Photography by Ben Simpson

ボディポジティブ:SNSがもたらす不安へのひとつの回答

一切のデジタル加工を排した、生身の人間の姿にフォーカスする写真家、ベン・シンプソンにインタビュー。ひとそれぞれの個性や、現代における〈美しさ〉の定義について再考した彼が提示する〈ボディポジティブ〉な写真シリーズについて本人が語る。

by John Buckley; translated by Ai Nakayama
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27 May 2019, 6:00am

Photography by Ben Simpson

Snapchatのフィルターをかけた顔に近づくために整形手術がなされる現代。現実世界よりもネット世界を重視する傾向は、いよいよ懸念されはじめている。オーストラリア人写真家のベン・シンプソンは、デジタルで仕上げた〈完璧〉から離れた、生身の人間の姿にまつわる健全な対話に、新しい視点をもたらすべく活動している。

業界屈指のクリエイターたちと仕事を重ね、10年間、輝かしいキャリアを積み上げてきたベンは、今こそ理想主義的な美の規範から脱却すべきときだ、と考えた。2016年から2年間、彼はひとつの写真シリーズを通して、ひとそれぞれの個性やボディポジティブな意識、現代における〈美しさ〉の定義について再考した。「シンプルに、自分らしくあること」が美しさだ、とベンは説く。本シリーズに込められた想いについて、そして急速に変化していく業界での経験が、変化する美の規範を切り取る彼のシリーズのインスピレーション源になった経緯について、本人が明かす。

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——本シリーズのテーマを教えてください。

多くのひとがSNSがもたらす不安に苦しんでいます。昔は社会生活が不安の主な原因だったと思うんですが、今はSNS。家でもSNSと共に生活していますからね。私がこのシリーズを撮り始めたきっかけは、ひとの美しさをつくるのは、個性と、ありのままの姿だということを示すため。SNS上で求められる姿を目指すのではなく、自分が自分でいることをみんながよろこべるようになるための一助になりたかったんです。

——これまでの経験、特にファッション業界での経験がこのシリーズ、そしてあなたの考える〈美〉の定義に与えた影響は?

私は世界を変えようとしているわけじゃない。みんなに気分よく生きてもらいたいんです。写真家としての活動歴は10年になりますが、とにかくポジティブなことをしたいと思ってここまでやってきました。商品のセールスを伸ばしたり、意見を主張するために何かを強く打ち出す、それが写真家の仕事だと思っています。だからこそ、私は自分が本当に大切だと思うこと、本当に好きなことを打ち出したいと思ったんです。

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——シリーズの被写体について教えてください。どうやって出会ったんですか?

街で出会ったひともいれば、クリエイティブやカルチャーの面、人間関係の上でも刺激を与えてくれる友人もいます。たとえばナオミ・シマダ。クールだし、チャーミングだし、自分のあらゆる行動にも信念にもしっかり自信をもっている。それこそが〈美しい〉ということだと思います。

——ヌードという形式は、被写体との関係に何をもたらしてくれますか?

今回、こういうかたちで撮影したのは、ファッションとの結びつきを排したかったからです。タイムレスかつ、服装などスタイルを超えたものにしたかった。スタイルやトレンドに興味がないひとにも届いてほしかったんです。ヌードはよりパーソナルで、より生々しい。性の対象としてのヌードではありません。撮影日、撮影した瞬間の被写体の姿を捉えた単なる記録です。とにかく被写体がすべて。シリーズを通してのテーマも、あとから発展しました。

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——シリーズではタイプCプリントの写真とコラージュを使用していますが、この表現方法はあなたの伝えたいメッセージにどう寄与してくれますか?

私は今、数々の表現媒体でいろいろ実験しています。このシリーズに取り組みながら、新しいものや手段を常に探しているんです。最近ではタイプCプリントとか。あとはフィルムで撮ったり、別のカメラを使ったりしています。シリーズのこれまでの写真は、全部別々の機材で撮影しています。フィルムを選んだのは、気が散ることなく被写体と向き合えるからというのもありますし、技術的な理由もいくつかあります。それぞれの写真は媒体が何であろうと、被写体の姿を色濃く反映しています。最近は手焼き写真も始めたので、これからのシリーズは、様々な質感のイメージが集積したものになるでしょう。

——ボディポジティブな美の規範を推進していくにあたり、クリエイティブ業界における表象には何が求められていると思いますか?

現在、風潮はゆっくりと変化しつつあり、これからの世代に希望を与えています。主要なメディアの論調をみても、何かひとつのタイプの女の子像、人間像は薄れていっていると感じます。

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——本シリーズを展覧会として発表する予定は?

もちろんあります。でもまだ未完成だと思っているんです。多様な被写体を見つけることにおいても、多様な表現媒体や印刷プロセスを見つけることにおいてもそう。いちど、シドニーで個展を開く寸前まで話が進んだんですが、このプロジェクトはまだまだ成長する余地があると思った。だから計画を取りやめて、撮影を続けることにしました。

@bensimpson

This article originally appeared on i-D AU.