【独占】ヴォルフガング・ティルマンスがいく、ケニアのLGBTI難民キャンプ

反同性愛法が可決されたウガンダ。ホモフォビアによる暴力に絶えず脅かされるLGBTIの人びとは、故郷を離れケニアのカクマ難民キャンプへと逃げこんでいる。写真家のヴォルフガング・ティルマンスがとらえる彼らのポートレイト。

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25 februari 2019, 5:41am

This article originally appeared in i-D's The Superstar Issue, no. 354, Winter 2018

2013年12月、ウガンダで反同性愛法が可決され、世界中に波紋が広がった。その内容は「加重同性愛」罪に問われた者を終身刑にするというもの。この法案は2014年8月、採決に不備があったとして無効判決を受けるも、ウガンダの国会議員たちはいまだに同法の修正案を押し通そうとしている。

残念ながら、アフリカ大陸においてウガンダは例外ではない。同性愛はアフリカの多くの国で違法とされ、激しい差別の対象となっている。LGBTIへの支援も増え、彼らの権利を求める声も高まっているが、そのような活動には反発がつきものだ。アフリカにはホモフォビアだけでなく、同性愛を〈白人の病気〉とみなす複雑な歴史、植民地時代の負の遺産が存在するためだ。それを踏まえると、ウガンダの法律の「自然の摂理に反する性行為」という一節が英国刑法典から引用されているのも皮肉な話だ(この法典は1860年、英国人議員トーマス・マコーレーがインド刑法典として編纂したのち、1899年にサミュエル・グリフィス卿によって改編され、オーストラリアのクイーンズランド州で採用された)。

同性愛にまつわる植民地時代的な考えは、アフリカにおいていまだに根強く、米国の福音主義の活動家や布教者たちによって、より強固になっているという声もある。例えば米国の宗教右派団体、家族調査評議会はウガンダ大統領の〈ゲイを殺す〉法律の支持を表明し、パット・ロバートソン率いる福音派団体〈American Center for Law and Justice〉は、ジンバブエでは〈African Centre for Law and Justice〉、ケニアでは〈East African Centre for Law and Justice〉として活動している。

2018年、アフリカ初の私の個展「Fragile」がキンシャサ、ナイロビ、ヨハネスブルグで開催された。会期中にケニアのカクマ難民キャンプを訪ね、そこで生活するLGBTIの自主活動団体が何を求めているのか、本人たちに話を聞いた。危害が及ぶ可能性もあるため、数名の回答者は本名を伏せている。

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——多くのLGBTI活動家は、アフリカが西欧の規範を押しつけられた植民地時代の複雑な政治的背景が、アフリカにおける同性愛者の権利運動の妨げになっている、と考えています。つまりアフリカでは、同性愛も同性愛者の権利擁護もいわゆる白人的・西欧的な考えであり、忌避すべきものとされている。反同性愛法案を支持するウガンダ国民議会のレベッカ・カダガ議長は、西欧諸国がアフリカに同性愛という「悪習」を広めようと企んでいると主張しています。いっぽうアフリカのNGO〈African Equality Foundation〉の活動家エドウィン・セサンジは、ホモフォビアこそ西欧から持ちこまれた考えであり、カダガ議長は事実を偽っている、と非難しました。みなさんはウガンダ出身ですが、ホモフォビアはウガンダだけでなく、アフリカ全体で顕著だそうですね。それはなぜでしょう? キリスト教やイスラム教の信仰が原因なんでしょうか?

ジョセフ(以下J):それは「すべての少年/少女は、成長して男/女になり、それぞれ異性のパートナーを見つける」というヘテロセクシュアルを前提とする考えが、アフリカ全土に行き渡ってるから。これに当てはまらないひとは、周りからひどい攻撃を受けます。同性愛者への反対意見はたいていの場合、「同性に性的魅力を感じるという特性は、先天的なものでも変更不能でもない」という前提に基づいている。これはウガンダ議会に反同性愛法案を提出したデーヴィッド・バハティ議員の主張です。

グラハム(以下G):聖公会の指導者数人が同性愛者だとわかったあと、聖公会派のレベッカ・カダガは、自分はLGBTIに関することにはいっさい耳を貸さない、ウガンダは決してそのような行為を認めない、と断言しました。

——同性愛は非アフリカ的だ、という主張をよく耳にしますが、キリスト教だって非アフリカ的で、植民地支配と深く関係していますよね。

レイザック(以下R):たしかに、僕たちが信仰する宗教を持ちこんだのは外国人だけど、それよりも文化の問題だと思う。みんなヨーロッパの同性愛者については何もいわないけど、僕たちには「同性愛はアフリカのものじゃない」「アフリカの文化に反している」と言う。同性愛者は不吉だと思われてる。

