孤高のラッパー、5lackが見つめる次なるランドスケープ。 interview〈後編〉

先日配信と数量限定のCDによってリリースされた新作『この景色も越へて』や自身初のドネーションソング『きみのみらいのための』を発表したラッパーの5lack。2013年に福岡へ拠点を移して以降、より一層俯瞰した視点で音楽制作の活動に没頭し、自身の表現に対してストイックなまでに追求していく彼がここ数年明かすことのなかった自身のクリエイションについて語る。

by Yuho Nomura; photos by Katsuhide Morimoto​
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01 June 2020, 9:48am

現在世界的な危機となっているコロナパニックの状況下において、欠かすことのできないコミュニケーションツールとなった『Zoom』を駆使し、終始リラックスしたムードで遠隔インタビューを敢行。「日々の積み重ねでしかない」と語る5lackが今想うこととは。

後編では、近作で垣間見える心境や環境の変化、そしてこれまであまり明かされることのなかった音楽シーンに対しての考えに至るまでを赤裸々に語ってもらった。

常に欺いていたい。その一方で驚かせたいっていう想いもある。

—— 改めて本作を通して、20年近い自身のキャリアを振り返ってみて、どう?

そうだね。ラップを始めてからは20年くらいになるのかな。これまでの作品を振り返ってみると、ひとつの目標として自分なりの表現でやれることはやりきったと思える部分もあるんだよね。となると次は少し趣向を変えてみようかなと思えた。人によってはそこから海外に目を向ける人もいるかもしれないけど、俺の場合はもう一度初心に立ち返ってみようと思ったんだよね。意外とそういう機会ってあまり作れないからさ。それが前作の「KESHIKI」くらいからのタイミングで意識的に変えていた部分。

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—— それは5lackなりのネクストフェーズに突入した感覚なのかな。

ある意味そうかもね。ラッパーとしてとか、HIPHOPとしてっていう固定概念を一度外したうえで、5lackとしての純粋な作品を作ってみたかった感じかな。

—— 個人的にはいつも5lackには良い意味で裏切られる感覚があるんだよね。「次はそう来たか」みたいな。

それは思惑通りかも(笑)。俺は常に欺いていたいんだよね。みんなどこかで俺の行動や意図を読み取ったと思っているかもしれないけど、そう易々と捉えられてたまるかって。その一方で驚かせたいっていう想いもある。例えば、レストランで自分が求めていた物と違う料理が運ばれてきて、一度は動揺するんだけど、実際に食べたらめちゃくちゃ美味しくて感動しちゃうみたいな。そういう驚きを与えたいんだよね。提供する側の方がなにが相応しいか知っているというかさ。

—— 今回の作品でもそう感じている人は多かったかもしれないね。

ただ誰もやっていないことをやりたいって想いは常にあるけど、流行りを取り入れたいって思考は一切ない。

—— それでもシンパシーを感じるようなアーティストはいたりするわけだよね?

もちろん。シンパシーというかやっぱりカッコ良い音楽を作ってる人は常に探してるし、そういう人は無条件に応援したくなるんだよ。kZmとかもそうだけど、今の世代は匠な人が多いよね。世の中から良いものを減らす理由はないね。

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—— そうだね。

それと音楽シーンに対する自分の哲学というか、考え方を繋いでいけたらいいなとは思っているかな。強制とかじゃなく自然とね。それこそシンパシーを感じるようなセンスの良いアーティストに。俺らの世代って今ほど表現に対しての理解力だったり、知識のある存在が少なかったからさ、繋ぐというより壁として立ちはだかってたからね(笑)。だからこれからの世代には、もっと沢山の選択肢があることを提供してあげられたらいいなって。

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—— なるほど。ちなみに少し話は脱線するんだけど、5lackにとってセンスが良い人ってどんな人?

センスが良い人ね、なんだろう? 難しいね。

—— 難しいよね(笑)。

でも言いたいな。なんていうか本当は全部知っていて、広い視野を持っていながら、あえて誰も気がつかない道を見つけられる人はセンスあるなって感じるね。知的で感度も高い人っていうのかな。そうした人には俺自身もすごく惹かれるんだけど、なかなか一般的には評価されないことが多いじゃん。でも表現者同士の中ではかなり支持されていたりするんだよね。俺の周りにもそういった人は多いよ。

みんなが一曲楽しむことで、誰かが少し楽になるってめっちゃポジティブじゃん。

—— それから5lackの創作的な思考についても少し知りたいんだけど、その前に福岡に拠点を移してもう7年になるわけだけど、そっちでの暮らしはどうなの?

