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Jeremy Scott AW 17:キリスト、エルヴィス、そしてサンセット・ストリップ

ハスラーとグルーピーの黄金期に生まれたスタイルと破壊的な政治参加姿勢を現代に解釈したジェレミー・スコット——そのショーはは、エネルギーに満ち溢れていた。

by Emily Manning
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15 February 2017, 5:40am

ドナルド・トランプがアメリカ大統領に就任した週に、メンズウェアとウィメンズのMoschinoプレコレクションのショーを行なったジェレミー・スコット(Jeremy Scott)だが、ニューヨークファッションウィークにて自身の名を冠したJeremy Scottブランドの最新コレクションを発表した。ドラッグのトリップ感満載のスリップ・ドレスや、スパンコールが多用されたヴェガス・ジャンプスーツなどが盛り込まれた今回のJeremy Scott 2017年秋冬コレクションは、ミリタリーにインスピレーションを得たMoschinoのプレコレクションとは全くと言って良いほど世界観が異なっていた。ジェレミーの頭にドナルド・トランプの存在が大きく引っかかっていることは明らかだった。会場スタッフが着るTシャツにはアメリカ国会議員の人数がプリントされ、ショーの最後にランウェイへと登場したスコットは、笑顔も見せず、観客に手を振ることもなかった。そしてもちろん、カラフルなボンデージ・パンツを履いていた。

ジェレミーは、馴染みのある1960年代と1970年代というテーマで2017年秋冬コレクションに挑んだ。それら時代独特のシルエットやシェイプは、ジェレミーが装飾やグラフィックを爆発させるキャンバスとして最適の役割を果たすようだ。昨夜のショーには、クラッシュ加工が施されたベルベットのフレア・パンツや、ストライプのシュミーズ・ドレス、ライダース・ジャケット、繭のような形状のフェザー・コート、スエードのパッチワーク・パンツなどが見られた。このコレクションで、ジェレミーは、モッズからカリフォルニアのヒッピーまで、アメリカの歴史においてもっとも変革と混乱を極めた60年代という時代のスタイルと、そのドラマチックな進化を描いてみせた。

その時代を改めて見つめ直し、ランウェイに蘇らせることで、ジェレミーは政治をも語っていた。ウエスト・ハリウッドにたむろしていたロックンロール感溢れる粗野なハスラーや、写真家バロン・ウォルマン(Baron Wolman)がスタジオ・ポートレイトに捉えたグルーピーたちを彷彿とさせるルックが登場し、新たな自己表現と解放の手段としてファッションを用いた女性たちがそこに描かれていた。ヒッピーといえば、ハロウィン・コスチュームのような服装でフラワー・パワーを唱える中途半端なイメージが定着しているが、ヒッピーというカウンターカルチャーが輝いていたのは、当時のカリフォルニアが心の底から怒っていたからだ。カリフォルニアを第二の故郷とするジェレミーにも、その血は脈々と受け継がれているようで、今シーズンのコレクションには、カリフォルニア・ヒッピーたちが体現していたクリエイティビティと快楽主義、そして政治への積極的参加の姿勢が滲み出ていた。今シーズンのコレクションに登場したパーカやセーターには蝶のパッチがあてがわれていた——そしてそれら蝶の羽は、ピストルの形をしていた。

ランウェイは、スター・モデルたちのオンパレードだった。オープニングにはイエス・キリストの肖像画がプリントされたパンツ姿のジジ・ハディッドが登場し、ディローン(Dilone)は圧巻のマイケル・ジャクソンTシャツを着て観客を魅了した。アナ・クリーブランド(Anna Cleveland)はラスベガス時代のエルヴィス・プレスリーを彷彿とさせるケープで魅せ、ステラ・マックスウェル(Stella Maxwell)はエルヴィスに扮したフレッド・フリントストーン(Fred Flintstone)をプリントした "ダブル・テーマ"のジャケットを着て登場した。会場のフロントローにはLongchampトートが置かれていたが、それには、マックスウェルがクロージングで着ていたスパンコールのタンクトップにもあったメッセージがプリントされていた。そこにあったメッセージは「As Seen on TV(テレビで観たとおり)」——トランプが世界を揺るがしている今という時代、そのメッセージはアイドル崇拝への警告のように感じられた。しかしそこはジェレミー・スコットだ——極めて楽しい世界観のうちに警告を発していた。

Credits


Text Emily Manning
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.