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Guide to Berlin Atonal 東京版

本日2月17から19日の3日間に渡り東京で開催される、ベルリンの前衛的音楽フェスティバルBerlin Atonal初のサテライト・イベントNew Assembly。そのディレクター浅沼優子が、開催の経緯や見どころなどを紹介。

by Yuko Asanuma
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17 February 2017, 10:20am

Camille Blake

Berlin Atonalは、年に一度ベルリンで開催されている前衛的な電子音楽のフェスティバルだ。ベルリンというとテクノのイメージが強いが、Berlin Atonalは実は「テクノ」という概念が生まれる以前の1982年に、まだ壁で分断されていたベルリンの西側で始まった。量産されるようになった、特にロックやポップスといった「歌」ベースのフォーマット化された大衆音楽に対抗するものとして出現してきた、インダストリアル音楽やノイズバンドやアーティストをフィーチャーし、廃工場などを会場にコンサートと言うよりは、フェスティバル全体がパフォーマンス・アートのような催しだったという。

Berlin Atonalについてもっと知る:ベルリン スペースと実験精神と、時代を切り拓く音楽 ① Berlin Atonal

実はベルリンのテクノ・カルチャーのルーツはこのようなシーンにある。感情を排した無機質な音、剥き出しのコンクリートの反響、反復する機械的なリズム、そしてその身体的な刺激。興味深いことに、このBerlin Atonalの創始者であるディミトリ・ヘーゲマンという人物は、数年間このフェスティバルを続けた後、壁の崩壊というこの街、ひいてはこの国のユース・カルチャーの爆発的なエネルギーの解放を受けて、新たな時代の音楽はテクノであるとしてクラブTresorを設立する。それと同時に、Berlin Atonalは休止された。そしてTresorは、90年代に一世を風靡し、テクノ好きなら誰でも知っている、ベルリン・テクノの代名詞のような存在となった。

そのBerlin Atonalが、23年のブランクを経て2013年に復活した。テクノのルーツにある精神を呼び起こし、テクノを通過した先を見据える、そんな姿勢が感じられるフェスティバルとして。その新生Berlin Atonalは、まさに今のベルリンを象徴するイベントとして、早くも定着し高い人気を誇っている。星の数ほどフェスティバルがあるヨーロッパにおいて、強い個性と一貫した精神と美意識でその存在感を放っていると言っていいだろう。

筆者も2013年から毎年参加していたが、昨年になって「日本でサテライト・イベントを開催したいので協力してもらえないか」との相談を受けた。「Berlin Atonalとして、今後継続的に日本でイベントを開催し、日本のアーティストとの関係を深め、ベルリンで開催されるフェスティバルにも招待していきたい」という。復活後のフェスティバルはディミトリの意思を受け継ぐ3名のディレクターを中心として運営されているが、彼らは前年2015年のフェスティバルで、メインステージにEnaとRyo Murakamiのライブをブッキングしていた。日本でもフェスティバル・アクトとして真っ先に名前が挙がるようなアーティストではない彼らに着目し、錚々たるラインナップと共に2000人は収容できるメイン会場に呼び、ディレクター自身も一度も実際に見たことがないパフォーマンスをやらせるという、その潔さというか勇気というか無謀さに感心していたこともあり、二つ返事で引き受けることにした。

こうして彼ら3人と私の4人で「東京版イベント」の構想を練り始めた。開催場所も、日にちも、ラインナップ案も一切の指定がなく、前例もないので、ほぼゼロの状態から作り上げる面白さとチャレンジがあった。その過程で色んな人に相談したり意見を求めたりしたが、ラインナップや趣旨を聞いて「ヤバそう!」、「絶対行く!」という熱いサポートの声と、「人は入らなさそうだね」、「もっと有名な人出した方がいんじゃないの?」というシビアな意見とに極端に分かれていた。完成されたエンターテイメントではなく、未完成・未知数な実験のスリルを楽しむ、そんなイベントが東京で成立するのか。はっきり言って主催者側である私も分からない。でも、成功の確信があるイベントばかりやっていたら、文化は、創造性は衰退してしまわないか?今の東京にこそ、こんなチャレンジが必要な気がするのだ。New Assemblyと名付けられたこのイベントは、これ自体が大きな実験だと言っていい。

