母と私——レナ・ダナムとローリー・シモンズの対話

作品を通して「女性らしさ」「セクシュアリティ」「女性の役割」を模索するアーティストがいる。レナ・ダナムもそんなアーティストのひとりだ。彼女のその視点は、アーティストでもある母親ローリー・シモンズのもとで育った影響も大きいという。ローリーとレナが、政治への情熱と果てなき愛について語り合う。

by Emily Manning
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24 October 2016, 8:10am

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1980年代、アーティストのローリー・シモンズは写真やインスタレーション作品で女性の尊厳を探る視点を模索していただけでなく、仕事場や普段の生活でも男性至上主義の世界との戦いを余儀なくされていた。ニューヨーク州バッファローで中絶手術の必要に迫られた女性を抗議デモ団体が取り囲んだ際、ローリーはWAC(Women's Action Coalition)のメンバーらと共にその場へと駆けつけた。使命感に駆られてバッファローへ向かう母の背中を、娘レナ・ダナムは覚えているという。レナは母に「バッファローウィングを買ってきてくれるなら行ってもいいよ」と言ったそうで、その後帰宅した母はバッファローウィングを手にしていた。「実際にバッファローで買ったのか、それとも近所のお店で適当に買ったのかはわからない」とレナはいう。しかし、WACの活動に没頭していた母から学んだものは、現在のレナにとってかけがえのない宝物となっているようだ。快活で好戦的で、思ったことは口にする母——レナは、間違いなくローリーの愛で育った女性だ。ローリーとレナが、政治に傾ける情熱について、女性が直面する問題について、そしてベビーピンクについて語ってくれた。

レナへの質問です。アーティストを親に持つというのはどんなものでしたか?
レナ:幼い頃から常に「突き詰めること」「クールであること」「ユニークであること」の大切さは感じて育ったわね。クリエイティブな人たちを見ることが私の幼年期のすべてだった——彼らの創造性自体だけじゃなくて、お互いに影響を与え合っているのを見て育ったの。でもなにより、父親の作品と同じだけ世の中にとって重要と評価される作品を生み出すアーティストの母親の元で育ったことは、私にとってとても大きな意味を持っていたと思うわ。
ローリー:私はあなたが「スタジオに人形やらおもちゃがたくさんあるから、アーティストの母親を持つって最高」と思っているんだとばかり思っていたわ。そんなことを考えていたなんて思いもしなかった。
レナ:私はお母さんがコミュニティの一員として生きているんだっていう認識があったわよ。「お母さんは工作の宿題を一緒にやったりしてくれた?」ってよく訊かれるけど、マカロニと糊を手にいつでも私の宿題を手伝ってくれるようなタイプの母親ではなかったの。
ローリー:今まさに「よくマカロニを糊でくっつけたわね」って言おうとしていたところなのに!あなたはとにかく家でクリエイティブに遊んでいたわね。内心では「他の子供たちは外に出てスポーツに勤しんでいるのに、この子はずっとうちの中でものづくりをしていて……育て方として間違っていないか」と心配でもあったの。
レナ:大丈夫、もともと体を動かすのは好きじゃなかったし。
ローリー:だからそれが良くないって言ってるのよ!

クリエイティブな家庭環境だからこその苦悩などはありましたか?
ローリー:アーティストは、クリエイティブな意味でも経済的な意味でも波があるでしょう?大変なときも少なからずあったけど、それを子供たちにきちんと見せたほうがいいと思ったの。今は、クリエイティブな人生を選ぶことの厳しさをあのときに見せておいてよかったと思ってる。やりたいことをやっていく——生きたいように生きると決めたら、苦労は避けられないものだから。
レナ:お母さんとお父さんが毎日スタジオに行くのを見て「インスパイアされた時でもなんでもない時でも、書くと決めたら毎日書いて、演劇を試すと決めたら毎日練習して、クリエイティブに考えられるよう自分自身で仕向けていかなきゃならないんだ」って学んだわ。両親はアイデアが湧かないなんて言い訳は通用しない、どんなことがあろうとスキルを使ってものづくりをしていかなきゃならない状況にいたわけだから。
ローリー:うまくいっていようといまいと、新しいものを作り上げてそこに興奮をおぼえている母親を見て育った娘たちがいるという事実は、何かしらポジティブなメッセージになりうるんじゃないかと私は考えているの。
レナ:お母さんは作品制作にも関わらせてくれたわ。スタジオで遊ぶのも許してくれたし、撮影しているのも見せてくれたよね。ハムスターを連れていくのも許してくれて。
ローリー:スタジオにはいろんな動物がいたわね。それがとても心地よかったかと言われたらそうでもなかったけど。

