アダム・グリーン:最新作のアートフィルムを語る

元モールディ・ピーチズのメンバー、アダム・グリーンはサイケデリックなアート映画を発表。ハーモニー・コリン、『アラビアンナイト』、ベルボトムといったキーワードが混在するトリップ映画の全貌に迫る。

by Taylor Ford
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19 April 2016, 12:10pm

モルディ・ピーチズの元メンバー、アダム・グリーン(Adam Green)が、あなたを全く新しい世界へと誘う。トリップしたアダムが見た幻覚の宇宙、 "レギュラータウン(Regulartown)"へ!

グリーンの最新プロジェクト『Adam Green's Aladdin』は、超現実的なアートフィルムだ。セットはすべて紙とダンボールで作られ、ダダイズム香るサウンドトラックはすべてオリジナル、そしてニューヨークが誇るクールな人物たちも数多く出演している。『アラビアンナイト』に着想を得て書かれたというストーリーは、グリーン扮するインディーズのロッカーがセルフィ文化の現代を語る寓話になっている。お守りをなくしてしまったアラジンはジーニーから3Dプリンターを授かり、次々に願いを叶えていく—というストーリーだ。『Adam Green's Aladdin』は、文化史からの膨大な参照とアートに溢れているが、きわめてグリーン的な視点を通して、欲望、テクノロジー、そして真の愛を探る作品となっている。

映画はブルックリンにある倉庫で撮影され、30のセットと500を超える小道具が用意された。ナターシャ・リオンによると、この映画は完成までに5年を要したという(グリーンは4年だったと言い張る)。Instagramでアダムをフォローすれば、#adamgreensaladdinでこれまで多くの画像が投稿されてきたことがわかる。ニューヨークはバワリーのギャラリー、The Holeで開催されたこの映画のエキシビション前夜、i-Dはアダムに会いに行った。彼は、サイケデリックやアンディ・ウォーホル、そして「みんなベルボトムをはくべき」理由について話してくれた。

この映画には、どの程度あなたが反映されているのでしょうか? 超現実的な世界観でありながら、Instagram@AverageCabbageであなたを見ると現実に引き戻されるような感覚があります。
いろんな意味で自伝的内容ではある。でも、現実から最もかけ離れた映画だってことを考えると、それもおかしい話だよね。僕はアラジンに惹かれたんだ。その「愛は物質主義に勝る」っていう内容にね。そこで、この古典を現代に置き換えてみた。例えば、プリンセスはカーダシアンに、ランプは3Dプリンターに、といったようにね。その頃僕は、テクノロジーに支配されて、魂が失われていくように感じていたんだ。

この映画は、全編をiPhoneで撮影した前作『The Wrong Ferrari』とは正反対の作品となりましたね。
共通点はあると思うよ。前作は、スマートフォンを手にいれた時の"あの感じ"を表現したくて、だから映画もスマートフォンで撮った。初めてスマートフォンを手にいれた時、まるでビデオゲームの中に生きてるような感じがあって、ずっとその感覚があるんだ。それをアーティストとして理解しようと思った時、ひらめいたんだ。「ゲームのキャラクターみたいな気分だな。自分に別の名前をつけて、テクノロジーのなかで逃げ回ってる。魂も僕自身から離れていく。世界が僕の体から魂を引き離してるんだ。これをソーシャルメディアを通して第三者の視点から検証してみよう」ってね。

