ウガンダから世界へ:東アフリカのエレクトロを牽引する若手DJ・Kampire インタビュー

先日開催されたバカルディ主催のイベント『Over The Boarder』に出演するためウガンダ出身のDJ、カンピレが初来日。いま、世界が注目する東アフリカのダンス・ミュージック、音楽事情について尋ねた。

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dec 7 2018, 4:27am

ウガンダで結成されたアーティスト集団Nyege Nyege(ニゲ・ニゲ)。ウガンダの首都カンパラを中心に数々のクラブ・イベントを開催し、2015年からは恒例となった4日間にわたる大型音楽フェス“Nyege Nyege Festival”を運営する。また2015年にはカンパラ市内にレコーディング・スタジオをオープンしたり、翌年にはレコード・レーベルNyege Nyege Tapesもスタートするなど、精力的な活動を続け、世界に向けて東アフリカの最新エレクトロニック・ミュージックを発信している。

カンピレは、そのNyege Nyegeの中核を担うDJ/アーティスト。SONARをはじめとする世界の音楽フェスやクラブでオーディエンスを熱狂させ、話題をさらってきた。アフリカ音楽が世界から注目を浴び、ディプロやデーモン・アルバーンがアフリカへと向かう中、逆に東アフリカから世界に飛び出したのが彼女というわけだ。今回、バカルディ主催のイベント「Over The Boarder」出演のため初来日を果たした、このエレクトロニックDJに話を訊いた。

──Nyege Nyegeはアーティスト集団で、フェスティバルでもあります。どういうコンセプトに基づいてスタートしたのですか?

トップ40などのヒットだけではなく、いろんな音楽を掛けたいDJたちがいて、もっと自分たちの個性を活かした音楽をプレイする場を作りたいというのが、そもそものアイデアでした。当初はクラブでのパーティだったのがフェスとなり、音楽レーベルとなり、今ではスタジオ経営や宿泊施設など、どんどん広がっています。DJ、MC、ミュージシャンたち全員がコレクティブの一員として活動。誰かの下で働いているわけではないところが素晴らしいと思います。

──あなたがプレイしたかったのは、例えばどういう音楽ですか?

子どもの頃はコンゴのスークースブレンダ・ファッシー(Brenda Fassie) などのアフリカン・ポップを聴いていました。でも、決してそういう音楽が2018年のカンパラのクラブで大人気というわけではありません。私自身はそういう音楽に今でも興奮するし、それらをアップデートさせたサウンドに興味を持っていて、それをみんなに教えてあげることも大切だと思います。ウガンダでは、欧米のポップ、R&B、ジャマイカン・ダンスホール、ナイジェリアのアフロビートなどの西洋で聴かれている音楽からの影響がとても大きくて、そういう音楽は聴くけれど、自国の音楽カルチャーを知らないなんて恥ずべきことだと思うのです。

──自国の音楽が顧みられていないと感じるのですか?

流されている人が多いんですね。彼らは「クールっぽいから」「ラジオから流れているから」という理由で欧米の音楽を聴いています。そこには大企業の後押しがあるわけで、つまりそれは資本主義です。それでも少数派ながらアンダーグラウンド・アーティストやDJもいる。多様なスタイルの音楽を届けるのが私たちの役割だと思っています。

──東アフリカの音楽がこれほど注目されているのは、なぜだと思いますか?

まずアフリカ全体が注目を浴びていると思います。南アフリカのクドゥーロやアフリカン・ハウス、西アフリカのハイライフやフェラ・クティも知られているし、あとはアフロビートなども。でもアフリカ大陸は巨大です。東アフリカの音楽に関しては、あまり知られていないのが現状だと思います。どういうサウンドかも定義されていない。だからかえって、どういうものなんだろう?と興味を持ってくれているのではないでしょうか。

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──DJを選んだのはどうしてですか?

子どもの頃にピアノを習ってたんです。でも両親に無理やりさせられていた感じで、私は大嫌いでした(笑)。だから音楽的なバックグラウンドを持っている自覚はなかったけれど、アクシデントでDJになって初めて、そういえばピアノをやってたのが良かったかなと今では思っています。

──アクシデントでDJに?