楽しんでるよ。これは福岡に来てからずっと感じているんだけど、別に東京じゃなくても友達に会おうと思えば2時間くらいで東京には行けるし、仕事も普通にできるし、以前は頻繁に地元にも帰ってたからそうした面に関してはあまり変わってないかな。逆にせっかくみんなと会うなら楽しく過ごしたいって思えるようになったり、ポジティブに感じることも増えたね。むしろ福岡に居るって感覚を忘れてしまうくらい、東京とは別に距離を感じない。「そういえば、俺いま福岡にいるんだな」くらいな感じ。

—— 5lackにとって居場所は関係ないんだね。とはいえ福岡での住み心地は頗る良さそうだよね。

まず間違いなく生活する上では、福岡は最高な環境だよね。海が近くて、デカいスーパーは沢山あるし、東京に比べたら空も広いし、景色もいいから車で走っててもとにかく気持ちが良いし、スケートできるスポットもあるしね。去年Sick TeamでLAに行ったんだけど、その時に色々なインスピレーションを受けてさ、なんか親近感も湧いたし、車社会で町外れに住んだとしても不便じゃないんだなって感じる瞬間が沢山あって。その時に思ったんだよね。「これだ、こういうライフスタイルにしていこう」って。考えたら福岡もどこか西海岸っぽい空気があるんだよね。そうした思考になっているのも、もしかしたら30代っていう年齢が関係してるのかもしれないけど。

—— やっぱり年齢を重ねていくことで変化してきたことってあるよね。

うん。生活における価値観とかは大きいかもね。遊びとかもさ、20代のときには楽しかった日常が、30代になった途端に急に落ち着いたというか、飽きてきたんだろうね。今思えば不毛に感じていた部分も少なからずあって。それで、もう少し自分の日常をしっかりと見つめ直してみようかなと思って、節約する生活をしてみたり、料理を始めてみたり。ブッとんだことを続けるんじゃなくて、日常の中にある普通な事にチャレンジしていくことの方が俺にとっては刺激があって、充実した生活に欠かせないんだと実感したね。

—— Instagramのストーリーでもたまに料理の動画とか挙げてるもんね。

あれは勘料理って呼んでて。レシピとか見ずに勘だけで料理してみるって言う遊びみたいなやつ。料理は毎日してるよ。

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—— 今は世の中の流れも大きく変わってきて、アーティストにとってはこの自由な時間をどう過ごすかって大切だよね。

そうだね。最近はそういった意味で制限がある生活だし、音楽と向き合う時間がめちゃくちゃ増えたんだよね。それこそ曲作りのペースも更に上がったし、新しいことにチャレンジしたり、知らなかった分野について研究してみたり。だからもちろん今は大変な時期なんだけど、発想の転換も大事で、ネガティブな出来事も考え方によってはプラスに働くこともあるなって解釈してるよ。

—— 「この景色も越へて」のリリース後に矢つぎ早に発表された「きみのみらいのための」というドネーションソングもそうしたことがきっかけだったのかな?

俺も人間だから、時々は承認欲求に駆られる様な時があるんだけど、そんな小さな悩みよりもっと最悪な環境にある弱者の存在を忘れていたなと、あることに取り組んでいるときに感じたんだよね。これは金銭的な話でもあるんだけど、たった一曲の音楽で計り知れない影響力と資金を生み出せて、沢山の人を救える力を持っているって凄いことだなって感じたんだよ。それだけの労力で自分も何かを変えられるなら、思いついたこの瞬間に作らなきゃって思ったんだよね。今思い返してみると、両親の仕事の影響でそうした教育を受けていたのも関係しているかもしれない。事あるごとに『世界中には大変な環境の人たちもいるんだぞ』って。だから今回は偶然にも時期が重なったからコロナに関連したドネーションだと思われてたりするけど、それは偶然なんだよね。みんなが一曲楽しむことで、誰かが少し楽になるってめっちゃポジティブじゃん。

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—— そこも図らずして偶然タイミングが重なったんだね。そうしたら最後になるけど、5lackの今後の展望についても聞けるかな?

展望とかは正直あんまり考えてないけど、いつまでも自分にとってカッコ良い存在でいたいかな、だけどそれは前線に立つこととは別で、音楽においてプレイヤーの在り方って色々だし、俺自身は目立ちたいとかはあまり思わないからさ。そのうち表舞台を降りて、プロデュースやサポートする側に撤する時期っていうのがくるだろうし。そこに新しい創造欲だったり、喜びもあるはずだから。今はある意味そこに向かうトレーニングって考え方もあるよね。

Instagram:@5lack6
Official: https://5lack.com/ / http://takadaya588.shop-pro.jp/


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5lack「きみのみらいのための」
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5lack「この景色も越へて」

Photography Katsuhide Morimoto
Interview and text Yuho Nomura

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