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セリーヌ・シアマ監督作『ガールフッド』でひときわ輝く女優、カリージャ・トゥーレ

女性の生き様を描いたフランス映画『ガールフッド』で主役を演じた21歳の女優が、街中でスカウトされた経緯、今回初となる演技について語る。

by Colin Crummy
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12 September 2017, 11:08am

2017年上半期、もっとも観客に勇気を与えた映画シーンといえば、パリ郊外の黒人少女4人が、ホテルの一室に入るなり、万引き防止タグが付いたままのドレスに着替え、リアーナの「Diamonds」を口パクで熱唱した、あのシーンだろう。このシーンは、パリに暮らす若い黒人女性の姿をスタイリッシュ、かつ赤裸々に描いた映画『ガールフッド(原題Girlhood)』のテーマを、見事に象徴している。

監督のセリーヌ・シアマは、主演を勤めたカリージャ・トゥーレ(Karidja Toure)に、輝くダイアモンドを見出した。21歳のトゥーレが演じるのは、2度の留年を経て、教師から「もう後はない。普通高校への進学も無理」」と言われ、学校を飛び出し、やがて不良少女たちと交友を深めていく少女・マリエメ。この映画は、女性の友情や、派閥間での喧嘩、異性に感じる奇妙な感覚など、マリエメが経験する人生の機微を追う。トゥーレを含む4人の女優たちはストリートでスカウトされて映画に起用された。だれも演技経験はなかったが、本作で「これまで描き出されることのなかったパリの現実」を体現していると、一大センセーションを巻き起こしている。

『ガールフッド』に起用された経緯について教えてください。
パリにはそんなに多くの黒人女優がいないんです。探すなら、街で見つけなきゃならない。友達とアミューズメント・パークにいたら、キャスティング・ディレクターが見つけてくれて——友達と離れてひとりになると、わたしの前に現れて、挨拶を経てスカウトされました。

口パクで歌うシーンの撮影は楽しかったですか?
はい、だって……リアーナですからね! セットに入ると、照明ですべてが青く染まっていました。その中で見るわたしたち黒人の肌は本当に綺麗で——回想シーンのように美しい映像にしたいと思いました。

あなたが演じるマリエメは、シャイで子どもっぽい少女から、鼻っぱしの強い男の子のような女性へと変化していきますね。役作りはどのように行なったのですか?
撮影に入る前、セリーヌと役作りのためにさまざまなことを試しました。わたしが殻を破って自信を持てるように。それと、マリエメの服装や髪型が変わることで、わたしの中にも変化が感じられました。男の子みたいにならなくてはならないときは、セリーヌが歩き方や低い声での喋り方など、色々と指示をしてくれました。

ギャングの一員となって、ストレートに伸ばした長い髪とデニム・スタイルになったマリエメを演じるのは、どんな感覚でしたか?
力強く感じました。ロングヘアだと女の子っぽくって、10代みたいにみえる。それに対して、ブレードに編み込めば男らしさが出せる。髪型にはそういう魔法のような力があるんです。ギャングのリーダーであるシラの父親が、喧嘩をした娘の髪を切るシーンがあります。髪の大切さを思い知らせるためです。アフリカでは実際にそういうことがあったみたいです。親の言うことを聞かず、外で男の子たちと喋り続けていたりすると、親は少女のチャームポイントである髪の毛を切ってもいいとされている。髪を切ることがバツなんです。

映画の登場人物たちには親近感をおぼえましたか?
はい、マリエメはかつての自分のようでした。学校の先生から「もうこれ以上勉強しても無駄。もう仕事に就きなさい」と言われるシーンがありますが、わたしも同じ体験したことがあるんです。同じ生徒でも、白人、黒人、アラブ系では違った見方をする先生がいるのを、セリーヌはあのシーンで描いてくれた——とても嬉しかったですね。わたしたちが黒人だからというだけで、買い物ですら警備員に尾行されたりする——これも私が実際に経験したことです。わたしの友達に、父親のようなお兄さんがいる女友達がいます。「出掛けるな」とか、「こんな服は着るな」とか、とにかく厳しく面倒を見てくれるお兄さん——マリエメにもそういう兄がいます。

小さい頃は、どんなカルチャーに自分のアイデンティティを見出していましたか?
子どもの頃は、フランスの映画や俳優のことは詳しくありませんでした。映画館に行くときは決まってアメリカ映画を観ていましたから。アメリカ映画には、白人も黒人も出てくるので、自分を投影して見ることができた。映画を観るときは、「この登場人物は自分に似てる。彼女がどんなストーリーを紡ぎ出すのか見届けたい」と思いながら観たいんです。フランス映画ではそれができません。黒人が自己投影でき、感情移入できる映画がないんです。

子どもの頃は女優になることを夢見ていましたか?
もちろんです。子どもの頃は、『ハリー・ポッター』に出たいと思っていました。実現しませんでしたけどね。フランスではなく、ロサンゼルスで女優になろうと思っていました。アメリカには黒人の女優や俳優がたくさんいますから。フランスの黒人俳優といいえばオマール・シーぐらいのもので、彼もいまはアメリカで活躍しています。わたしぐらいの年齢の黒人俳優はいません。誰もいないんです。

そこへあなたたち4人が登場しました。
そうですね! 地下鉄や街のそこらじゅうに、黒人女優4人の映画ポスターが貼られているのを見て、本当に嬉しかったです。衝撃を与えたのではないでしょうか。反響も大きかったです。

なぜポスターが重要なのでしょうか?
わたしが子どもの頃は、雑誌で黒人モデルを見ることはありませんでした。パリの街角に貼られているポスターには、白人ばかりが写っていた。パリの街を歩けば、どこにでも黒人はいて、わたしたちは、「ここにいる。わたしたちは街中に存在しているでしょう?」と思っていたわけです。でも、映画の世界において、わたしたちは存在しないも同然でした。

セリーヌは、映画のなかでスラングを一切使わせなかったと聞いています。
(笑)。そうなんです。撮影が始まったころ、セリーヌは、「more de rire(笑い死に)という言葉は厳禁」と言っていました。スラングを使ってしまって、撮り直しということもありました。

『ガールフッド』が公開されてからファッション関連の仕事も多いかと思いますが、印象に残っている思い出は?
フランスの映画賞セザール賞にノミネートされて授賞式に参加したとき、Elie Saabのドレスを着たことです。空のような青が美しいドレスで、誰もが黒や赤のドレスを着ているなか、とても目立っていたはずです。

Credits


Text Colin Crummy
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.