女性が写したガールフッド:写真家オフェリ・ロンドー

女性の視点(female gaze)が持つ力と、世のなかに女性フォトグラファーがもっと必要だという現状について写真家が語る。

by Tish Weinstock
|
12 October 2016, 11:20am

子供の頃、オフェリ・ロンドー(Ophelie Rondeau)は自分が将来何になりたいのかわからずにいた。ならばすべてをやろうと彼女は決めた。15歳のとき、ロンドーは週に一度のラジオ番組の司会をつとめ、そこで友人関係や恋愛に悩むリスナーの相談役をつとめた。毎週、さまざまな町に暮らす人々から、多様なストーリーが寄せられた。16歳のとき、ロンドーは演劇学校に通い始め、演劇の世界をのぞいた。女優というあり方に違和感を覚えたロンドーは、書くという手段を試してみた。19歳でフランスの田舎町からパリへ引っ越し、デビュー作となる小説を書くが、完成から数週間後にパソコンがクラッシュ。未来は白紙へと戻った。次に彼女は、音楽を試してみようとロンドンに移る。22歳のときだった。音楽会社で勤めバンドのインタビューなどを行い、マーチャンダイジングを経験、ツアーに同行し、ゲストリストの管理などの業務をこなす中、ジャーヴィス・コッカーら有名アーティストにも出会った。25歳、彼女は第一子となる長女を出産。その2年後、祖母からカメラをもらったことで転機が訪れる。現在29歳のロンドーは、写真家としてのキャリアを着々と築いている。#ophelieandthegirlsシリーズは、少女らしさと女性の友情を温かい視点で見つめたポートレイト作品。このシリーズで彼女は一躍注目される存在となった。現在ベルリン在住のロンドーは『Mouthful』というプロジェクトを進めている。「若いアーティストたちが作品を発表できる場を」という思いから、彼女が今年中の公開を急いでいるプラットフォームだ。才能を開花し始めているこのフォトグラファーに、女性の視点が持つ大きな力について、そしてこの世には女性フォトグラファーがもっと必要とされている現状について聞いた。

あなたをインスパイアしてやまないヒト・モノは?
すべてがインスピレーションになります。それは私がそのひと、そのものをどう見るかにかかっているんだと思います。なかでも、ベルリン写真美術館のヘルムート・ニュートンの常設コレクション『Private Property』には最近最も影響を受けましたね。今、わたしのすべてに影響していると思います。

あなた自身の美意識・美的感覚について聞かせてください。
わたしの性格や個性が真に表現されたもの。わたしは、連続性とシンメトリーをコンセプトとして作品を作っていて——この世のものすべてがそこに"ある"という状態、その見え方を写真に捉えたい。わたしの作品の世界観をひと言で表すなら「簡素」でしょうか。

あなたにとって「女性の視点」とは?
ほかのあらゆる視点と同じように「女性の視点」は重要だと思います。物の見方も捉え方も、ひとによって違います。だからこそ、すべての視点がおざなりにされることなくきちんと認められるカルチャーの成熟が重要だし、それが実現されれば、ひとびとは自分と違った視点を理解できるようになると思うんです。最近は女性の視点が大きく取り沙汰されていて、女性がヴィジョンを分かち合うことのできるスペースが増えていっている。その現状は素晴らしいことだと思うけれど、視点というのはジェンダーだけじゃなく、世代や血筋、宗教によっても違う。「女性」という枠組みだけではなく、もっと「個」の視点が重視されていけばと願っています。

女性フォトグラファーが増えるべきだと考えるのはなぜですか?
女性以外のジェンダーの人が自身をより深く理解するには、もっと女性フォトグラファーが必要だと思います。「トランスジェンダーのフォトグラファーが増えればそれだけ世界が彼ら彼女らから学べる機会が増える」ということでもあります。つまり私は、個々の多様なフォトグラファーが必要だと考えているんです。女性は「女性」というジェンダーで一括りにされますが、だからといって女性全員が物事を同じように見るわけではありません。

作品はジェンダーによって決定づけられるものだと思いますか?
まったくそうは思いませんね。芸術はジェンダレスであるべきです。仕事のチャンスは、生物学的にも社会的にも根拠なく優劣を決めている"性別"ではなく、能力や長所をベースにして、ジェンダーと関係なく与えられるのが理想ですよね。

カルチャー的な会話のなかで「フェミニズム」が話題に挙がることが多くなっています。なぜだと思いますか?
フェミニズムは昔からあった概念だし、いまようやくそれが盛り上がりを見せているのは素晴らしいことだと思います。しかし同時に、それは数十年にわたり人々が女性の尊厳のために闘ってきたにもかかわらず、その問題は未解決のままだということも意味しています。議論することは大切で、事態の好転につながることも多いわけですが、それが実際の取り組みに勝ることはありません。現在のフェミニズムの問題は「体毛が写っている云々ということばかりに焦点が当てられている」こと。これはソーシャルメディアに端を発している、いわばトレンドでしかありません。今後の世代には、ここから「自分の体を愛してあげる」「その体で、生きたいように生きる」ということを学びとっていってほしい。だけど、他のあらゆるジェンダーと同等の尊厳を与えられた存在であるという実感を私たち女性がたしかに持って、世界をひとつにしたいと私たちの世代が願うならば、いま私たちに影響する問題をより広い視野で見据えて、実際にそれに取り組んでいくべきです。

若いあなただからこそできる、もっとも勇気ある行動とは?
クレージーに聞こえるかもしれないけれど、結局は、自分が一番やりたいことこそ、やるのが一番難しいことなんだと思います。本来はそんなはずないんだけど、実際はそれが一番難しい。両親が子供の未来にかける思いもそこに関係してきますしね。なので、若者として最も勇敢な行動は、自分が進みたい方向へ一歩を踏み出して、その世界で何かを成し遂げるということ——そして両親にも味方をしてもらうことですね。

現在進めているプロジェクトについて教えてください。
『Mouthful』というアートのプラットフォームを構築している最中です。ソーシャルメディアを通してアーティストを発掘したり、彼らとコンタクトを取りながら、わたしがキュレーションをしていくプロジェクトです。10月にはサイトのローンチがあって、その後にベルリンでエキシビションを開催します。まだ世界に取り上げられていないようなトピックをアーティストたちにカジュアルに語ってもらえるプラットフォームになる予定で、公開が楽しみです。アーティストたちが4-5人集まって、特定のトピックを巡って議論ができるような場をオンラインに作りたいとも考えています。

ophelierondeau.com

Credits


Text Tish Weinstock
Photography Ophelie Rondeau
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

Tagged:
girlhood
female photography
ophelie rondeau