G:不吉だからって除け者にされる。

R:「呪われてる」って。

J:婚姻制度を脅かす存在だと思われてる。

G:同性愛者だと知られた瞬間に距離を置かれる。

——同性愛が西欧の病気とみなされているから、西欧諸国が同性愛者の権利を訴えても、逆効果になってしまうんですね。

J:アフリカのひとが同性愛を白人の病気だと考える理由はよくわからない。多分、そう考えたほうが都合が良いからじゃないかな。

R:彼らのほとんどは、同性愛は白人が広めている悪習で、それによってアフリカの文化を壊してはいけない、って信じこんでる。

G:同性愛は先天的なものだと言っても、ウガンダ人は納得しない。

J:みんな同性愛を〈白人の行為〉だと思ってるから、それが僕の生まれつきの特性だということも、僕の気持ちもわかってくれない。正気じゃないと思われる。

エリザベス(以下E):みんなに自分のことを説明しても意味がない。彼らの主張を押しつけられるだけだから。

G:お前に話す権利はない、ってね。

E:私たちの生き方をあれこれ決めつけたがる。まるで私たちがまっとうな人間じゃないみたいに。

G:2015年、僕たちがカクマに来て干ばつが起きたとき、雨が降らないのはゲイのせいだ、と責められた。つまり、僕たちは土地に災いをもたらす邪悪な存在だと思われてる。そういう人たちに、同性愛は僕の生まれつきの特性だとか、僕の気持ちを理解してもらうのはすごく難しい。彼らは僕たちの立場で物事を考えられないし、そもそも同性愛の存在を信じていない。だから同性愛を〈精神病〉と呼んでる。

E:ずっと雨が降らなければ、私たちはたくさんの試練に向き合わなくちゃいけない。

G:いや、試練じゃなくて攻撃だよ。

E:私たちはいつも攻撃されてるけど、通報することも行動を起こすこともできない。警察も同性愛に反感を持ってるから、通報したとしても「家に帰れ」っていわれるだけ。

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——カクマ難民キャンプに来たのはいつですか? LGBTI難民の受け入れについて知ったきっかけは?

J:ここに来たのは2年7ヶ月前。ナイロビにあるUNHCRのトランジットセンターで2ヶ月過ごして、それからカクマに来た。トランジットセンターで、このキャンプにLGBTI難民がいると教えてもらった。

——ウガンダを離れようと決めた理由は?

J:命の危険を感じたから。とにかく安全な場所に逃げたかった。ウガンダで反同性愛法案が提出されたとき、ゲイに対する反感が高まり、ホモフォビアが広まるのをひしひしと感じた。今も広まり続けてる。同性愛者を嫌う卑劣な人たちの手で、多くのゲイが無残にも命を奪われた。セクシュアリティを理由に収監されたひともいる。国を離れようと思ったきっかけは、自分の体験もそうだし、そういう事件を目の当たりにしたから。

——今でも故郷の誰かと連絡を取っていますか?

J:取ってません。

E:私たちがどこにいるかも知らないと思う。もし知ってたら、ここに押しかけてきてひどい目に遭わされる。

——自分が同性愛者だと気づいたのはいつですか? 誰かに打ち明けたことは?

J:男の理科の先生に片想いしてたから、子どもの頃から無意識のうちに同性が好きだったんだと思う。それを何と呼ぶのかは知らなかったけど。成人していろんな本を読むようになってから自分のセクシュアリティを知ったけど、自分を守るために秘密にしてた。

——キャンプでの生活について教えてください。

J:起きて、何か食べ物があれば食べて、あとは寝るだけ。LGBTI難民は他の難民より仕事を探すのが難しい。ここで活動してるほとんどの団体は、LGBTIと関わるのを嫌がるから。

——では、能力があってもここで働くことはできないんですか?

E:私たちには能力も知識もあるけど、働き口がない。私たちにはチャンスも与えられない。たとえチャンスをもらえたとしても、周りが全力で阻止するから諦めるしかない。

——キャンプの外にパートナーはいますか? ここではセクシュアリティをオープンにできますか? それとも隠さなくてはいけないんでしょうか。

J:パートナーはいません。今はいろいろと都合が悪いから。

——このキャンプの人びとはLGBTIコミュニティについて知っていますか? ここでグループをつくって活動するのは危険ですか?

J:LGBTIコミュニティの存在は、ほぼ全員知ってます。当たり前だけど、ここで活動するのはとても危険。僕たちに対する反感は、言い表せないほど大きいから。

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——ここも決して安全ではないんですね。みなさんは何らかの支援や保護は受けていますか? それとも周りから距離を置かれている?

J:LGBTIが暮らすシェルターがある場所は〈保護エリア〉と呼ばれてるけど、保護からはほど遠い。攻撃しようと思えばいつでもできるし、実際に襲われたひとも数人いる。とても守られてるとはいえない。

G:しかも、特に同性愛を嫌ってる人たちもここで暮らしてる。トゥルカナ族とか、もともとここで暮らしていた人たちとか、スーダン人とか……。

E:つまりムスリムの人びと。私たちが暮らしてる建物には窓なんてなくて、ビニールシートで覆ってるだけ。ここにはそれしかないから。誰かが破ろうと思えば簡単に破れる。セキュリティなんてないも同然。

——襲われたことはありますか?

