とっても大好き:MIKIOSAKABE 2018SS

Amazon Fashion Week Tokyo最終日。坂部三樹郎とシュエ・ジェンファンが手がけるMIKIOSAKABEは、時代も国も自由奔放にタイムトリップして、趣くままにすくい上げた様々な要素をミックスしていた。ただし、随所に「和」のエッセンスを匂わせながら。

by Tatsuya Yamaguchi; photos by Jus Vun
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23 October 2017, 7:16am

天井に吊るされている巨大で淡く紫色に発光する球体が、大陸を描く前の地球儀のようにも見えた。客席から少々見上げる位置に設営されたランウェイには、のちにモデルが歩く動線に沿って蛍光カラーのテープが貼られている。渋谷ヒカリエ・ホールAには大勢のゲストが駆けつけ、Amazon Fashion Week Tokyoのフィナーレを飾るMIKIOSAKABEのショーを待っていた。

先の球体が、橙へと色を変える。例えるなら、夜の満月のようだ。レインボーカラーの束髪風ヘア、ベストがドッギングされたバイオレットオレンジ色のジャケットワンピース、レトロな花柄が描かれた厚底履や女子高生風スクールバック(予想するに、中身はほとんど入っていない)。このファーストルックだけでも、年代や世代も様々な要素がミックスされている。共通するのは、日本国内のどこかにあったものだということ。デザイナーの坂部三樹郎は「今回は『日本の昔のもの』のエッセンスと現代のファッションをミックスして、いかに調和を生み出すかがテーマ」だと話す。会場に流れたSleigh Bellsが歌う「Crown on the Ground」は、セレブ文化に憧れたティーンネイジャーたちが遊び感覚でセレブ宅から窃盗を繰り返す、ソフィア・コッポラ監督の映画『ブリングリング』の主題歌的存在だ。

例えば鹿鳴館(西洋に手本がある)の壁紙にありそうな花柄、スパンコールやラインストーンで覆われた「ぽっくりなどのヨーロッパにはないシェイプを生かした」という超厚底シューズ。その歩きにくさのせいだけではなく、おそらく意図的に一つひとつのルックの細部を熟視できるほど、モデルはゆっくりと歩みを進める。決して「和」そのものを表現するのではない。肩の膨らみ、クリノリンで作り出すようなバックボリューム、バルーンスリーブと誇大化するディテールは中世ヨーロッパの服装も想起させる。服地に施されたガムテープやセロハンテープのような装飾、プリーツやフリンジを不規則に重ね合わせたドレスワンピース、靴下には「2020」の文字。「東京のカワイイをハートや星柄にのせた」というラストの造形的なピース。――ショーの終盤に突如として流れた日本人ならお馴染みのメロディとフレーズ「とっても大好きドラえもん」は彼らがタイムマシンに乗り、国も時代も自由自在に行き来しているというスタイルの表明だったにちがいない(会場で笑いが起こったのはいうまでもない!)。

雨続きであった東京コレクションは、Kygo & Selena Gomezの「It Ain't Me(もう私じゃない)」の突き抜ける歌声で幕を閉じた。会場をあとにするゲストの表情はみな晴れやかだ。今まで見たことのないものに遭遇して固定観念が揺さぶられた時の、強いていうならば開放感と高揚感が、明るい余韻を残していた。