70年代のカーニバルのストリッパーの記録

ニューヨークとパリでの写真展開催を記念して、スーザン・マイゼラスが米国の田舎町のストリップシーンを追った50年前のロードトリップを振り返る。

by Dal Chodha
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16 May 2022, 11:00am

ストリッパーを描いた映画といえば、まず思い浮かぶのはノエミ・マローンがラスベガスの虚飾、卑劣な人間、つらい仕事に飲み込まれていくポール・ヴァーホーヴェン監督の1995年の問題作『ショーガール』だろう。本作は派手に飾り立てられたストリップのファンタジーに過ぎないが、では、実際の米国の田舎町はどうだったのだろうか。今年3月、ニューヨークのギャラリー​​Higher Pictures GenerationとパリのMagnum Photosで展示された、Magnum Photosのフォトグラファー、スーザン・マイゼラスによる写真集『Carnival Strippers』の未公開のカラー写真は、ヴァーホーヴェン監督のハードで強烈な作品とは対照的に、率直ながら優しさに満ちた視点から史実を提示している。

1972年の夏、ハーバード大を卒業したばかりの24歳のスーザンは、フレデリック・ワイズマンの1967年のドキュメンタリー『チチカット・フォーリーズ』(非人道的な矯正施設の患者を追う作品)のような没入感のあるサーカスやステートフェアの写真を撮るため、米国をめぐるロードトリップへと旅立つ。メイン州で〈男性限定〉のストリップショーを宣伝するふたつの巨大なテントに出会ったスーザンは、その後数年の夏をニューイングランド、ペンシルベニア、サウスカロライナの小さな町のカーニバルで過ごし、仮説ステージの上とその周辺の出来事を記録した。ストリッパーやそのマネージャー、家族を取材しながら、フェミニズム運動の黎明期に若い女性として生きるとはどういうことなのか、その問いにまつわるさまざまな考えをひとつにまとめ上げた。

「当時の私は、あらゆる女性に訊いてみたいウーマンリブにまつわる質問でいっぱいでした。この業界で働いている、自分も持っている特権を持つ女性たちと関わるなかで、自分は何者なんだろうと考えました。あまりにも強烈な疑問で、自分が今までの人生でずっと抱えてきたような気がするほどです」

A woman in a yellow top and blue check trousers lies on the grass with a cup in front of a yellow tent.
Susan Meiselas 'Shortie's Day Off', USA, 1973. From the "Carnival Strippers" series. © Susan Meiselas / Magnum Photos.

1976年に1冊の本として発刊された、口を開けてまじまじと眺める男性客の前でパフォーマンスをするストリッパーたちのモノクロ写真には、複雑な変化の時代における自立への葛藤が映し出されている。ギラついたマチズモをのぞけば、『ショーガール』のあらゆるシーンにも通ずる不安だ。どちらにも認識への渇望、つまり注目されたいという欲求が感じられる。

スーザンは、1970年代のニカラグアの暴動や、ラテンアメリカの人権を求める闘いの記録で知られている。〈Carnival Strippers〉は、帰属意識を描くシリーズだ。オリジナル版の写真集のモノクロの色調は、ストリッパーたちが置かれた状況の厳しさを曖昧にしながら、女性の身体の柔らかさを表現している。たったひとつのランプで照らされる窮屈なバックステージは、もっと映画的だ。白黒写真は、どういうわけかカラー写真よりも美しく、その状況に対して寛大に感じられる。

「白黒写真は、私たちがこの世界をどう見ているかを示す手段でした」とスーザンは説明する。「戦争はいつだって白黒で撮られてきましたよね。でも、血が白黒に見えることなんてありえますか? (戦争を)カラー写真で撮影したのは私が初めてではないのに、それにもかかわらず、当時は痛烈な批判を浴びました。白黒写真はロマンチックだといわれますが、私のニカラグアのカラー写真は戦争を美化していると批判されたんです」

A stripper in lingerie poses on a wooden box while men stare at her from the ground.
Susan Meiselas. 'Lena on the Bally Box', Essex Junction, Vermont, USA, 1973. From the "Carnival Strippers" series. © Susan Meiselas / Magnum Photos.

〈Carnival Strippers〉のカラー写真は、青いティンセルのカーテンの安っぽさをあらわにしながら、作品に新たな意味を加えた。急ごしらえで縫い合わされた布。若さあふれる身体。そこに写る女性たちは、その断固としたまなざしで私たちを釘付けにする。

当時のフェミニストはストリップショーを搾取的な場と考え、そこで働く女性たちを犠牲者とみなした。スーザンは、それよりも彼女たちが自らの世界の中でどのように認識されているかを記録することに興味を抱いた。テントに入る許可を得るため、彼女は「男性の露出行為の真似」をしてさまざまな会場の男性客に溶け込んだという。彼女はこれを一種の民族学的プロセスとして捉えている。

「彼女たちの動機を知りたかったんです。経済上の理由もありますが、それが全てではありません。彼女たちは女性であるとはどういうことか、自分の身体をそういうふうに利用するとはどういうことかを、別の角度から見せてくれました。私が内部で目にしたのは、自分という存在をさまざまに表現する女性たち。彼女たちの自分に対するイメージと、社会が彼女たちをどうみなしているかの間に齟齬を感じました。それを生み出しているのは男性だけでなく、女性の解放運動でもあったんです」

A man stands in the cut out of a wall with a naked woman painted on it.
Susan Meiselas. 'Entrance for the Star & Garter', Essex Junction, Vermont, USA, 1974. From the "Carnival Strippers" series. © Susan Meiselas / Magnum Photos.​

このたび、増補版の〈Carnival Strippers Revisited〉がSteidl社から出版された。本作には、スーザンがプロジェクトに取り組んだ当時に集めた入場券も収められている。「私はいつも作品、制作プロセス、関わった人びとを再訪したいと思っています」と彼女はいう。「このプロジェクトの唯一の後悔は、当時知り合ったひとがひとりも見つからなかったこと。女性たちは今ではみんな亡くなっていて、ちょっと不公平な感じがしますし、一緒に制作できればよかったと思います。でも、今回私が〈一緒〉にいるのはオーディエンスです。初めてこの写真に触れるひとも含めて。コンタクトシートを見返し、色を見直し、当時編集したトランスクリプトも改めて読み返しました。あの頃自分がいた世界を理解するために。色合いについてはどう言えばいいかまだわかりませんが、当時を振り返るのを楽しんでいます」

〈スーザン・マイゼラス:Carnival Strippers Revisited〉はパリのMagnum Photosで2022年2月17日から4月30日まで、〈スーザン・マイゼラス:Carnival Strippers Color, 1972-1975〉はニューヨークのHigher Picture Generationで2022年2月19日から4月16日まで開催。写真集『Carnival Strippers Revisited』はMagnum Photosの公式サイトでも購入できる。

A woman in fringe covered lingerie poses in front of a tent.
Susan Meiselas. 'Lena's first day', Essex Junction, Vermont, USA, 1973. From the "Carnival Strippers" series. © Susan Meiselas / Magnum Photos.​

Credits


All images © Susan Meiselas / Magnum Photos.

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