いまでは珍しくないiPhoneで映画を撮影するという手法ですが、最初に長編映画を完成させたのはあなたです。そのあなたが今、原始的なやり方に回帰しているわけですが。
そう言ってくれて、本当に嬉しいよ。テクノロジーを語る映画を最もアナログな素材を使って作りたかったんだ。そうすることで人工的な空間での"人の感情"を語ることができると思ってね。
僕は「ドグマ95(1995年、デンマークに生まれたアヴァンギャルド映画運動)」の映画を観て育ったんだ。ラース・フォン・トリアーやハーモニー・コリンの映画をね。小道具やBGMを使っちゃいけない現実感を重視した映画を撮る監督たちだ。そして今、僕は大人になって、正反対の世界観を作ってる。でも映画作りのルールは「ドグマ95」みたいに極端だよ。今回は、"本物"を使わないって決めたんだ。出てくるすべての物は手作りなんだよ。電話、鍵、すべて自分たちで作ったよ。
ファラオが埋葬されるシーンで、葬儀の参列者はそれぞれが持っている所有物をすべてファラオのお墓に入れるんだ。死後の世界で必要になるものということでね。観客を別の次元に引き込むシーンになったと思う。この映画でみんなに「新たな世界に旅した」って感じてもらえたらと願ってるんだ。

カーダシアンの揶揄は、すべてが"リアリティ"として売られる現代への風刺なのでしょうか?
劇中でプリンセスを演じるビップ・リンは、インターネット時代のウォーホルだ。彼女はアイロニックな存在で、プリンセスを演じるには完璧だった。作品自体がセクシーだから彼女みたいな道化キャラが必要だったんだ。すごくホットで絶対に興奮する。冗談じゃないからね!

このプロジェクトは、現代のファクトリー(ウォーホルを中心としたアート集団)だと思いますか? アンディ・ウォーホルやバスキアと共に芸術活動を行なったことでも有名な画家フランチェスコ・クレメンテがジーニー役を演じていますが、起用の経緯を教えてください。
現代版ファクトリーだと思いたいね。クレメンテはまったく知らなかったんだけど、ジーニー役は伝説的な人に演じてもらいたくて。男でも女でもかまわなかった。ただ、ニューヨークのレジェンドに演じてもらいたかったんだ。僕の妻、ヤスミン—ふだんはグーグルの社員だけど、この映画のプロデュースをしてくれた—と電話で話していて、ジーニー役にぴったりだってクレメンテの名前が挙がったんだ。アラジンの妹エミリーを演じたアリア・ショウカットがパフォーマンス公演をしていたことがあって、その会場でクレメンテを見かけて彼がいいと思った。数日後にクレメンテのスタジオで「ジーニー役をやってくれませんか」って頼んだんだ。

アラジンのレコードレーベルが"Zintendo"だったり、セサミストリートのビッグバードが何度も出てきたりと、劇中にはあなたの子ども時代からの引用が沢山見られます。これは懐古的な作品なのでしょうか?
言うたびに馬鹿らしく聞こえるけど、これまで何度かサイケデリックなトリップをしたことがあるんだ。そこで見たものを再現しただけだよ。

アスパラガスの椅子を見たから、映画でアスパラガスの椅子を使ったというわけですか?
うん。キマってたときに見たものをそのまま使ったんだ。ビッグバードはね……すべてが黄色い世界を見たことがあって、黄色を食べられるし、ただただ黄色くて、「こんな風に世界を黄色くしたい。明日やろう」って思ったんだ。(嘔吐する真似をする)。黄色の神である大きな黄色い椅子に座ってみたくて。その感覚を表現するのにビッグバードは手っ取り早かったんだ。

サウンドトラックもその世界から生まれたのでしょうか?
音楽は"ベルボトム"みたいにしたかったんだ。あのサイケデリックなクオリティをどうにかして表現したくて、出演者全員にベルボトムをはかせたよ。誰もベルボトムをはいていないのは、いまの世界に対して人々が不満を抱いているのを象徴しているんだと思う。だって、ベルボトムをはくとグルーヴィーな気分になるでしょ。ベルボトムをはけば、世界はもっと楽しい場所になるよ。
バブルガム・サイケデリアのポップスを作ったよ。Little Joyのロドリゴ・アマランテやウォーペイントのステラ・モズガーワ、デベンドラ・バンハートのバンドメンバーのジョー・スタインベックたちとね。みんな60年代の音楽が好きで、"アシッドでキメた"みたいな70年代的な音をどう出せばいいか、よく知ってる最高の連中なんだ。これがみんなに見せたかった世界だよ。

Credits


Text Taylor Ford
Stills courtesy of the artist
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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