普遍的な〈少女時代〉を捉えるディアナ・テンプルトンのポートレート

少女たちのポートレートと自身の日記からの抜粋を通して成長の喜びと痛みを表現する最新作『What She Said』について、写真家のディアナ・テンプルトンにインタビュー。

by Oliver Lunn; translated by Nozomi Otaki
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01 February 2021, 10:15am

ディアナ・テンプルトンは、最近思春期をよく振り返るという。彼女の最新作『What She Said』には、カリフォルニアに暮らす少女たちのドリーミーなポートレートと、少女時代のディアナによる手書きの日記が収められている。そこには「私の顔はほんとに醜い。傷とニキビだらけ」「疲れ果てていて、だるくて、憂うつ。まだたったの15歳なのに、私はどうしちゃったの? なんでこんなに憂うつなの?」など、十代の彼女が抱える悩みが綴られている。

 当時のディアナはカリフォルニア、ハンティントンビーチの寝室でスーパーモデルの切り抜きを眺めては、「どうして私は彼女たちみたいじゃないの?」と自問を繰り返していた。自分の容姿を嫌うあまり、自傷行為にまで及んだという。その後音楽に慰めを見出した彼女は、BLACK FLAGやBAD BRAINSなどのライブに通い詰めるようになる。

two girls in metal t-shirts by deanna templeton

そんなディアナの最新作は自身の少女時代を振り返るだけでなく、現代を生きる少女たちのポートレートを通して、彼女たちの内面に深く切り込む一作。ボディイメージへの不安からパンクライブの熱狂まで、あらゆる若者に共通する痛みと喜びを映し出す。もちろん、彼女の少女時代にはInstagramも携帯電話もなかったが、ディアナと彼女の被写体には、明らかな共通点がある。「私が撮影した少女たちには、似ているところがたくさんあります」と彼女はいう。一見すると、バンドTシャツやタトゥーなど、彼女たちに共通するのはパンクへの愛のように思える。しかし、その根底には自己嫌悪があった。ディアナが2006年に撮影したある少女は、胴に〈UGLY(醜い)〉という言葉を殴り書きしていた。「彼女は確か『自分が嫌いだ』と言っていました。この子のことはすごく印象に残っています。彼女のお腹に書かれていた言葉は、私の日記の内容と全く同じだったので」

a woman in a t-shirt with a rainbow on it that says death metal by deanna templeton

ディアナは街なかで少女たちとの出会いを通して、自らの記憶や想いを振り返っていった。彼女たちのなかに16歳の自分を見出すようになったという。「自分をどう見ているか、どうなりたいか、ということが当時の私と全く同じだったんです」しかし、そこには明確な境界線がある。「日記からの抜粋文は、彼女たちではなく、私の言葉だということははっきりさせておきたい」と彼女は強調する。「自分を彼女たちに投影したいわけではないんです。ただ、これらの写真を通して、当時の視覚的なイメージは伝えられた気がします。現代の写真ですが、少なくとも私の目には1980年代が浮かんでくるんです」

本作に自分自身の日記を収めるのは、思い切った決断だった。それはディアナ自身の脆さをむき出しにするだけでなく、被写体と同じ土俵に立つことを意味している。彼女は少女たちに心から共感し、彼女たちの想いを理解している。そこに不純な動機はない。搾取的なアーティストの作品とは一線を画しているのだ。

a woman with tattoos and ear stretchers by deanna templeton

もちろんフォトグラファーとしては、街なかの若い女性たちに焦点を当てることにワクワクしたという。80年代のバンドTシャツをきっかけに声をかけた少女や、スケートイベントで出会った、彼女の夫でプロスケーターのエドを知っているかもしれない少女たちだ。「夢中になるあまり、駆け寄ってポートレートを撮らせてほしいと頼んで驚かせてしまったこともありました」と彼女は回想する。「髪とか服とかメイクとか『いいな』と思ったものを挙げて、あなたのルックが大好き、とものすごい早口で訴えたんです」

 ディアナにとって、最初に敬意を示すことは不可欠だ。「モデルになってもらうために声をかけたとき、相手が躊躇していることに気づいたら引き下がるようにしています。はっきりノーと言いづらいんだな、ということがわかるので」と彼女は説明する。「私も若い頃は自分の意見をはっきり伝えたり、自分が嫌なことを断るのが苦手だったから」

a woman wearing a cannibal corpse t-shirt by deanna templeton

ディアナはかつてのプロジェクトを進めるなかで、ある印象的な出会いがあったという。それはまだノーと言うことの力を知らない少女たちだった。

「サーフィンの大会である女性グループに『撮ってもいい?』と声をかけたんです。すごくかわいい4人組で、みんな嬉しそうに『もちろんいいですよ!』って快諾してくれて。それからこう言ったんです。『だってあなたは訊いてくれたから。1日中私たちのお尻を撮ろうとしてくるひともいるから』と」

「それを聞いて、ああ、この子たちは私にノーと言ってもいいんだということに気づいていないんだ、と思ったんです。自分たちの声の力がまだわかっていないんだ、と」「こういう体験を通して、より人に共感できるようになったと思います。どんな風に人びとのポートレートを撮るかということに意識的になり、特にまだ自分の意見を確立できていない相手には気を配るようになりました」

ディアナの作品が彼女自身の葛藤、自我の欠如、〈これが私〉という率直さを包み隠さずさらけ出しているのは驚くべきことだ。私たちの多くのは十代に書き綴ったメロドラマ調の言葉を見るだけで恥ずかしさで身がすくむだろうが、それを出版するなんて、とてつもなく勇気が要る。つらい記憶を掘り返し、自分の不安定さを振り返るのは、どのような体験だったのだろう。「もちろん大変なこともありました」と彼女は答える。「あの頃に比べれば、今はだいぶマシになりました」ここで彼女は一瞬言葉を詰まらせた。「当時の自分がいかに悲しんでいたかを振り返ると、とにかく悲しくなりました。そういう状態から抜け出してかなりの年月が過ぎたので、改めてそれを頭の中で回想するまで……いかに私が自分自身につらく当たっていたかを忘れていたんです。せめてひと息つかせてあげればよかったのに」

a child's wrist wearing a bracelet that says bitch by deanna templeton

十代のディアナは、自分自身の言葉をさらけ出す本作を見てどう感じるだろう。やはり恥ずかしがるだろうか。「それはそうでしょうね!」と彼女は断言する。「ものすごく不安になったはずです。当時の私は自分が思っていることを両親にも話せなくて。だから腕を切ってしまった。それが私のSOSだったんです」彼女は当時をこう回想する。「音楽が私の代弁者でした。私の中には自分の気持ちをはっきり表現する言葉がなかった。それを書き留めることはできても、自分の口で伝えることはできなかったんです」

十代の自分に伝えたいことを尋ねると、彼女はまずハグをしたい、と答えた。「当時の自分にほんの少しでも自信を与えてあげられるとしたら、こんな本を出すよ、と伝えたい。これをみんなに共有するけど、あなたはきっと大丈夫、って。それこそが彼女に必要なものだったはずだから」

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@deannatempleton

two women, one wearing a black sabbath t-shirt by deanna templeton
a diary entry by deanna templeton
a woman with a safety pin in her nose by deanna templeton

Credits


All images courtesy MACK

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