全員:何度もあります。

J:ほぼ毎週。

G:毎日のように襲撃事件がある。歩いてるだけでも、家にいるときも、病院に行く途中でも、いつ襲われるかわからない。特に狙われやすいのはトランスジェンダーの人たち。彼らは見た目でわかるから。常に危険は付き物です。

——第三国に再定住できる可能性は?

J:想像もつきません。チャンスはないわけじゃないけど、再定住プログラムの枠はすごく少ない。第三国は難民の受け入れ数を大幅に減らしてるし、今の米国はほぼ難民を受け入れていないから、僕たちには行き場がない。

——UNHCRやカクマ難民キャンプは、LGBTIの人びとに資源、教育、健康にまつわる情報、医療を提供していますか?

J:限られてるけど、あるにはあります。でも診療所の医療スタッフと接するたびに嫌な気分になる。鼻で笑ったり侮辱するまではいかないけど、僕たちに対してあからさまに態度を変えるから。ほんとにバカバカしい。

——LGBTIコミュニティはどのくらいの頻度で集まっていますか? 今このキャンプにいる同性愛者の人数を教えてください。

J:僕らが集まるのは、UNHCRが緊急の問題についてミーティングを開くとき。

E:メンバーはだいたい170人かな。

——ウガンダ以外の国のひともいます?

E:いろんな国のひとが参加してる。

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——この地域やキャンプ内のホモフォビアによって、気持ちに変化はありましたか? LGBTIコミュニティ以外のひととはどのように対話をし、関わっていますか?

J:僕はいつも人を疑ってる。気づくと常に身構えてるんです。ウガンダにいたときは、同性愛者に対する言葉の暴力のせいで何度も自分の人生の意味を見失って、自殺まで考えた。そんな時期を何とか乗り越えて、今は良い意味で鈍感になれた。嫌われたとしても、自分は自分だって胸を張れる。

——カクマのLGBTIコミュニティが今必要としている支援は? どんな物資があれば役立ちますか?

J:今の僕たちに必要なのは、LGBTIの権利が保障されている国への再定住プログラム。

——教育制度を改革し、キャンプ内外のLGBTIの問題や、植民地化されるずっと前からLGBTIがアフリカ各地の〈自然の摂理〉のなかに存在していたことを教えるのは効果的だと思いますか?

J:教育改革自体はすばらしいアイデアだけど、この問題について進んで自らの考えを改めようとするひとは少ない。猛反対を受けると思う。特にウガンダや同性愛が処罰の対象となっている国では、同性愛を広めるために教育を利用してると思われるかもしれない。

——キャンプやこの地域の状況を変えるには、どんな行動や戦略が必要だと思いますか?

J:実現可能な解決策は、LGBTIに開かれた国への再定住しかない。もっと広範囲での活動なら、活動家たちがロビー運動をして、LGBTIを不当に罰する法律の改正を呼びかけるのも、出発点としては悪くないと思う。

R:僕たちはいまだに、アフリカの人びとがLGBTIを受け入れるよう説得できていない。国連は僕たちの安全の確保や再定住については何もできないけど、全力を尽くしてくれてる。それに、あなたのように取材にきてくれるひとを通して、僕たちは声を上げられるし、外国にも僕たちのことを知ってもらえる。そうやってみんなの考えを変えていきたい。

E:いちばんつらいのは、私たちが泣いていても誰も気にしないこと。みんな何も聴こえてないふりをする。私たちがあちこちで大声で泣きわめいても、私たちの涙に対する反応は何もない。

G:ほんとに何もないんです。

——では、この国で何かが変わる見込みはほとんどない?

G:まったくありません。

——あなたが望むのはどんな未来? 将来はどこで暮らしたいですか?

J:少し前に襲われたとき、ひとりが僕の顔を殴る前に「お前の婚約者は誰と結婚するんだ?」と訊いたんです。くだらない質問だけど、残念ながらほとんどのひとはそう思ってる。同性愛も左利きみたいに、人間の生まれつきの特性として受け入れてほしい。いつか同性愛が非犯罪化されて、ありのままの僕たちを受け入れてもらえる安全な場所で暮らせるよう願ってる。

——読者に伝えたいメッセージはありますか?

J:カクマのLGBTI難民は「Refugee Flag Kakuma」というFacebookページを運営しています。キャンプの生活について、僕たちひとりひとりの話を共有しています。もし僕たちに共感し、生活をサポートしたいと思ってくれたなら、詳しくはこのページを見てください。運営してるのは僕じゃないけど、担当者の連絡先も載っています。よろしくお願いします。


カクマ難民キャンプの状況についてもっと詳しく知りたい方はRefugee Flag Kakumaへ。

カクマ訪問を企画してくれたドイツのUNHCR提携団体、UNO-Flüchtlingshilfeのマーティン・シャッファー氏に、この場を借りてお礼申し上げます。世界中の難民を援助するUNHCRのたゆまぬ努力に心からの敬意を。

どうか難民たちの言葉を広めてください。

Credits


Text and photography Wolfgang Tillmans.

With special thanks to the UNHCR and Jennifer Hope Davy.

This article originally appeared on i-D UK.