ええ、ホントにそうなの!もともと私は音楽フェスの運営に携わり、ブッキングなどを担当していました。ウガンダの人たちはみんな踊るのが好きだから、プレイリストを作ってあげて、パーティなどで流していたんです。そしたらDJをやってみないか?とフェスの創設者から言われて、やってみたら大盛況。すごく反響が良かったんです。以来こうして続けています。雪だるま式という感じ。レーベルから声が掛かり、海外遠征を行ない、日本にも呼んでもらえて……すごくラッキーですよね。

──影響を受けたDJはいますか?

あえて言うなら、私がここまで来れたのは、自分のDJとしての知識のなさのおかげじゃないかと思っています。だから他とは全然違うサウンドで、新鮮なのかなと。DJとはこうあるべき、みたいな既成概念に捉われず、直感を大切にしています。ミュージシャンだと、アフリカのフュージョン系エレクトロニック・アーティストからは影響を受けているし、私が幼少の頃に聴いてた音楽をエレクトロニック・サウンドと折衷させたブラカ・ソム・システマ(Buraka Som Systema)、

第三世界の政治問題などをエレクトロニックと掛け合わせたM.I.Aからは大きな影響を受けました。

──ウガンダではCDJの入手が困難と聞きましたが。

大きなイベントなどのために借りることはできるけど、とても高価です。だから普段はまず無理。みんなコントローラを使っています。

──でもパソコンに繋ぐわけですよね。パソコンも高価なのでは?

都会の人ならパソコンは大抵が持っています。ミドルクラスもワーキングクラスも持っていて日常的に使っています。

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──では音楽を聴くための手段は?

圧倒的にスマホですね。大多数の人びとはダウンロードしてスマホで聴いています。

──西洋からの影響とアフリカ人としてのアイデンディティの兼ね合いを、人びとはどう考えていますか?

私は両方とも大切だと思うけど、アフリカ人としてのアイデンディティは、植民地時代の名残もあって、とても複雑です。アフリカ由来のものや伝統的なものはクールではない、という考え方が、ずっと何世代にもわたって刷り込まれてきました。ようやく疑問を呈する考え方が出てきたけれど、それでも私たちの頭のどこかに、アフリカ人は他の人種より劣っているという考えが潜んでいます。

──自尊心が低い?

そうだと思います。だからアフリカ人としての誇りを持とうという呼びかけが起こっています。でも海外で活躍しているとか海外で評価された、海外で成功したという話を聞くと、諸手を挙げて大絶賛となってしまう。自分たちで下した評価ではないわけです。

──ウガンダにおけるLGBTQの捉え方はどのようなものですか?

西洋的な考え方ではあるけれど、急速に広まっています。グローバルな世界に生きているんだな、と実感させられます。元々アフリカにも、いわゆるクィアな人びとはいるけれど、自分でゲイだと名乗ることは、あまりなかった。それは西洋的なアイデンティティという考え方に基づいているからです。アフリカ人にはない発想でした。しかし同時に、アンチ・ゲイな思想や団体も根強く残っています。そういう団体には欧米の宗教団体からの資金が流れ込んでいたりするわけです。

──若い世代はそういった問題には抵抗がないのでは?

確かにウガンダには若者が多いけれど、でも大半の人たちはセクシャルマイノリティ云々より、もっと大きな問題に直面しています。貧困、失業、政治問題など。正直なところ、ウガンダの人びとは、他人のセクシュアリティなんてあまり関心がないんじゃないかと私は思っています。政治的なカードとして利用されてるだけ。私が望むのは、ジェンダーや性的指向に関わらず、その人となりの本質をしっかり見極め、誰もが平等にチャンスを得られるようになること。自分たちには無理だって決めつけてしまう傾向がアフリカ人にはあります。端から諦めている。そういう思考から脱却して、変えていければいいなと私は思います。

Credit


Text Hisashi Murakami
Photography Masanori Naruse