究極のティーン映画『ビヨンド・クルーレス』

映画批評のブログ「Ultra Culture」を運営するチャーリー・ラインは、ティーン・ムービーが残した名セリフや功績を知り尽くしている——それもそのはず、彼はティーン・ムービーを題材にした究極のティーン・ムービーを作り出すべく、仲間たちと共に90年代以降のティーン・ムービーをしらみつぶしに観たのだ。

by Francesca Dunn
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19 January 2017, 8:47am

Illustration by Hattie Stewart

ティーン・ムービーのドキュメンタリー映画を撮る--そんなコンセプトを念頭に、映画批評家チャーリー・ライン(Charlie Lyne)とその仲間たちは、『クルーレス』から『ミーン・ガールズ』まで、1995年から2004年のあいだに作られた数百本のティーン・ムービーを片っ端から観てまわった。それから、すべてのシーンを細かく分析し、ティーン・ムービー魅力を解明していった。Summercampのジェレミー・ウォームズリーとエリザベス・サンキーにサウンドトラックを頼んだのは見事だし、映画『ザ・クラフト』で不気味な魅力を放ったフェアルザ・バルクにナレーションを依頼したのもティーン映画ファンとしては脱帽の選択だ。そんな『ビヨンド・クルーレス』がロンドンでプレミア公開され、サウンドトラックはライブで再現された。i-Dは、プレミア上映会を直後に控えたチャーリー、ジェレミー、エリザベスに、学生時代に属していたグループ、大好きなティーン映画のサントラについて聞いた。

『ビヨンド・クルーレス』の発想はどこから?
チャーリー:3年ほど前、ハックニー・ピクチャー・ハウスがティーン映画祭を開催するということで、上映作品のキュレーションを依頼されたんです。そこで、14歳以降観ていなかった懐かしいティーン・ムービーを改めて観てみることにしました。そこにはもちろんノスタルジアや個人的な思い入れもあったから「懐かしい」と感じたわけだけど、一方で、改めて観てみてみると、それまでは気づかなかったことも見えてきて。そこで、この「ティーン・ムービー」というジャンルがいかに軽視されているか、またジャンルとしていかに曖昧な状態にあるかについて考えるようになりました。どうすれば「ティーン・ムービー」の世界をうまく世間にプレゼンテーションできるだろうか、と。

「Kickstarter(クラウドファンディングのサイト)」でのキャンペーンは大きな話題となりましたね。あそこまでの反応が得られると想像していましたか?
チャーリー:ドキュメンタリー映画なので、多額の制作費が必要というわけではありませんでした。だから、資金調達の方法は他にも考えられた。だけど、僕たちは誰も映画制作の経験がなかったから、誰に融資を頼むにしても説得力に欠けたんですよ。それでクラウドファンディングが自然なやり方だなと考えました。企画を見せて、「こんな映画、観たいと思わない?」と人々に問いかける単純な構造ですから。ティーン・ムービーは、誰にでも訴えかけるものがありますしね。ネットには興味をもってくれるひとが沢山いました。

フェアルザ・バルクはどんな経緯でナレーションに?
チャーリー:「フェアルザに声をかけてみるといい」って友人が提案してくれたんです。彼女の声は映画の雰囲気にピッタリで、会ってみたら彼女は性格も最高でしたね。ナレーションを依頼したのはそれから10ヶ月ほど後でした。彼女にはある程度企画がかたまった状態で提案したかったんです。彼女に気に入ってもらえたことは、本当にラッキーでしたね。フェアルザはこのプロジェクトに対してとてもオープンでした。彼女はティーン・ムービーに直接関わってきたひとだし、脚本の段階では"奇妙"にも見えかねないこの映画に関わるのはそれなりのリスクを伴っていたはずなのに。

