アダム・ドライバー出演のおすすめ映画ランキング

打ち消しようのない存在感と陰気な雰囲気で、独自の地位を確立したアダム・ドライバー。彼の全出演作をランク付けしながら、今をときめく俳優の名演を振り返る。

by Carrie Wittmer; translated by Nozomi Otaki
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06 January 2022, 3:07am

カイロ・レンを演じ、アカデミー賞に2度ノミネートされる前、アダム・ドライバーはニューヨークで夢を追う舞台俳優だった。そんな彼がポップカルチャーに頭角を現したきっかけは、ご存知のとおりミレニアル世代に大人気のHBOドラマ『GIRLS/ガールズ』(2012年)だ。主人公が別れたりよりを戻したりを繰り返す恋の相手で、かなり強烈だが憎めない性格のアダム・サックラーを演じた。この風変わりなキャラクターは、やや単調な本作の中でひときわ異彩を放っていた。数年間、スティーヴン・スピルバーグ監督『リンカーン』やコーエン兄弟の『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』、ノア・バームバック監督『フランシス・ハ』で小さな役を演じていたアダム。彼が2010年代初めに演じた役はいろんな意味で(申し訳ないが)取るに足らないが、彼が役にもたらすエネルギーによって重要性を増していた。

これらのキャリアを経て、アダムは見事『スター・ウォーズ』シリーズ続編3部作の第1作『フォースの覚醒』のメインの敵であるカイロ・レン役を射止める。率直で意外性に富んだ演技が好評を博し、それから10年も経たないうちに、彼はハリウッドの新旧の感性を混ぜ合わせることで、この世代を代表する、あるいは史上最高の俳優としての地位を確立した。彼の知名度の向上に貢献したのは『GIRLS/ガールズ』かもしれないが、魅力的な愚か者から、精神的に追い詰められた離婚者、エモーショナルな宇宙の王子、詩を綴るバス運転手まで、さまざまな役柄を演じる柔軟性を讃えられる映画スターかつ毎年アカデミー候補に挙がる俳優へと押し上げたのは、カイロ・レンだろう。180cmを優に超える長身と神のおかげで、彼はハリウッドのセックスシンボルのひとりとなった。彼の打ち消しようのない存在感と魅惑的で陰気な雰囲気には、ぴったりの肩書きだ。

アダムがマウリツィオ・グッチを演じた最新作『ハウス・オブ・グッチ』の公開を記念して、(どれも名作だが)ワースト作からベスト作まで彼の全出演作を振り返る。

26. J・エドガー(2011年)

FBI長官J・エドガー・フーヴァーの半生を追うこの伝記映画は、ドライバーの長編映画デビュー作で、アダムは捜査官に情報を提供するガソリンスタンドの店員を演じた。役自体は記憶に残らないかもしれないが、アダム・ドライバーはキャスケット、ボウタイ、ブラウンのピーコートという衣装に〈着られる〉ことなく、見事な着こなしを見せている。

25. リンカーン(2012年)

このスティーヴン・スピルバーグ監督のアカデミー賞受賞作のわずかな出演時間のあいだ、アダムはずっとダニエル・デイ・ルイス演じるアブラハム・リンカーンへの手紙を書いたり、「サー」「イエス、サー」と答えたりしている。アダムはいつもどおり、全力で役に臨んだ。ただ、このときはいかんせん尺が短すぎた。 

24. マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)(2017年)

このノア・バームバック監督作品(アダムにとって3本目のバームバック作品)で、アダムはひとつの短いシーンにしか出演していないが、鮮烈なインパクトを残している。アダムが演じるのは、ベン・スティラー演じるマシューのクライアントで、破産寸前のランディ。登場シーンは少ないが、「クソッタレが、マジかよ!」と叫ぶシーンは必見だ。

23. ヤング・アダルト・ニューヨーク(2015年)

このアダムにとって2本目のバームバック作品で、彼は映画監督のジョシュ(ベン・スティラー)に出会う監督志望の青年ジェイミーを演じた。ふたりは友人になり、中年の危機まっただ中のジョシュは、ジェイミーを通して自らの青春時代を振り返る。アダムの役柄は、カウボーイハットをかぶった何の変哲もない映画オタク。彼が2010年代初めに演じた、小さなハットをかぶったいかにもミレニアル世代のヒップスターらしい役のひとつだ。

