ベルリン・オルタナティブ・ファッションウィークのハイライト5選

ベルリンで密かに勢いを増す”裏”ファッションウィークの存在をご存知だろうか?世界最高峰のクラブ<ベルグハイン>にて、その挑戦的かつ剥き出しのクリエイションが一気に解き放たれた。ベルリン在住ライター山根裕紀子が注目する今期ハイライト5選からその全貌を紐解く。

by Yukiko Yamane
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13 April 2017, 2:35am

3月30日から4月1日までの3日間、ベルリン・オルタナティブ・ファッションウィーク(以下、BAFW)が開催され、コマーシャルファッションに対抗するアーティスティックかつユニークなデザイナーたちがベルリンに集結した。ユニークかつ斬新なデザイナーをショーケースする<ブライトン・ファッションウィーク>出身のアダム・ローズ(Adam Rose)により、2014年ベルリンで設立された裏ベルリン・ファッションウィークである。当初は小規模なチームでスタートしたBAFWも、現在はスポンサーを確保し、徐々に規模を拡大するなど、その勢いは止まらない。そのなかから、注目すべき5つの点に迫る。

1. 世界最高峰のクラブ<ベルグハイン>が会場

今シーズンの開催にあたり最も注目を集めたのは、<ベルグハイン>が会場に選ばれたことだ。毎週末長蛇の列をなし、エントランス制限も厳しいクラブの聖地でのファッションウィーク開催に、各々の期待が高まった。結果、従来の会場と比べ、音響、映像、ライティングシステムの質が格段に上がり、ベルリンらしいアンダーグラウンド感を見事に演出、まさに申し分のない理想的な会場となった。<ベルグハイン>でのファッションショー開催ということもあり、設備やシステム的な面を視察に来た関係者もいた。今後新たなショー会場として注目されるかもしれない。

2. オープンモデルキャスティングで選ばれたモデル

ショーの3週間前に開催されるオープンモデルキャスティング。条件はあえて「無条件」。全ての体型、年齢、性別、人種が対象であり、常識をくつがえすバラエティ豊かなキャスティングが展開される。ベルリナーたちが彼らの個性をスパイスに、デザイナーのクリエイションをリプレゼントするのだ。こうして生まれるバイブスこそBAFWの醍醐味のひとつである。

3. 海外デザイナーたちの参加

ロンドンやニューヨーク、デンマークやポーランド、南アフリカからセルビアまで、国際色豊かなデザイナーたちが会場を彩る。なかでも注目したいのは、2015年より毎シーズン参加している香港出身のアーティスト兼デザイナーZoie LamによるブランドZL by Zlismだ。オーガナイザーたちからも愛され、毎年熱いラブコールを受けている海外デザイナーの1人である。デザイナーのZoieはBAFWについて、「香港はコマーシャル・ファッションが多いなか、ベルリンにはアーティスト色が強く、自由にクリエイションしているデザイナーが多い。半年に1度、ここでファッションショーをすることで、たくさんの出会いや刺激を受けることができる」と語る。きっと彼女のクリエイションに大きく影響していることは間違いない。

4. 独創的なユートピアを表現したTATA CHRISTIANE

第1回目より毎シーズン参加している、ベルリンが誇るハンドメイドデザイナー。今回のコレクションテーマは「ユートピア」。失望への直面、日々の生活の圧迫から逃れるためには、すべてのクリエイティブ・マインドが集まることが重要である--その想いから生み出された独創的かつ斬新なコレクション1点1点に、来場客は目を奪われた。彼女らしいまるでパズルのような異素材の数々は、まさに原点回帰のコレクションと言えるだろう。しかし、2週間で26スタイリングを制作するという驚異のプロダクションには驚きだ。デザイナー ジュリー・ブルジョワ(Julie Bourgeois)が思うBAFWの魅力とは?「毎シーズン参加したいと思える数少ないファッションイベント。この会場で出会える人々、オーガナイゼーション、モデルたちとの関係性がわたしにとって最も魅力的なこと。ベルリンでショーをする上で最も美しい会場を選び、いつもエネルギーで溢れている、それがBAFWです」。ふと会場を見渡すと、彼女のコレクションを纏って来場した方々を目にした。ベルリンを愛し、ベルリンに愛されるブランドTATA CHRISTIANEの世界観をこの上なく体感できる場こそ、BAFWなのだ。

5. 美しい違和感を纏うMAISON MASON

2016年、BAFWに彗星のごとく現れたベルリンの若手注目株。デザイナーのパトリック・メイソン(Patrick Mason)は、ベルリン・NYを拠点に世界中のストリートファッション&トレンドを紹介するオンラインマガジン『Highsnobiety』2017年の注目すべきインフルエンサーにも選出されるアイコン的存在である。エスニックカルチャーとモダン・ストリートスタイルの融合を得意とする彼の第3作目となる今シーズンのテーマは「BODYDISMORPHIA」。身体醜形障害、醜形恐怖症に着目し、違和感を覚えるルックスと奇形をテーマにコレクションを制作。美しいピンストライプのブレザーに不自然なボリュームのエルボーを加えるなど、あえて魅力的なものに欠陥を与えた10スタイリングを発表した。まるで映画のワンシーンのようなコンテンポラリーダンサーによるパフォーマンスで幕を開け、<ベルグハイン>のレジデンスDJであるRADIO SLAVEのミックスとともにモデルたちが颯爽と現れる。ランウェイを終えたモデルたちは群れをなし、各々踊るその光景は、まさに<ベルグハイン>のフロアを彷彿とさせた。アフロ・アメリカン、ラテン、白人、アジア、アラビアと、人種・性別を超えたキャスティングからも訴えかける、まさに全人類の多様性を祝福すべく生まれたコレクションなのだ。

未完成かつ、不完全なものこそ美しいートレンドにとらわれない挑戦的なクリエイションを続けるエネルギーがBAFWに集まり続けるのだ。

Berlin Alternative Fashion Week (31st March - 1st April 2017) from video.siren on Vimeo.© Berlin Alternative Fashion Week Berlin, 2017

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Credits


All Images by ©Berlin Alternative Fashion Week / Michael Wittig, Berlin 2017
Text Yukiko Yamane