新型コロナウイルスの自宅待機中、中国の若者は何をしているのか?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策で、世界各国で多くの人々がコロ休(自宅待機)を余儀なくされている。そんな中でも、自宅待機を「退屈」で終わらせないのが中国の若いクリエイティブたちだ。自炊に目覚めたユースから、即席スタジオを作り上げた強者まで。彼らに話を聞いた。

by Amber Akilla
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17 March 2020, 10:36am

世界各国が新型コロナウイルスへの対応に追われるなか、中国は感染対策を始めてから数ヶ月になる。感染症の発生以降、中国の大都市は隔離措置を行ない、活動や集会を制限するとともに会社を閉鎖し、多くの企業が従業員に在宅勤務を要請している。

中国内で、病気ではないものの、国による、もしくは自主的な隔離措置によって、予定をキャンセルしたひとは数百万人にのぼる。特に大きな影響を受けたのは、フリーランスやプロジェクトベースで働くひとが多いクリエイティブ業界だ。普段以上にスケジュールに縛られない日々を送る彼らは、一体この期間をどのように過ごしているのだろう。

中国を拠点とするクリエイターたちに、今回の危機的状況にいかに対応しているのか、また時間の過ごしかたについて話を聞いた。

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ルーシー・クォック(Lucy Kwok) a.k.a. Warmchainss DJ/プロモーター 深圳

──自宅待機中はどうやって過ごしていますか?

まず最初は香港にいて、感染の疑いがあったから特に予定は入れてなかった。それから深圳に帰ってきて、家族にうつさないよう、ひとりでAirbnbに8日間泊まったんだけど、退屈すぎてテレビを見る気にもなれなくて。夜更かしして、朝もゆっくり起きて、初日に下の店で買ったインスタント麺ばかり食べてた。それから時々ひとりで飲んだり、アプリでカラオケをしたり。頭がおかしくならないように、読書して何かポジティブなことを考えようとしてた。
半月ひとりで過ごした後、最後にようやく家に帰れて、家族と一緒に料理をして、自分のPCも取り戻した。毎日9時か10時くらいに起きて、映画を観て、朝食をとって、曲を作り始める。午後は自転車で公園に行って、誰もいないときは日光浴をする。ドーパミンやビタミンDをたくさん生成することが大切。そのおかげで、メンタルヘルスがだいぶ改善した。

──今回のような予期せぬ事態を通して学んだことは?

休暇で香港に行く前は、ちょうど短期間の国内ツアーを終えたところだった。ほぼ毎週末違うクラブに行っていたから、心も身体もかなり高ぶってた。感染症の発生で憂うつになったけど、身体を休める機会があって良かった。今回のことを通して、私もみんなも今この瞬間を〈大切にする(珍惜)〉っていう言葉の意味を理解できたと思う。

──自宅待機が終わったら何をしたい?

なる早で新しい仕事を始める(笑)!

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ENKAKO フォトグラファー 上海

──新型コロナウイルスによって生活や仕事にどんな影響がありましたか?

上半期の仕事と旅行の予定がほぼ全部キャンセルになった。

──自宅待機中はどうやって過ごしていますか?

だいたい3日おきに同僚との電話会議がある。しばらく写真や映像撮影の予定はないけど、ブレインストーミングをして、この先の企画のアイデアを出し合ってる。料理の勉強も毎日してる。あとは週一で友達を家に呼んで、習った料理を食べてもらってる。

──今回のような予期せぬ事態を通して学んだことは?

やっとキッチンをちゃんと使えるようになってきた(笑)。何年もテイクアウトやデリバリーで済ませてきたから、これまでライフスタイルのなかで、自分のために真面目に料理に取り組もうと思ったことはなかった。自炊は思ったほど面倒でも不便でもなかったな。感染症が収束したあとも続けたい。

それから、時間を有効に使えば、ずっと学びたかったスキルを学ぶこともできる。そうすれば、感染が収まった後は新しい自分になって、より良い生活を送れるようになる。毎日家にいて退屈だ、って騒いでばかりじゃつまらない。自分自身や孤独とうまく付き合えるようになれば、もっと強くなれるはず。

──自宅待機が終わったら何をしたい?

仕事が楽しいから、早く忙しくなりたい! 今の僕にとって、エンターテインメントやパーティーはそれほど重要じゃない。お金が出ていくばかりで、全然入ってこないから。

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ニン(Ning) プロデューサー/モデル 上海

──新型コロナウイルスによって生活や仕事にどんな影響がありましたか?