22. ミッドナイト・スペシャル(2016年)

本作で、アダムは眼鏡をかけたオタクなNSA(米国家安全保障局)の調査員を演じている。演技はまずまずだ。注目すべきは、彼がかけている極小の眼鏡だ。アダム・ドライバーが演じているということ以外なんの変哲もない役だが、このような地味な役でも、やはり彼の演技には光るものがある。

21. あなたを見送る7日間(2014年)

ショーン・レヴィ監督がおくる、葬式にまつわる一風変わったこの作品で、ジェイソン・ベイトマン、ティナ・フェイ、ローズ・バーン、ティモシー・オリファント、コニー・ブリットン、ダックス・シェパード、コリー・ストール、キャスリン・ハーン、ジェーン・フォンダという2010年代初めを代表するそうそうたる共演者のなか、アダムは一家最年少のダメ男を演じている。言い換えれば、レザージャケットを羽織り、定職に就いていない自分を起業家だと思い込んでいるプレイボーイだ。この役を観たスタジオのお偉いさん方は、「ミレニアル世代に観てもらうために『GIRLS』のあいつを使おう!」と口を揃えたに違いない。

20. Bluebird(2013年)

ランス・エドマンズ監督による静かなインディドラマ作品。メーン州の林業の町で、スクールバスの運転手がある少年とバスの中に閉じ込められてしまい、その後コミュニティ全体を悲劇が襲う。アダムが演じたのは、少年の母親マリアの同僚ウォルターだ。小さな役だが、手は大きい。彼はエドマンズ監督の世界に完璧に溶け込み、自然体でありながら、その魅力を遺憾なく発揮している。

19. テリー・ギリアムのドン・キホーテ(2018年)

テリー・ギリアムが〈開発地獄〉に陥り数十年かけて完成させたこのめちゃくちゃな作品で、アダムは自らの過去を回想する21世紀のCM監督を演じた。彼はギリアムの型破りなスタイルにマッチする演技を披露し、本作の基礎を固めている。

18. デッド・ドント・ダイ(2019年)

このジム・ジャームッシュ監督のホラーコメディで、アダムはロナルド・ピーターソン巡査を演じた。本作での演技は、ghouls(悪霊)の発音など、独創的な台詞回しで英語という言語のイメージを一新する彼の能力を示す好例のひとつだ。わざとらしい演技ではなく、さりげない、ロボットのような台詞回しは実に見事だ。

17. 奇跡の2000マイル(2013年)

アダム・ドライバーは自らのスクリーンにおける存在の魅力に自覚指しているので、それを発揮するタイミングをしっかりと心得ている。ロビン・デヴィッドソンのオーストラリアの砂漠地帯での9ヶ月に及ぶ旅を描いた、このジョン・カラン監督『奇跡の2000マイル』もその一例だ。実在する『ナショナルジオグラフィック』のフォトグラファー、リック・スモランを演じた彼は、共演者のミア・ワシコウスカとの間に火花を散らしているが、やや抑えめの演技で、ワシコウスカこそが主役であることを明示している。

16. もしも君に恋したら。(2013年)

マイケル・ドース監督によるこのロマンチックコメディで、ダニエル・ラドクリフが医学部を中退した主役のウォレスを演じた。彼は知り合ったばかりの掴み所のないアーティスト、シャントリー(ゾーイ・カザン)に惹かれていくが、実は彼女には恋人がいた。アダムが演じるのは、ウォレスにもっと多くの女性と関係を持つように勧める同僚で友人のアランだ。女たらしのミレニアル世代のヒップスターという点では、アランはいかにも2010年代初めらしい役柄かもしれないが、ロマンチックコメディの文脈においては型破りなキャラクターだ。アランはある場面でこう叫ぶ。「セックスしてナチョスを食う。これこそ人生最高の瞬間だ!」アダムは、特にラドクリフとのケミストリーを通して、例のごとく役の魅力を最大限に引き出している。

15. ハングリー・ハーツ(2014年)

このサヴェリオ・コスタンツォ監督によるイタリアのサイコスリラーで、アダムは父親になったばかりのジュードを演じた。彼の妻はウェルネスカルチャーに傾倒するあまり、徐々に息子の健康を蝕んでいく。パンデミック下の反ワクチン派の台頭を予見していたかのようなストーリー以外、特筆すべきことはない作品だが、追い詰められ、混乱したジュードは、鬱積された怒りとほとばしる憤怒を巧みに演じるアダムの手腕の一端を覗かせていた。

14. インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌(2013年)

このコーエン兄弟による作品で、アダムは出番は少ないものの、非常にパワフルな役を演じている。アル・コーディは、カウボーイハットをかぶった1960年代前半のミュージシャン。アダムがイメージとして定着していた女好きのヒップスターという役柄から抜け出した重要な役だ。彼はオスカー・アイザック演じるルーウィン・デイヴィスの完璧な引き立て役で、このふたりのぎこちない会話は、見事なエネルギーを放っている。さらに、作中の彼が歌う「宇宙へ(outer …. space)」というフレーズがカルチャー全体に影響を与えたことも忘れてはならない。

13. パターソン(2016年)

アダムがニュージャージーで暮らす詩人/バス運転手のパターソンを演じた本作。このジム・ジャームッシュ監督作品は、ストーリー自体は大したことなく、アダムの物語を前に進め、面白くするカリスマに頼りきりだ(しかもそれが成功している)。犬の散歩をするアダム・ドライバーが観たいあなたには、ぴったりの1本だ。

12. ハウス・オブ・グッチ(2021年)

アダム・ドライバーは何でもできる。もちろんキャンプもだ。このリドリー・スコットのファッション・クライム作品で、アダムは弁護士志望で、のちにGucciのファッション帝国の後継者となるマウリツィオ・グッチを演じている。彼とレディ・ガガは刺激的な化学反応を見せ、セックスシーンもかなり官能的だ。さらに、これがアダムが久しぶりに(もしくは初めて)存分に楽しめた仕事だった。微かなイタリア語なまりは、彼が乗ると体格のせいで自転車が三輪車になってしまうのと同じくらいキュートだ。

11. 沈黙-サイレンス-(2016年)

このマーティン・スコセッシ監督による意欲作で、アダムは師の行方を追い、布教のために日本を訪れるポルトガル人宣教師フランシスコ・ガルペを演じた。本作はアダムにとって、おそらく最も体を張った仕事といえるだろう。彼は衰弱した役に現実味を持たせるために50ポンド(約23キロ)近く減量し、普段は見上げるような支配的な体格は、ひょろっとした目立たないものへと変化した。それが他に類を見ない、鬼気迫る演技につながっている。アダムと共演者のアンドリュー・ガーフィールドは、役作りのために7日間イエズス会での黙想会に参加した。

10. フランシス・ハ(2012年)

このノア・バームバック監督のアートハウス系作品で、アダムは小さなハットをかぶった20歳そこそこのニューヨーカー、レヴを演じた。フランシス(グレタ・ガーウィグ)を口説くのに失敗したあと、彼は彼女を新たなルームメイトとして迎え入れる。ここで強調したいのは、アダムはどういうわけか、2010年代初めはずっと小さなハットをかぶった役ばかり演じていたということだ。本作でのアダムの演技は、バームバック監督との長年にわたる協働のきっかけとなり、それが同監督の『マリッジ・ストーリー』でのアカデミー賞ノミネートへとつながった。他の俳優が演じていたら、このキャラクターは過去10年のカルチャーの混沌とした深淵へととっくに消え去っていただろうが、レヴとその尊い歌声は、いつまでも私たちの記憶に残り続けるだろう。

9. ザ・レポート(2019年)

2019年公開当時の興行成績はあまり振るわなかった本作。同時期に公開された『マリッジ・ストーリー』のアダムの演技ほうが、より大きな注目を集めた。前者は11月29日にAmazon Primeで公開され、後者はその1週間後の12月6日にNetflixで公開された。つまり、〈アダム・ドライバー・シーズン〉の始まりだ。アダムが演じた、9.11後のCIAの拷問を調査する上院職員ダニエル・J・ジョーンズは、繊細だが几帳面な人物だ。想像以上に重大で恐ろし真実を目の当たりにした男の徐々に増していく憤りを、アダムは見事に捉えている。1970年代の政治スリラー、特に『大統領の陰謀』のロバート・レッドフォードやダスティン・ホフマンの名演を彷彿とさせる見事な演技だ。

8. アネット(2021年)

