Richard Malone spring/summer 18. Photography Mitchell Sams

ファッションがサスティナビリティへの新たな道を探るべき理由

ラグジュアリーブランドは毎年数十億ドル相当の衣服を廃棄、ファストファッション同様に使い捨てられている。現状を変える手立てはあるのだろうか?

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aug 31 2018, 1:48pm

Richard Malone spring/summer 18. Photography Mitchell Sams

私たちはどうすればファッションの諸問題を解決できるのか? ここ数年で、性的暴行、人種差別、性差別、年齢差別など、関係者の倫理的問題が相次いで告発されただけでなく、ファッションは環境汚染に加担する世界最大規模の産業となった。アパレル産業は(世界人口は70億にもかかわらず)毎年1000〜1500億のアイテムを生産しているが、ファッションブランドは、そのうち数十億ポンド相当の製品を廃棄しているという。これは巨大なファストファッションの話ではない。一生使える製品を売るとされている〈ラグジュアリー〉ブランドの話だ。一生モノのはずが、私たちが買う他の製品と同様に使い捨てられているのだ。

そもそもファッションは、その存在自体がサスティナビリティ(持続可能性)に対するアンチテーゼだ。疑念の声もあるかもしれないが、それが事実だ。ファッション業界が今のペースで廃棄を続ければ、海に捨てられるプラスチックのマイクロファイバーは、2050年までに2000万トンを超えると予測されている。2030年までには地球2個分の資源が消費され、衣服の需要は63%増加する見込みだ。

現在、世界では年間5300万トンの服が生産され、そのうち実に87%が焼却または埋め立て処分されている。循環型経済を推進するエレン・マッカーサー財団の2017年の調査によると、現時点で新たな衣服にリサイクルされる服の原料は、1%にも満たないという。

私たちは問わなければならない。深刻な環境汚染とラグジュアリーという価値観の相関関係は? ラグジュアリーブランドはなぜ、このエコの時代に後れをとっているのか? そして何よりも、これらのブランドはどうしてラグジュアリーの本来の意味を失ってしまったのか? 今年初め、あるめざとい記者が、Burberryが約3000万ポンド(約42億円)相当の衣服、バッグ、香水、靴を処分していることを嗅ぎつけた。これらはまさにキャットウォークを飾り、洗練されたブティックに並ぶアイテムだ。ラグジュアリーブランドがこのような環境汚染に加担するなど、到底許されることではない。しかし本当の問題はそれがBurberryだけの問題ではないことだ。売れ残り在庫の焼却処分はファッション業界の数ある公然の秘密のひとつとなっている。ここ数年で、Cartier、Alaïa、Chloéを傘下に置く企業グループ、リシュモンを始め、Céline、Chanelは、数百キロ相当の売れ残り在庫を廃棄したとして非難されている。高級ブティックが集結するボンド・ストリートに並ぶブランド品は、〈メイド・イン・バングラデシュ〉製品と大して変わらない扱いを受けているのかもしれない。

あらゆる主要ブランドが、これまでずっと——そして現在も——このような廃棄を続けている。なぜならラグジュアリーブランドは、希少性、そして何よりも排他性を前提に成り立っているからだ。セール価格で販売しても意味はない。売れ残った製品は、ファストファッション同然の価格で叩き売られるか、地下倉庫行きだ。ディスカウントショップに大量のラグジュアリーブランド製品が並べば、そのブランドの価値は下がる。

ファスナー、合成繊維、プラスチックのボタンなど、ほとんどが微生物によって分解されない製品を焼却処分しても問題解決につながらないのは明らかだ。

さらに、〈ラグジュアリー〉製品が大量に市場に出回れば、偽造業者の手に渡りやすくなる。4億5000万ポンド(約630億円)規模の闇市場は、単に非合法なだけではない。社会的弱者や不法移民が、低賃金労働で搾取されることになる。その利益は、組織犯罪、武器や麻薬の密輸、人身売買の資金になるかもしれない。

