰り返すジャンルだ。こうして伝統からトレンドにわたり数年足らずのうちに多種多様な経験を積み上げ、役に体当たりしながら、彼女は自分を磨き上げてきた。本人が「表現することは一緒」と語るモデルの仕事も、今日に至るまで続けてきた。「服装や髪型、持っているモノでその人の人柄がわかるようになったのは、モデル業でとぎすまされた感覚のおかげかもしれません」

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そうして確実に成長を続ける表現者・小松菜奈を世界が目の当たりにすることとなった決定的な出来事が、世界的巨匠であるマーティン・スコセッシが長きにわたる構想を晴れて実現した『沈黙』への出演である。言語の壁を乗り越えて見事に役を勝ち取ったあとも、多くの経験をしたようだ。「現場に行って、メイクまでしたのに、今日は撮影ができないっていうこともあって」と彼女は話す。極めて限られた予算と時間で進行する日本の現場ではあり得ない。そういった違いも「それに対して怒ることもなく、納得してしまうというか、そういうマインドでいました」と、楽しむことで彼女は成長の糧にしていく。監督の印象について聞いてみると、「いつもニコニコしていて、全然怒らないし、現場には気になったら来て、すごい褒めるんですよ」と笑いながら教えてくれた。「『今のすごく素晴らしい、もう1回やってみよう』って言って、40テイクとか当たり前にやるんですよ。何を使われてるのかわからないし、何が正解なのかがわからないのは、役者として面白みがありま した」と彼女は楽しそうに言った。第一線の監督が手がけるハリウッド作品の現場には時間や予算の制約はないに等しく、ゆえに実力のみがものをいう世界だ。シビアな現場でしか感じられない張り詰めた緊迫感は、彼女をより一層高みへと押し上げることとなった。「私すごく気が強いんです。そうみえないかもしれないですけど、意外と。真剣に物事を捉えているからこそそうなると思うんです」と伝えてくれる彼女。はたして今後どのような変化を遂げるのか、世界に羽ばたこうと成長し続ける21歳から、目が離せない。

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Credits


Text Kazumi Asamura Hayashi.
Model Nana Komatsu.
Photography Angelo Pennetta.
Styling Emilie Kareh.
Hair David Harborow at Streeters.
Make-up Nami Yoshida at Bryant Artists.
Photography assistance Jack Day.
Styling assistance Fiona Hicks.
Nana wears all clothing Chanel Fall / Winter Haute Couture Collection

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