本作でアダムが演じるのは、スタンドアップコメディアンで父親のヘンリー・マクヘンリー。彼の子どものパペットの赤ん坊は、(※ネタバレ注意)実は殺人鬼でもあった。彼がこの一風変わったロックオペラにかける情熱は、その演技にもよく表れている。マリオン・コティヤールとのベッドシーンでは口で奉仕しながら歌い、パペットを本物の赤ちゃんのように少しも怯えることなく抱きかかえ、バスローブ姿でスタンドアップコメディの舞台に立つ……。本作の彼は完全に常軌を逸している。

7. ローガン・ラッキー(2017年)

スティーブン・ソダーバーグ監督による皮肉な犯罪コメディで、アダムはイラク戦争に2度従軍し、左腕を失ったバーテンダー、クライド・ローガンを演じた。これは彼史上もっともコミカルな役で、最高の身体表現を披露した役でもある。名作ドラマにふさわしいシリアスさで、義手と重々しい南部訛りを巧みに使いこなしている。「今、俺にカリフラワーと言ったか?(Did you just say cauliflower to me?)」は今世紀で最高の台詞だ。いや、史上最高の台詞と言うべきかもしれない。

6. ブラック・クランズマン(2018年)

地元の白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)の実態を暴くために潜入捜査を行う黒人刑事を追ったスパイク・リー監督のダークコメディで、アダムが演じるのはフィリップ・”フリップ”・ジマーマン刑事。フリップはユダヤ系なので、彼がKKKメンバーを装うために発する言葉は、次第に彼自身の心も追い詰めていく。ドライバーは主役のジョン・デヴィッド・ワシントンに主導権を譲りながらも、この役柄に具体性と複雑さを加えている。

3-5. 『スター・ウォーズ』シリーズ続編3部作(2015-2019)、ただし主に『最後のジェダイ』(2017)

完成度にムラのあった『スター・ウォーズ』シリーズ続編3部作のメインキャラクター、カイロ・レンとしてのアダムの演技、特に『最後のジェダイ』での名演は、まさに絶賛に値する。彼の心揺さぶる、人間味にあふれた悪役の描写は、ともすればマンガ的で単調になっていたはずだ。彼の演技こそが本シリーズのハイライトであり、フランチャイズ映画における(唯一ではないにしろ)最高の演技のひとつといえるだろう。アダムはボディランゲージ、まなざし、途切れ途切れの台詞、真っ赤なライトセーバーの構え方を通して、カイロ・レンの内なる苦痛とつらい過去を見事に捉え、それが『スカイウォーカーの夜明け』を観る価値のある作品たらしめている。ジョガーパンツで死ぬシーンをここまで魅力的にできるのも彼だけだ。

2. 最後の決闘裁判(2021年)

本作の役は、アダムのこれまでの役者人生で最も恐ろしい役だ。14世紀の史実を下敷きにしたこのリドリー・スコット監督作は、3人の人物の視点から語られる。マット・デイモン演じる騎士のジャン・ド・カルージュ、アダム演じるジャック・ル・グリ、そしてジョディ・カマー演じるマルグリット・ド・カルージュだ。アダムは変化する3つの視点に巧みに順応し、セックスシンボルとしてのステータスを逆手に取りつつ、あらゆる場面でキャラクターに微調整を加えている。映画冒頭では、ジャック・ル・グリは高貴でみんなから慕われるフランスの騎士に見える。しかし終盤には、性的暴行などしていないと平然と否定して言い逃れようとする怪物と化す。アダムは一切の躊躇なく徹底した悪役になりきり、感じの良い恋人候補から完全なる悪夢へと変貌するその姿は、これが史実であるからこそ、数世紀経った今もゾッとする。

1. マリッジ・ストーリー(2019年)

本作で我らがアダムが演じるのは、ニューヨーク在住の劇作家で、離婚直前の父親、チャーリー・バーバー。彼はケーリー・グラントのような魅力的な温かさと、それとは相反するジャド・ハーシュのような張り詰めた厳格な外見で、本作でも異彩を放っている。不意に怒りを爆発させたかと思えば、その数秒後は膝をついて泣き出す。スティーヴン・ソンドハイムの「Being Alive」を歌うアイコニックなシーンすらも、本作における彼の最高の演技とは言えない。ノア・バームバック監督とタッグを組むのは4度目となった本作で、アダムはアカデミー主演男優賞を受賞するべきだった。私たちは今でも、このことを思い出すと苦々しい気持ちになる。

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