出来上がった作品は、ドキュメンタリーの域を超えていると感じませんか?
エリザベス:最初は「セルマ・ブレアは今どこに?」「1998年は〇〇な時代だった」みたいな映画なのかと思ったけど、とても美しい出来で感動しました。ドキュメンタリーというよりもアート作品。だけど面白くて、ゴージャスな映画になっていると思う。
チャーリー:それはふたりの貢献によるところが大きいと思うよ。僕たちは、ティーン・ムービーを現実のこととして、捉えたかったんです。まるでティーン・ムービーのなかで暮らしているかのように。この映画で語られる言葉はすべてティーン・ムービーからとられています。映画自体をティーン・ムービーのように作りたかったので、音楽は不可欠な要素でしたね。

映画音楽は、通常の音楽作りとまったく違うプロセスだったのでしょうか?
エリザベス:映画音楽のほうが楽しかった!新鮮に感じましたね。Summercampのファースト・アルバムでも架空の世界を舞台にした曲作りをしていたので、これまで私たちがやってきたことと同じでした。その曲の世界に溶け込んでいけばいくんです。この映画にはレファレンスやモチーフが溢れているでしょう。参照する点がたくさんありましたよ。
ジェレミー:遊び場で子ども達がラップをしていたシーンから音源を拾ってきて、そこにビートを乗せただけなんだけど、「She's All That」のその部分がすごく気に入ってるよ。

サウンドトラックが素晴らしいティーン映画といえば?
エリザベス:『ルールズ・オブ・アトラクション』のサントラはずっと好き。
チャーリー:ロビン・シックが参加してるから?
エリザベス:参加してるの!?
チャーリー:そうだよ。シングルカットもされてアメリカではそれなりにヒットしたんだ。イギリスではそうでもなかったみたいだけど。ベートーヴェンの「交響曲第5番」のディスコ・リミックス「Fifth of Beethoven」に、ロビンが歌をのせていてね。いま改めてあの映画を観てみると、パーティのシーンでその曲が流れていて、まるでふたつの世界がぶつかりあっているみたいなんだ。映画が作られたときは、あの曲を使うって決まってなかったはずだから。なんていうか、時代が重なっているんだよね。
ジェレミー:僕が好きなのは『恋のから騒ぎ』のサントラ。

学校ではどんなグループに属していましたか?
ジェレミー:僕はガリ勉でした。
エリザベス:私はまったく目立たない存在だった。クールなパーティに行って、たくさんの男の子に誘われて「誰に決めたらいいか分からない」って泣く女の子を階段でなだめたりするような女の子だったの。男は誰も見向きもしなかったけど、私はそれでかまわなかった。
チャーリー:僕は、アート好きのグループだったかな。14歳とか15歳から、学校で実験的なアート作品を作っていましたね。だからそういうことをやってる他の生徒と一緒に過ごす時間が多かった。怒りに満ちた表現力溢れるアートを作る『シーズ・オール・ザット』のレイチェル・リー・クックみたいな学生だったと思います。段ボール箱で天井が10フィートもあって、中が僕の心みたいに真っ暗な空間を作ってみたり--そういう学生だったよ。
ジェレミー:僕は『パラサイト』のイライジャ・ウッドかな。

ティーン・ムービーで夢中になった登場人物は?
ジェレミー:『ガール・ネクスト・ドア』のエリシャ・カスバート。
エリザベス:『恋のから騒ぎ』のヒース・レジャーは完璧な男。
チャーリー:フェミニストたちにゴマをするような発言になるけど、僕は昔から「女の子が何かをきっかけに綺麗になっていく」系の映画に登場する女の子の、「綺麗になる前」が好きなんです。もちろん『ミーン・ガールズ』は、観客が綺麗になる前の主役に感情移入するように作られてるわけですけど、そうでない場合でも、綺麗になる前の女の子たちがどれだけ魅力的か......。『プリティ・プリンセス』のアン・ハサウェイや『ハード・キャンディ』のジュディ・グリアは、とんでもなく魅力的ですよ。

beyondclueless.co.uk
@charlielyne

Teenage Kicks, a season of films dedicated to teens on screen, runs at BFI Southbank

Credits


Text Francesca Dunn
Illustration Hattie Stewart
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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