i-D UK最新号『SOUNDING OFF』発売!

ByHattie Collinsphotos byCraig McDean

i-Dは社会に考えることを促し影響を与える思想家たちや、世界を揺るがすひとびと、そして音楽を作り出すひとびとと出会うために世界を巡った。

This article originally appeared in The Sounding Off Issue, no. 350, Winter 2017.

英国i-Dの最新号『Sounding Off issue』は音楽と、それを作り出しているひとびとを讃えると同時に、音楽を創造するという行為についてアクティビズム(政治活動)が持つパワーについて、そしてひとびとの強力によってでわたしたちの世界が成り立っているのだという真実についても探っている。音楽はひとの魂を揺さぶり、そして突き動かしてくれるもの。わたしたちは音楽の力に突き動かされて踊り、涙を流し、そして革命を起こす。現代のミュージシャンたちは政治から精神衛生、アイデンティティ、女性の自律性にいたるまで世界に蔓延る問題に関して黙ってなどいない。『Sounding Off issue』はグラスゴーからガーナ、アイルランド、イラン、シカゴ、中国まで、音楽の今を生きる人物たちの言葉と写真を集めた。ケンドリック・ラマーは、ニューヨークを拠点に活動する文化コメンテーターのトゥーレ(Toure)とのインタビューで「すべては良い方向に向かう」と唱えている。またフランク・オーシャンは、今号の一部のキュレーションを自ら手がけ、彼を取り巻く先進的ミュージシャンやパフォーマー、クリエイターたちへのオマージュを捧げている。また、オーシャンは、「Yes」と唱えることで生まれるパワーについて書いた個人的な文章も寄せてくれている。カナダ人シンガーで作家でもあるトミー・ジェネシスは今回初めてi-Dの表紙を飾るに際し、エッセイと詩を書き下ろしてくれた。そこで彼女はアイデンティティ、セクシュアリティ、そして従順であることが求められる音楽業界で、臆病な自分に克服していった経験について書いている。

今回の『Sounding Off issue』で取り上げているアーティストやクリエイターたちは唯一無二の存在だ。彼らを唯一無二の存在たらしめているもの、それは彼らが世の中に対して、確固たる視点を持っているということ。そして世界が彼らに耳を傾けているということだ。リル・ピープとSZAは、精神衛生についてオープンに、そして情熱的に話し、シド(Syd)は性的アイデンティティについて、世界に発言する代弁者としての自分を徐々に受け入れていった過程を語っている。ラッパーのGiggs(ギグス)は寡黙な男だが、だからこそ彼がグレンフェル・タワー火災や教育について紡いだ言葉には重みがある。海の向こうのジャカルタでは、Rich Chigga(リッチ・チガ)の名で活動するブライアン・イマニュエル(Brian Imanuel)が頻繁なツイートや、数百万の閲覧者数を誇るYouTube動画を通して声をあげている。そしてガーナでは、Fuse ODGと仲間たちが贅沢な暮らしとアフロビートを独自に表現しする傍、その裏では子ども達のための学校建設を進めるなどしている。西洋ではミュージシャンが音楽活動で身の安全を脅かされる恐れなどほとんどない。しかしイランのような国では、ミュージシャンになるということが危険と背中合わせの現実を生む。中東では音楽活動が革命を誘発するものとして政治的行為とみなされ、ミュージシャンたちは脅迫を受けたりもするのだ。『Sounding Off issue』の巻末ははシカゴ出身のラッパー Vic Mensa(ヴィック・メンサ)からの寄稿で締め括られている。アフリカ系アメリカ人として、植民地化と隷属の象徴に抵抗することを誓ったエレガントにして力強い言葉が入稿直前の編集部に彼から届いた。

今、世界政治は大きな転換期を迎えている。不安と恐怖、不信と不満が世界を覆っている。音楽はわたしたちに答えを与えてくれなどしない。それでもわたしたちは問い続けていかなければならない。世界を推し進めてていかなければならない。世界がそれを必要としているのだ。

Hattie Collins, Guest Editor