特集上映「サム・フリークス vol.3」:『バッグ・オブ・ハンマーズ』『ブレッド&ローズ』

「はみ出し者」映画の特集上映イベント、第3弾のテーマは「セーフティ・ネット」。ブライアン・クラーノの日本未公開作品と巨匠ケン・ローチの傑作が一日限定で上映される。1/20(日)渋谷ユーロライブにて開催。

by Takuya Tsunekawa
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18 January 2019, 10:01am

特集上映企画「真摯な痛み」シリーズの後継イベントで、はみ出し者映画を特集する「サム・フリークス」の第3弾が、1/20(日)に渋谷のユーロライブで開催される。

「サム・フリークス Vol.3」では、『結婚まで1%』が日本公開されたブライアン・クラーノの監督長編デビュー作『バッグ・オブ・ハンマーズ』と、イギリスを代表する巨匠ケン・ローチが移民労働者たちの労働条件改善運動を描いた『ブレッド&ローズ』を上映。公的支援から見放された人々に対して、社会と個人の関わりのなかで作っていく「セーフティ・ネット」についての映画の特集となっている。

ジャパン・プレミアとなる『バッグ・オブ・ハンマーズ』は、カリフォルニアのバーバンクで他人の葬式で駐車サービスのスタッフを装って、弔問客の車を盗んでは売り捌くことで生計を立てている親友ふたりの日常を描いたブロマンス的なコメディとして進行する。しかし、彼らが貸し出している借家に越してきた失業中の情緒不安定なシングルマザーの家庭で、12歳の息子に対してネグレクトが行われていることが明らかになると、異なる主題が浮かび上がってくる。事態が深刻さを増したとき、無責任に生きてきた彼らは社会のセーフティ・ネットから疎外された少年の世話をすることを選択するのだ。『万引き家族』より約7年先んじて同様のテーマを取り扱っていると言えるが、監督のブライアン・クラーノは家族のダイナミクスを掘り下げ、伝統的ではない柔軟な家族のあり方を提示している。

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『ブレッド&ローズ(原題:Bread And Roses)』(2000年、監督:ケン・ローチ)

イギリスの社会主義映画作家ケン・ローチが初めてアメリカで手がけた『ブレッド&ローズ』は、90年代に南カリフォルニアで起こった労働者のストライキの実話に基づいている。題名は1912年のマサチューセッツでの移民労働者による闘争のスローガンに由来しているが、サッチャー政権下のロンドンで炭鉱労働者のストライキをゲイの人々が支援した姿を描いた『パレードへようこそ』でも同名の労働運動歌──“この人生は辛く厳しい/生まれてから死ぬまで体と同様に心も飢えている/私たちにパンだけでなくバラもください”──を謳いあげる場面があったことは記憶に新しい。どちらもパン(生活)のために働き、バラ(尊厳)を持たない人々の物語である。一貫して労働者階級の日常と社会の不正を描いてきたケン・ローチは、本作ではメキシコからの不法移民の目を通して、米国の実情を語っている。法律で保護されない移民労働者がアメリカン・ドリームを達成するためには正当な権利すら奪われてしまう経験に焦点を当てているのだ。

サム・フリークス Vol.2」では、『キャプテン・マーベル』の公開が控えるアンナ・ボーデン&ライアン・フレック監督コンビによる隠れた傑作『シュガー』を上映したが、劇中に忘れがたいセリフがあった──「人に手を差し伸べない奴は生きている価値がない」。今回上映する2作品は、そのことに対して、それぞれ回答を表明しているように思う。またとない機会にぜひ多くの方々に足を運んでもらいたい。

なお本イベントは、今回もすべての子どもたちが社会から孤立することなく暮らしていけるようになることを目的とした学習支援や自立支援のために、有料入場者1名につき250円が認定NPO法人「3keys」へ寄付される。

サム・フリークス Vol.3
日時:2018年10月20日(土)
会場:ユーロライブ(渋谷)
料金:2本立て1500円(入れ替えなし・整理番号制)
12:50~ 当日券販売開始
13:15~ 開場
13:30~『バッグ・オブ・ハンマーズ』上映
15:10~『ブレッド&ローズ』上映

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