おふたりの作品のあいだには、どの程度の関連性があるのでしょうか?
レナ:わたしの美的感覚は、お母さんから大きな影響を受けているわよ。色の使い方やフレーミング、扱うテーマ——お母さんが魅力的だと感じたものすべてが私の作品に詰まってる。お母さんも「フェミニニティ」「家庭生活」「女性としての役割」をテーマとして扱ってきているでしょう。ベビーピンクやアンゴラ、50年代調のもの、変な顔をした人形は共通の好みよね。
ローリー:『ガールズ』を見ると嬉しくて。私の作品の影響なんじゃないかと思うイメージがたくさん出てくるの。あなたがそう私にシグナルを送ってるんじゃないかと思うときがあるわ。
レナ:俳優がバスタブに入るシーンや、窓越しに誰かを撮るシーンは全部そうよ。お母さんの作品はずっと大好きだったもの。「そんなに自分の政治的発言に自信を持てるのはなぜか」って訊かれることがあるんだけど、そういうときは「政治的信条、特に女性の尊厳に関することは遠慮せずに発言する母親のもとで育ったから」って答えるの。そういう以外に世界に対する接し方を知らないのよ。
ローリー:私が積極的に発言をしていたのは、ソーシャルメディアが生まれる前の時代の話だけどね。あなたには、自分の信条やアイデアを爆発的に伝える能力がある。それには敬服してるわよ。私たちは似ているところがたくさんあるけど、あなたは私と違ってやり方が優しいわよね。若い頃の私は時代の必然性もあって、もっと好戦的だった。当時は当たり前だと思っていた戦いが、実は誇るべきものだったんだとあなたは気づかせてくれてとても嬉しいわ。
レナ:お母さんの影響は本当に大きいの。パーティの開き方ひとつとってもそう。なかでも一番意味を持っているのは、辛い体験から立ち直る能力だと思う。
ローリー:回復力ってこと?
レナ:そう。素晴らしいキャリアを築くことができて本当にラッキーだけど、そこには辛く苦しい経験もたくさんあったのよ。でも、否定され続けても「ビクともしない」って精神を忘れないでいられた——これって、お母さんそのものでしょう?
ローリー:否定されることなしに何かを成し遂げることができるなんて嘘なのよ。でも、私が何度倒れても起き上がれるのは、あなたとグレース(レナの妹)がいるからよ。

これまで言ったことはないけど、実はお互いに憧れてきた部分などあれば教えてください。
レナ:勝手に洋服を拝借し続けてきたからもう気づいているかもしれないけど、お母さんは素晴らしいファッションスタイルを持った女性だと思うわ。
ローリー:ありがとう!誰も私の服なんか気にしてないと思っていたから嬉しいわ。私は、アクティビズムに熱心な娘たちを誇りに思ってる。これまであなたたちに面と向かっては言ってこなかったことね。よく人から訊かれるの、「セレブで、テレビ番組を持っていて、そのうえたくさんの賞を受賞している娘を持つってどう?」って。私は、娘であるあなたとグレースには社会の模範になるような大人に育ってほしいとずっと思い続けてきた——私がひととして大切だと思うことを同じく大切にできる大人になってほしいって。あなたの政治的な活動、女性が直面する問題への関心——今のあなたという存在は、本当に素晴らしい。

全米で大ベストセラーになったレナ・ダナムの初エッセイ集『ありがちな女じゃない』(山崎まどか訳)は河出書房新社から発売中。

Credits


Text Emily Manning
Photography Stef Mitchell
Hair Blake Erik at Jed Root. Make-up Alice Lane at The Wall Group using Chanel. Photography assistance Victor Prieto. Production Georgina Koren.
Lena Dunham and Laurie Simmons wear all clothing model's own.
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

Tagged:
feminism
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