最終的なプログラムは、Berlin Atonalならではの着眼点と、日本開催ならではの特色が生かされた内容になったと自負している。私個人が特に自信を持っているのは、国内アーティストのラインナップである。現在、世界的に見ても先進的でオリジナルで、挑戦的な活動をしている各方面のアーティストたちが集められたと思う。日曜日に1フロアのキュレーションを依頼したBlack Smoker Recordsはその筆頭で、東京を拠点に20年(またはそれ以上)、世界に類を見ないアプローチのヒップホップを原点として、有機的な芸術ネットワークを形成している彼らは、もっとずっと脚光を浴びていい存在だとずっと思ってきた。東京で実験的なテクノのイベントVetaや夏の屋外フェスティバルruralを支えてきたDJ Okudaも、今のシーンに多大な貢献をしてきたし、Goth TradやEnaとイベント「Back To Chill」を長年に渡って主催してきた100madoもしかり。ベース・ミュージックの東京ならではの進化系だ。大阪から襲来するDJ Fulltonoはシカゴから飛び火したフットワーク/ジュークという非常にニッチなスタイルの音楽を日本で極め、さらにその未来に目を向けている稀有な存在。その快楽的でありながらストイックなプレイは、ぜひデトロイトのDJスティングレイやHyperdubのローレル・ヘイローとぶつけてみたかった。それが実現するのがとても嬉しい。同じく大阪からやってくる行松陽介も、果敢に異ジャンル交配に挑む野心的なDJで、ベルリンでこんなプレイをする人はいない。アヴァンギャルドな才能の宝庫、大阪からはCrossbredとしても活動する女性デュオ、Synth Sistersも金曜日のSuperDeluxeに出演してもらう。私もSynth Sisters名義のライブを見るのは初めてだが、かつて大阪の伝説的パーティー「Flower Of Life」などで何度もCrossbredには飛ばされた経験があるので、彼女たちの最新形を観られるのもとても楽しみだ。

イベント的なハイライトは、やはり元ナイン・インチ・ネイルズのキーボーディスト、アレッサンドロ・コルティーニと日本のノイズ・アーティスト、メルツバウのコラボレーションや、ベルリンのラシャド・ベッカーとエナの共演など、誰もまだ見たことがない世界初コラボレーション・パフォーマンスだが、ぜひ来日アーティストだけでなく、普段国内で活動している日本のクリエイティブでワイルドな才能たちも改めて発見してもらいたいと思う。このNew Assemblyが、人と音楽とアイディアの交換の場となり、刺激となり、笑顔と驚きと衝撃の体験となって未来に繋がることを祈っている。

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New Assembly
日時:2/17(金)(Open 19:30) 20:00 - 23:00
会場: SuperDeluxe
料金:前売¥3000 (+1ドリンク・チャージ)当日¥3500 (+1ドリンク・チャージ)
RA Japan
e+
出演:Alessandro Cortini presents AVANTI [live A/V]
Puce Mary [live]
Synth Sisters [live]

日時:2/18(土)22:00 - 06:00
会場:Contact
料金:前売/Contact Sメンバー/23歳以/23:00前¥2500 当日¥3500
RA Japan
e+
Clubberia
出演:DJ Stingray 313
Laurel Halo
Sigha [live]
Renick Bell [live]
DJ Fulltono
Okuda
行松陽介
100mado
API

日時:2/19(日)17:00 - 23:00
会場:Contact
料金:前売/Contact Sメンバー/23歳以/23:00前¥3500 当日¥4500
RA Japan
e+
Clubberia
出演:Alessandro Cortini + Merzbow [live]
Ena + Rashad Becker [live]
A Vision of Love [live]
Ryo Murakami [live]
KILLER-BONG [live]
Atsuhiro Ito [live]
カイライバンチ [live]
VELTZ [live]
BUN [live]
威力
Compuma
DJ YAZI
Iroha [VJ]

Credits


Text Yuko Asanuma