両親には1月初めに会ったから、春節に会いにいく予定はなかった。この時期はほとんどのひとが帰省するから、平和で静かな上海を満喫するのを楽しみにしてた。でも、今の上海は静かすぎる。1月2月の仕事は全部キャンセルになったから、今のところは次のプロジェクトが全く決まってない状態。

──自宅待機中はどうやって過ごしていますか?

毎日同じ。朝起きて、朝食を食べて、顔をマッサージして、絵を描いて、料理と掃除、また絵を描いて、ときどきスーパーに行って、部屋で筋トレして、夕飯を食べて、身体のマッサージをしながらテレビをみて、就寝。

──今回のような予期せぬ事態を通して学んだことは?

外食をやめて、自炊で油や塩を控えめに、茹でたり蒸したりをメインにするようになったら、肌がきれいになった。心理学の本を読んで、自分らしさを奪っている欲望、恐怖、不安から自分を解放してる。それから片想いの相手の絵を完成させようとしてるけど、なかなか満足のいく出来にならない。自分のペニスの像もつくったんだ。自分のセクシュアリティや性癖と向き合うのは楽しかった。あとは『The Sims』で親友と片想いの相手のアバターをつくって、遊んだり一緒に暮らしたりしてる。『The Sims』の生活を充実させるためには、たくさんお金が必要なんだ。

──自宅待機が終わったら何をしたい?

外出許可が出たらメキシカンが食べたい。この問題が収束したら、最高のセックスをしたい。

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ヴィクトリア・ジン アートディレクター 深圳

──新型コロナウイルスによって生活や仕事にどんな影響がありましたか?

生活に莫大な影響があった。みんなが孤立し、警戒体制が続くなかで、いろんな物事をより広い視野で眺めるようになった。

──自宅待機中はどうやって過ごしていますか?

先週までは在宅勤務をしてた。今はオフィスに戻ったけど、1日10時間マスクをつけてる。言うまでもないけど、息が詰まりそう。家に帰ったら真っ先にシャワーを浴びて、すぐに着ていた服を全部洗ってから夕飯を食べる。2016年以来、あまり料理はしていない。食べ終わったら、絵を描いたりコラージュをつくりながら、ドラマ『愛の不時着』を観る。

──今回のような予期せぬ事態を通して学んだことは?

この数週間で、誰でも天才料理人に変身させてくれるYouTubeのパワーに気づいた。それから、世界中に不安が蔓延しているときにこそ、ユーモアを大切にするひとびとの勇気も。

でも、すごくガッカリしたこともある。世界は私が子供の頃からあまり変わってないんだ、ってことに気づいた。毎日目が覚めるたびに、今朝も路面電車のなかでどこかの子に「チン・チャン・チョン」とバカにされるかも、と不安がってたあの頃と何も変わってない(※ヴィクトリアはウィーン育ち)。そういう差別への恐怖を、20年後の今でも体験するとは思ってなかった。中国以外の国で差別にさらされているひとがいると思うと、すごく胸が痛む。

──自宅待機が終わったら何をしたい?

すぐに仕事に復帰する。この先も人生は続くから。

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クリステン・ウン(Kristen Ng) a.k.a. Kaishandao ミュージシャン/プロモーター/ブッキング担当 成都

──新型コロナウイルスによって生活や仕事にどんな影響がありましたか?

今のライブミュージックシーンは完全に行き詰まってる。春節以降、ライブ会場はずっと閉鎖されてるし、イベントも全国的に延期されたりキャンセルされたりしてる。いつ再開できるかもわからないから、いろんな企画が宙ぶらりんの状態。

──自宅待機中はどうやって過ごしていますか?

出かける場所も居場所もない状態で、普段のルーティンを続けるにはかなりの自制心が必要。ずっと室内にいるせいで体内時計が狂ってしまって、Ableton Live(※音楽ソフト)の設定をいじって朝5時まで起きていたりとか、思い切り夜更かしすることもあれば、真っ昼間に市場に野菜を買いにいったり。時空が歪んでるみたい。

──今回のような予期せぬ事態を通して学んだことは?