ファスナー、合成繊維、プラスチックのボタンなど、ほとんどが微生物によって分解されない製品を焼却処分しても問題解決につながらないのは明らかだ。焼却処分は、ファッション業界におけるより広範な懸念を物語っている。例えば、ベッドシーツを正規の値段で買いたがる客がいるだろうか? バーゲン好きな人なら、正規の値段では買いたくないだろう。これと同じことが、Tシャツやデザイナーブランドのオールシーズン使える定番アイテムにも当てはまる。

斬新なアクセサリー、時期ごとに変わるブランド戦略、特徴的なモチーフなど、季節ごとの製品が割引価格で売られることはない。〈誰も買わない〉という印象を与えてしまうからだ。これは、ラグジュアリーブランドの近寄りがたい雰囲気と憧れの的としてのイメージを演出し、消費を促すための巧妙な戦略なのだ。

eコマース、SNS、中流層向けのブランドの登場によって、ラグジュアリー産業は転機を迎えた。さらに製品の焼却処分が世間に与えた衝撃は、同産業の文化的変革を表している。1930年から正式に使われ始めた形容詞〈ラグジュアリー〉の語源は、21世紀にこの単語が意味するものを予言していた。〈ラグジュアリー〉の語源は〈過剰〉を意味するラテン語〈luxus〉だ。その後12世紀のフランスでは、罪深い自己中心主義や色欲を意味する〈luxurie〉が使われていた。

本来、〈ラグジュアリー〉とは、貴重で、考え抜かれて制作・デザインされたオーダーメイドのアイテムを指す言葉だ。しかし、1980年代のいつ頃からか、ラグジュアリーブランドは大企業になり、ファッションのグローバル化が進んだ。ドバイにブティックがオープンし、北京でリップスティックが発表され、モスクワでトランクが発売された。大量の香水や化粧品、サングラスが世界の名だたるブランドに膨大な収益をもたらし始めたのは、おそらくこのときからだろう。売れ残ったものは、拝金主義者の神殿で文字通り焼かれたのだ。

現在、〈ラグジュアリー〉という単語は、ロンドンのトッテナム地区の部屋から英国のスーパーTESCOのソーセージまで指す。つまり多くの人は、たいてい白人工場労働者のこだわりを指す『職人技(craftsmanship)』や、二流の製品を売りこむために死者の名前を利用するさいに使われる『遺産(heritage)』のような、格下の単語と同義だと思いこんでいる。

何もかも手に負えなくなる前に(すでに手遅れかもしれないが)覚えておくべきは、全てのハンドバッグが地獄の火に焼かれるわけではない、ということだ。正義を貫くラグジュアリーブランドもある。例えばHERMÈSでは、全ての製品が手作業で作られている。つまり、このブランドは供給プロセスを徹底的にコントロールし、毎年決まった数の製品を生産している。あの悪名高いウェイティングリストにも納得できる。このフランス生まれのブランドには、〈petit h〉という独創的なプロジェクトもある。職人たちは、布や皮の切れ端を使い、技巧を凝らしたシックな小物を生み出している。

若きファッションデザイナーたちも、持続可能なだけでなく斬新な生産方法を取り入れている。デザイナーのリチャード・マローン(Richard Malone)は、色鮮やかで立体的なウィメンズウェアで知られている。一方、あまり知られていないのは、彼が海洋ゴミ、漁網、ペットボトル、古い学校の制服のアクリル繊維を再利用した布を使い、従来の〈環境に配慮した〉ファッションのイメージからかけ離れたニットへと見事に変身させていることだ。また、リチャードはあるとき、インド、タミルナードゥ州の女性の織り手たちに、自然由来の原料から、水の消費量を抑えた鮮やかで無公害な染料を作るよう依頼した。彼のコレクションの、綺麗に染まった色合いからは想像もできないだろう。また、環境問題に配慮しつつ、ひそかに革新的な服作りを行う新世代のデザイナーは、リチャードだけではない。

しかし、倫理観の高さが自分をよく見せたいという思いを邪魔し始めたのはいつからなのか? 私たちは、服の原料よりも自分のお尻がどう見えるか、ということに気を取られがちだ。だからこそRICHARD MALONEの服は、女性のリアルな生活に見事に調和しているのだろう。肩のラインが立体的なフルレングスのコート、ハイウエストのフレアパンツ、曲線的なクロス柄のニットドレスは、いずれも手縫いで耐久性に優れているだけでなく、洗濯機で洗える便利さも兼ね備えている。

