三浦透子インタビュー:役という答えを導き出す面白さ

自分で選択する前から、役者として生きていた。シンプルに芝居を楽しむことだけを考え続ける、女優・三浦透子という個性。

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20 April 2018, 5:37am

なんてことないような、ちょっとした表情や動きに妙なリアリティがある。女子高生の役をやっても、幽霊の役をやっても、自閉症の役をやっても、絶妙にストンと役に落ちる。『パビリオン山椒魚』や『ローリング』で知られる冨永昌敬監督が手がけた最新作『素敵なダイナマイトスキャンダル』では、伝説の編集者・末井昭の愛人で、つかみ所のない危うさを孕んだ笛子という役を、魅力的なイタい女として好演している。2代目なっちゃんとして、3000人のオーディションを勝ち抜き、サントリー「なっちゃん」のCMに出演していた5歳の少女は、21歳になった。彼女の女優人生が、物心つく前から始まっているということは、三浦透子のスタンスを語る上で外せない部分だ。

「ありがたい話なんですけど、役者さんを目指した期間がないんですよ。既にやっているところからのスタート。だから、辞めるか続けるかという二択で、なるならないという選択は私の中にはなかったんです。初めのハードルがなかったことをコンプレックスに感じることもけっこうある。でも、いまとても幸せな環境でお芝居ができているから、それは素直に喜んでいいし、そこに意味があるかなと思って続けています」

「なっちゃん」のオーディションで、歌ってくださいと言われても「嫌です」と答えるような子どもだった。「大人がイライラするような感じの、生意気な子」と、彼女は幼少期について振り返る。出身の北海道・札幌に暮らしながら子役として生活していた頃は、やはり目立ってしまう存在だった。芝居は楽しくても、将来のビジョンがあったわけではなく、その先に何かを見ていたわけではなかった。15歳のとき、今の所属事務所との出会いをきっかけに変化が訪れる。

「お芝居が楽しいからやっているという感じなんです、ずっと。だから脚本が面白いとか、もっとシンプルにお芝居することだけを考えていられる環境もあるのかなと思って。それで、ユマニテという事務所を見つけて、所属しているみなさんが魅力の種類が違うというか、私の顔が並んでいてもおかしくないかなと(笑)」

そう冷静に分析しながら、自身をあまのじゃくな性格だと語る。「役者をやっているから勉強をしたかった。単純に馬鹿だと思われたくないというのもありましたが(笑)。今の学部を選んだのも、お芝居とまったく関係ないことがしたいという邪念があったと思う」と笑う。しかし、意外にも専攻している数学には演技に通ずるところがあるらしい。彼女は答えを導き出すように、役を読み解いていく。

「数学はひとつの答えに対して、複数の解き方があって、その中から状況に応じてほしいものを選ぶ。使う言葉も厳密でないといけない。脚本を解釈するときの頭の使い方にけっこう近いと思います。だから、演技のときもまずは自分で考えたいんですよね。考える時間が好きなんです。それを人に見せたいわけでもないし、最終的に使える使えないはあまり関係なくて。答えのない部分について考えていると、ただ監督の指示に合わせて行動するよりも、自分の身体への浸透具合が違う気がするんですよ。その指示の裏側にはどんな理由があるのか、この役のことをこう思っているからそうしてほしいという何かが、突き詰めるとあるんじゃないかと。絵としてほしいだけで理由がないという場合も、必ずその奥があると思うんです。その奥を見たいというか(笑)。その読みが外れたら外れたで、それも楽しいと思えるし」

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まわりより少し早く社会に出ることになったことが、その考え方や探究心を育んだのだろう。幼い頃から、学校、現場と環境に合わせて、その場その場の正解を求めトライ&エラーを繰り返し、性格や発言を変えざるを得なかったところもあると当時を振り返る。それが今、演技の筋力になっているかもしれないとも。透明な歌声から歌手活動も行う彼女が2017年にリリースしたカバー・アルバムは『かくしてわたしは、透明からはじめることにした』と題されている。「何だかんだで、ここに来ました」という気持ちを体現したものだという。さまざまな作品や人との出会いの積み重ねから、自分だけの行動や努力では説明のつかない力が働いたとしか思えないように、今の場所へと辿り着いた。10年後、20年後に何をしているかは自分でもまだわからない。でも、「未来を楽しみにしている」ことだけは自信を持って言える。

「お芝居を好きでい続けるために、辞めたいと思ったときに辞められるようにしていたほうがいいと思ってるんです。仕事をしている時間が長い分、続けることより辞めることの方が私にとってはきっとこわい。辞められないから無理して続けるんじゃなくて、やりたいから続けている状態でいられるように、この仕事を辞めるというハードルをなるべく低くしておきたい。だから、たとえば、数学の研究が面白くなったらそれを極めてもいいかもしれないし、結婚や子どもを育てるのもやりたいと思ったらやった方がいい。もし真っさらな状態で普通の子ども時代を送っていたとしたら、何になりたかったのかなっていうのはずっと考えてます。一度答えを知ってしまうと、答えを知らないときには戻れないじゃないですか。目の前に置かれたお芝居を面白いと思って生きてきたけれど、先入観があったうえでそう思ってるんじゃないかと自分を疑う気持ちがずっとありますね。まだ出会ってない、もっと面白いと思えるものがどこかに存在するかもしれないって」

好きを純粋に追いかけることは難しい。手を伸ばす前に与えられた環境にいるという彼女のコンプレックスが、常に新鮮な空気を循環させるポンプとなっているのだろう。「私は結局、目の前にある作品に没頭して、また次へという繰り返しでしか続けられない。だけどいずれは、エンドロールに名前が載る者として、その映画のメッセージを自信を持って背負えるような作品が選択できる環境にいれたらいいなと思います。やりたい仕事だけしたいというのとは違うんですけど。何がやりたいかわからなくなるのは嫌なので。作り手の一員であるという気持ちを持ちながら、そういう思いが少しでも見えてくる役者になりたいです。魅力的な人って、それがちゃんと見えると思うんですよね」

Credit


Text Tomoko Ogawa.
Photography Ko-Ta Shouji.
Styling Kumiko Sannomaru.
Hair and Make-up Rie Shiraishi.
Photography assistance Kohei Iizuka.
Styling assistance Kiyoka Tsuda.