今はプロジェクトに集中するのと、何もせずダラダラするのを繰り返してる。最近はレコーディングハードウェアにDAW(※楽曲制作用のソフトウェア)を接続して使う方法を勉強していて、自分のライブセットに合ったワークフローをつくろうとしてる。料理の腕も上がった。今特にハマってるのは、このクッキングチャンネル。小説もたくさん読んでる。ちょうどシャロン・ラムの『Lonely Asian Woman』を読み終わって、カミュの『ペスト』を読み始めたところ。こっちの方が今の時流に合っているし、いろいろと考えさせられる。

──自宅待機が終わったら何をしたい?

火鍋を食べて、踊りにいく。

──他に伝えたいことはありますか?

武漢と、ウイルスと闘っている医療従事者のみなさんにエールを送りたい。

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シェユアン(Cheyuan) デザイナー/スタイリスト 上海

──新型コロナウイルスによって生活や仕事にどんな影響がありましたか?

自分のブランドのためにモデルとスケジューリングした撮影や、他のプロジェクトが延期かキャンセルになった。今年はそれ以外のプロジェクトもあるから、今はブランドの企画やデザインに重点的に取り組んでる。

──自宅待機中はどうやって過ごしていますか?

春夏コレクションのリリースを、秋冬コレクションの時期にずらさないといけないかもしれない。毎日オンラインで業者とやり取りをして、ローカルの準備期間を把握し、最終確認のタイミングの調整をしてる。シーズンに遅れを取らないようにするには、臨機応変に対応するのがいちばん大切。

──今回のような予期せぬ事態を通して学んだことは?

台北でブランド初のポップアップストアイベントを開催して、ブランドの流通ルートにおけるコネクションや販売について多くのことを学べた。それから、仕事と休みのバランスをとりながら健康にも気をつけてる。

──自宅待機が終わったら何をしたい?

写真やビデオを撮りたい。次の四半期に向けてデザインや工場出荷の遅れを取り戻して、新たなインスピレーション源を探したり、出張の計画も立てたい。

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シイ・シャン(Shiyi Xiang) 音楽プロデューサー 武漢/成都

──新型コロナウイルスによって生活や仕事にどんな影響がありましたか?

私が武漢を出たのは、街が封鎖される前日だった。両親のところで春節を過ごすために、成都に1週間だけ滞在する予定だった。両親の家は曲を作るのには向いてないから。武漢から来たから、最初の2週間は周りのひとにすごく警戒された。

──自宅待機中はどうやって過ごしていますか?

成都に戻ったばかりの頃は、毎日ずっとニュース記事を読んでいた。こんなにニュースを気にするのは久しぶりだった。それからダイニングテーブルで作曲したり、テレビシリーズを観るようになった。最近はいろんなプラットフォームでライブストリーミングをしてる。そのなかで気づいたのは、あまり感情的になったり、忙しくしすぎないことが大切だということ。家族と過ごす良い機会にもなってる。

──自宅待機が終わったら何をしたい?

すぐ武漢に戻って、友達に預かってもらってるネコを迎えにいく。その頃には私のことなんか忘れちゃってるだろうけど。

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シェンツィ・ティエン(Chengxi Tian) クリエイティブ・コンサルタント 上海

──新型コロナウイルスによって生活や仕事にどんな影響がありましたか?

うちの家族の場合は、コロナウイルスによって仲が深まった。丸々1週間、家族全員が祖父母の家に集まって食卓を囲んだ。家から出る口実になるから、誰も長時間のドライブに文句は言わなかった。でも、仕事は大きな打撃を受けた。私はフリーランスだから、安定した生活は保証されてない。2つのプロジェクトが保留になってしまってすごく残念。

──今回のような予期せぬ事態を通して学んだことは?

アジア圏と欧米で、メディアの報道内容が全く違うことにびっくりした。いろんな発信元から情報を集めて、自分の意見を持つ前に事実確認をするのはすごく大切。コロナウイルスの感染が広まっていく中国での生活を通して実感したのは、集産主義文化(コレクティビズスト・カルチャー)の力。上海では外出自粛は義務づけられていないけど、力を合わせてこの困難な時期をできるだけ早く乗り切るために、みんなが少しずつ犠牲を払ってる。個人的には、ゆとりを持ち、今に集中することの大切さに気づかされた。めまぐるしい都会で暮らしていると、自分のメンタルヘルスに向き合う時間をおろそかにしがちだから。

──自宅待機が終わったら何をしたい?

友達に会って、ハグをして、みんなにありがとうと伝えたい。

This article originally appeared on i-D UK.

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