ファッション業界の消費者の大半が今も、購買決定のさい、道徳的な配慮よりも価格、目新しさ、質、デザインを重視している。

「僕たちは本来のファッションから遠ざかってしまいました。ここ20年でファッションは非常に大きく変わりました」とリチャード。「僕が目指しているのは、機能的で、現実的に生産できるレベルの製品を作ることです。工場で服を作る余裕はなかったので、インハウスで作りました。それこそはクライアントが求めるものです。彼らは賢明ですから、マーケティングやブランディングの裏の意図がわかっています」

アイルランド出身のリチャードは、以前Louis Vuittonを始めとするラグジュアリーブランドに勤めた経験があり、そこで皮革や余った布の焼却処分を目の当たりにした。「数社のラグジュアリーブランドに勤めましたが、製品の質は、大衆向けのブランドと大して変わりません」と彼は指摘する。「違いは量です。製品自体は同じですが、2000着作るか20万着作るかの違いです」

ここで私たちは、最初の10億ドルの問題に立ち返ることになる。この問題の解決策とは何か? 多くのブランドにとっての答えは、循環型経済だ。これは、製品と原料の回収、再生、再利用という、価値の〈循環〉を指す言葉で、服を〈作る・使う・捨てる〉という従来の流れの代替案だ。2017年のコペンハーゲン・ファッション・サミットで、H&M、Stella McCartney、Nike、そしておかしな話だがBurberryも加わって、〈作る・使う・捨てる〉の廃止を訴えた。さらにH&Mは、2030年までに完全な循環システムを実現し、100%再生可能エネルギーに移行すると宣言した。

「幸いにも、透明性、テクノロジー、消費者の意識の向上によって、状況は変わりつつあります」と言明するのは、ファッション・コンサルタントのジュリー・ギルハート(Julie Gilhart)だ。彼女は元BARNEYS NEW YORKのファッション・ディレクターで、長年にわたって持続可能性の問題を訴えてきた。彼女曰く、77%のミレニアルが環境に配慮したブランドの製品を選ぶという。

この変化によって、リセール市場が広く容認されつつあり、ファッション通販サイトのNET-A-PORTERと同じ形式で、証明書付きのデザイナーブランドの古着やラグジュアリーブランドの中古品を扱う、The RealRealやVestiaire Collectiveなどの企業が成長している。ファッション業界で動物実験の廃止に率先して取り組んできたStella McCartneyは、今年4月、循環型経済への移行に踏み切ったThe RealRealと提携を結んだ。The RealRealのサイトにStella McCartneyの製品をアップロードすると、同ブランドの新品に使える100ポンド(約1万4000円)分のクーポンがもらえる仕組みだ。シンプルだが、実に独創的なアイデアだ。

「このシステムによって、クローゼットの不要な服を整理して新たな服を手に入れるという、完全な循環が実現します」とギルハートは説明する。「ステラは、自社の製品が廃棄されることなく、より長く価値を保てるよう、The RealRealのような委託販売サイトでの転売を奨励してきました」

ファッション業界の消費者の大半が今も、購買決定のさい、道徳的な配慮よりも価格、目新しさ、質、デザインを重視している。boohoo、MISS GUIDED、ASOSなど、ファストファッションの通販サイトの需要は尽きることがない。若い世代は今後も、何らかの意味を込めてデザイン、製造、リサイクルされた製品の代わりに、低価格な代替品を求め続けるだろう。〈ラグジュアリー〉ブランドの製品がファストファッション同様に使い捨てられている現状を、彼らが知らなければなおさらだ。

原料や製造過程に自信を持つこと、考え抜かれたデザイン、繰り返し使うことを見越した製品。真の〈ラグジュアリー〉とは何か、その基準を定めるのはブランド自身、特に向上心のあるブランドにかかっている。

This article originally appeared on i-D UK.