Urara wears all clothing Urara Tsuchiya.

土屋麗インタビュー:国境を越えて

もっとも野生的でもっとも超現実的なセラミックアーティスト、土屋麗。

by Ryan White; photos by Vicki King; translated by Aya Takatsu
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maj 1 2018, 4:23am

Urara wears all clothing Urara Tsuchiya.

This article originally appeared in The Radical Issue, no. 351, Spring 2018.

土屋麗の作品をそこかしこで見かける。2017年はノッティンガムからウィーン、ロンドン、そしてパリまで。外部者の視点を通してイギリス流のキッチュさを性的に評価したその空想的な陶芸作品は、目にした者すべての心を動かし、その顔に笑みをもたらす。それは「すごい、こんなものがあるなんて」とか「これをつくったのは誰!」といった言葉とともに、口コミやInstagramを通して世に広まった。

All clothing Urara Tsuchiya.

作品はそこかしこにあるが、麗自身は現在、エクセプショナル・タレント(稀有な才能)ビザでイギリスに滞在している。静かなカフェを探してハックニーのメア・ストリートを一緒に歩いている途中、彼女は財布からその滞在許可証を取り出して、笑った。「これは1年に1000枚ほど発行されるビザです。科学分野に300枚、アートの分野に300枚、そのほかのものに300枚。〈アート〉の対象者には、作家や映画監督、ダンサー……サーカスの人たちも含まれます」。麗のビザは2020年で切れるが、一度更新しているため、もう更新手続きはできないのだそうだ。「永住ビザも申請したんですが、却下されました。裁判に持ち込もうかと思ったけど、最近法改正があったから今は時機じゃないって弁護士に言われて。だから、これはまだマシな選択だったんです」

All clothing Urara Tsuchiya.

麗は20歳のとき、1999年にロンドンにやってきた。今はなきインディペンデントな美術大学バイアム・ショウで、アートの基礎課程に通うために。育ったのは東京郊外の無機質な高層マンションで、いくつかの街を転々とした。その後17歳で摂食障害でに悩まされ、高校を中退した。「日本では、そういうふうになったら、大学に入るのは少し難しくなるんです。高校からストレートに進学するのが普通だから」。そんなわけで麗は学びの場にイギリスを選び、基礎課程を終えたあとはゴールドスミス大学でファインアートを専攻。そののちにグラスゴー・カレッジ・オブ・アートに進み、美術学修士号を取得する。グラスゴーの広々とした通りや空間、静けさ、家賃の安さを6年間堪能したあと、彼女はその街に住むことを決めた。気をそらす娯楽がないと制作は進む。だが、静けさは孤独も生む。さらにスタジオは冬のあいだ寒くて使えなかった。「忙しくしているのが好きです。そうすれば自分が孤独になりそうな存在であることを忘れられるので」

麗が生み出す作品は、いくつもの異なる領域ーー陶芸、パフォーマンス、映像、衣装ーーにおよび、ユニークでひょうきんな魅力を醸し出しながら、人生や人間性の“不条理”に形を与えていく。「ユーモアなしでパフォーマンス作品をつくるのは、ちょっと難しいかもしれません。労力が要る作品をつくるのが好きなんですが、多くの労力をつぎ込むのなら、少なくともその作品が面白いものであってほしいじゃないですか」。彼女は今、東ロンドンはハックニーのギャラリースペースで2週間開催される展覧会「If You Can’t Stand The Heat」の設営を手伝っている。うんざりするほど長いあいだ“女性の手工芸”と称されてきた分野で活躍する、20名の女性アーティストを讃える展覧会だ。麗の作品〈裸体主義者の休暇(Naturist Holiday)〉は、会場の中央近くに置かれていて、いい効果を生んでいる。それはニスのかけられていない、彩色したセラミックのボウルで、中には2匹のクマと1匹のパンダがいる。そしてその大きく開けられた口が、裸の男性の勃起したペニスを狙っているのだ。

Naturist Holiday, 2017

古風なイギリス文化の模倣である〈裸体主義者の休暇〉は、伝統的デザインとどぎつい性的描写を麗流に解釈した一例といえる。こうしたアイデアは、彼女の祖母が持っていた陶芸品から来たのだという。「座布団の上に猫が座っているデザインで、それを持ち上げると、中にエロティックな格好をしたカップルの像が入っていました。祖母がそれをくれようとしなくて、自分でつくったのが始まりです」。テディベアと仲間の動物たちというキッチュな表現は、彼女の母親が好きなイギリスの古物市が持つ“奇妙な空想の世界”に一部由来している。「母はヨーロッパのアンティークやヴィンテージものを扱うオンラインショップを経営しているんです。だからこっちに来ては、気取ったものを買い付けています。母と一緒に、ロンドン以外の街のフェアをたくさん訪れたんですが、そこの人たちって、とても……変わっていて」。彼女の作品にある風変わりな性描写は、シンプルに「人を居心地悪くさせるため」のものなのだ。それによって誘発される神経質な笑い声を、麗は楽しんでいる。「そういう気まずさってすごく面白い」

All clothing Urara Tsuchiya.

驚くにはあたらないが、幅広いジャンルにまたがるその作品群は、実に多くのものからインスピレーションを得ている。「アーティストのポール・キンダースリーとは何度もコラボしているんですが、アイデアは一緒に観た映画から得ています。1976年の『The Baby』とか。家で粘土やテキスタイルで作品をつくっているときは、作業しながらイギリスのリアリティ番組をたくさん観ます」。アーティストの友人たちと話すことで、取り組み中の作品から少し自分を離すこともできるのだという。「パフォーマンスの作品は、だいたいほかのアーティストとの会話からアイデアが生まれます。協働する過程が好きなんです。そうすれば、自分のアイデアに固執し過ぎなくてすみますし。環境や衣装は自分でつくりますが、そこからあとは人が参加できるようオープンにしておきたいんです」

明日、麗は日本に帰る。家族と会い、グラスゴーの容赦ない冬からしばし離れ、小さなデザイン学校で2週間の陶芸コースをとるために。より野心的なデザインを将来手がけるべく、技術を磨こうとしているのだ。「夜間コースで教わった以外、伝統的な陶芸デザインについては一度も学んだことがないんです」。昔ながらの日本の陶芸に強い魅力を感じると言いつつも、彼女には自分の作品をそうカテゴライズするつもりはないようだ。「何かに使える、もしくは何らかの目的を持った作品をつくれたらと思っています。離れたところから見て楽しむだけの作品を作るという考えには、いつも不満がありました」

では、〈裸体主義者の休暇〉を使って食べるなら、どんなシリアルが向いているのだろうか? 「シリアルはおすすめしません。液体状のものがいいと思います。おかゆとか、スープとか」

Shirt and shorts Margaret Howell

Credits


Photography Vicki King
Styling Louis Prier Tisdall

Urara wears all clothing Urara Tsuchiya.

Translation Aya Takatsu.

This article originally appeared on i-D UK.