英グライム新旧バトルが勃発 ストームジーとワイリーのビーフを考察してみた

グライムシーンにおける世代間の不和は根深い。2020年1月、グライムの始祖ワイリーと新世代を代表するストームジーが、最近では類を見ないほど激しいディス曲の応酬を繰り広げた。その原因は? どうディスってた? 時系列に解説する。

by Jenna Mahale
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27 February 2020, 12:30pm

グライムシーンにおける世代間の不和は根深い。2020年1月、グライムの始祖ワイリーと新世代を代表するストームジーが、最近では類を見ないほど激しいディス曲の応酬を繰り広げた。その原因は? どうディスってた? 時系列に解説する。

すべての始まりはエド・シーランだった……というのは100%事実ではないにしても、英国を代表するシンガーソングライターが象徴しているイメージが、この数年、英国の音楽シーンで盛り上がっているグライムのアイデンティティ危機と結びついていることは間違いない。それは2019年1月初旬、i-D UKの表紙も飾ったストームジー(Stormzy)と、グライムのゴッドファーザーとして知られるワイリー(Wiley)の、最近では類を見ないほど激しいディス曲の応酬へと発展した。

始まりはSNSだった。あるファンから、Jaykaeが2019年に発表したトラック「SHUSH」でのディスにいつ反撃するのか、と尋ねられたワイリーは、エド・シーランとコラボしているJaykaeは雑魚だと言及し、だから反撃する必要もない、と回答した。

Jaykaeもエド・シーランも挑発に乗らなかったが(そもそもワイリー自身、2011年にエド・シーランの1stミックステープにフィーチャーされているのだ)、ワイリーはストームジーをこのビーフに引きずり出すことにしたようだ。ふたりは2019年の夏にも、エド・シーランとグライムの関係性についてやり合っている。

ワイリーが、「2分間イケてるふりをする」ためだけにグライムを利用するポップアーティストにはうんざりだ、とコメントすると、ストームジーはこう異議を唱え、エドがグライムに本気で取り組んできたことを主張した。「違うよワイリー、エドは初期からやってるだろ、彼は昔からずっとガチだ。それは間違いない」

ワイリーのようなグライム純粋主義者にとっては、メインストリームのポップアーティストとのコラボは、グライムへの背信行為と見なされる。いっぽう、グライムシーンにおいて絶大な発信力を誇るストームジーは、このジャンルのオーディエンスを拡大し続けてきたが、その結果、ワイリーのようなオールドスクールのラッパーたちが生み出したサウンドを変化させてしまった。だからこそ、この問題は複雑なのだ。

2020年1月の話に戻ろう。Twitterから始まったビーフは、ワイリーがストームジーにママのアレをナメてな、と言ったり、ストームジーがワイリーを「恐竜」「クラック中毒」と称したりする事態に発展、それからディス曲の応酬が始まった。

しかし、ディスとはいえど、そこに敬意は感じられた。ワイリーはストームジーの元恋人、マヤ・ジャマについて一瞬言及したが、「俺はマヤについて何かをいうつもりはない 彼女はクールだ/だからそこは触れないでおこうぜ」と述べるに留まった。

1月5日、ワイリーは「Eediyat Skengman」というトラックを発表。ストームジーを「グライムのことを本気で考えちゃいない」と糾弾し、エド・シーランのようにグライムを「利用し」、「水で薄めて」しまった、と主張した。

その翌日、ストームジーは「Disppointed」というキレキレの曲を発表。この楽曲で、彼はアーティストとしての自らの成功を誇示し、ワイリーの唇を裂くぞ、と威嚇。MVではお茶が入ったマグカップとジョイントを振り回しながら牽制している(まさに彼の二面性が表れている)。その後、ワイリーは「Eediyat Skengman 2」でストームジーのMVに対抗。そして、状況は悪化した。

「もしクロイドンのマーケットでお前の母ちゃんを見かけたら/そのカツラはぎ取ってやるよ」とエネルギッシュな高速ビートに乗せてワイリーはまくしたてた。ここで間違いなく一線を超えた。

それに対しストームジーは、「Still Disappinted」(大名曲)で応酬。残念なことに、この曲ではワイリーの姉妹を「小さなビッチ」、母を「アバズレ」、そしてワイリーだけじゃなく彼の家族の男性全員をこき下ろしている。

ワイリーが母親を海外へ連れて行ったのはロンドンでは母親を危険から守れないからだ、とストームジーは批判し、「キプロスに行ってママを自由にしてやれよ」と提案する。まさに銃弾が放たれたような威力だった。

そしてワイリーの義理の兄弟でラッパーのカデル(Cadell)もこのビーフに加わった。彼自身は「Disappointed」で軽く言及されただけだが、彼は以前からストームジーと確執があり、これ以前にも何曲か、ストームジーを直接的に攻撃したディス曲を発表している。ストームジーのブレイクのきっかけとなった「Shut Up」はカデルに宛てられた曲だった、という噂もある。

ストームジーとワイリー、ふたりのあいだのわだかまりが根深いことは明らかで、激しい虚勢とビーフの根底にある世代間の対立は否定しようもない。グライムはメインストリームを席巻して急速な変化を続けており、グライムの始祖たちがそれに不満を抱いている気持ちもわかる。

しかし、これらすべてが、みんなが首を長くして待っているワイリーの新アルバムの宣伝のため、そしてカデルのラッパーとしてのキャリアの第一歩の御膳立てだった、という可能性もなきにしもあらず……かもしれない。

This article originally appeared on i-D UK.

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