仁村紗和:会話し向き合あうことで勝ち取った今

ノンシャランで、不思議な魅力を放つ仁村紗和。女優として飛躍の年を迎えた彼女の、クリエイションに対する熱き想いを尋ねた。

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18 October 2017, 4:37am

いまから3年ほど前、モデル業をするために大阪から上京し、芸能界デビューを果たした22歳の仁村紗和。以来、いくつものCMやミュージック・ビデオに出演、2016年9月より公開された東急電鉄の広告で一気にブレイクしたのも記憶に新しい。印象的な太めの眉と、屈託のない人柄から放たれるナチュラルな魅力から「あの子は誰?」とたちまち注目の的に。現在ではドラマに映画、舞台まで幅広く出演し、女優としてのキャリアも順風満帆だ。演技は独学で学んだと話す彼女にとって、演じることの喜びとは?

「今年のはじめ『相棒15 元旦スペシャル 帰還』に出演した際、主演の水谷豊さんから細かな芝居の仕方について教えていただいたんです。水谷さんは、カメラの画角を全方位的に把握された上で、効果的な演出を考慮したお芝居をされるんですね。そのとき"背中での表現"について指南してもらったんです。揺れる水を眺める目線や、背中で語る方法など、ちょっとした所作で観る人に感情を伝えることができる。同時に、その動作ひとつでまったく違う印象を与えることができるというのも、演技の面白さですよね。『いまの良かったよ!』と褒めてもらえたときは自信につながりました」

映像だけでなく、今年4月にはギリシャ悲劇『エレクトラ』の舞台にも挑戦し、高畑充希や村上虹郎らと共演。本作は、娘が父親へ強い独占欲を抱き、母親に熱い対抗心を燃やす状態を指す、"エレクトラコンプレックス"という言葉の語源にもなった強烈な内容の古典演劇だ。仁村はそこで、姉役の高畑を諭す妹クリュソテミスとして、毅然とした態度を貫き通す難しい役どころをやり遂げた。「実のところ、上半期は舞台のことで頭がいっぱいになるほど演技的な苦労は多かったですね。古代ギリシアの生活を想像しながら役をまっとうしなくてはならなかったのが、最大の障壁だったんです。それには、若手3人が『この映画は古代ギリシアがテーマだったから参考になるかも』など、常日頃からラインで情報交換をして助け合うことができたので、なんとか乗り越えることができました。また、セリフの背後に隠れた心の機微をキャスト全員でディベートする時間が多かったので、それぞれの解釈を共有し多角的に役を分析することができたんです。それで、演技に厚みを持たせることができましたね」

こうした現場ごとに学んでいくというスタイルで着々と歩みを進めてきた彼女は、毎年注目の有名人が起用される、集英社『ナツイチ』のCMにも大抜擢。また、フジテレビのドラマ『明日もきっと君に恋をする。』では主演の座を手にした。年内にはさらに3本ドラマの撮影を控え、来年1月には広瀬アリスらと共演する映画『巫女っちゃけん。』の公開も予定されている。そんな映像の仕事の合間にモデル業も行い、多忙な日々を送っている。しかし、決して"こなす"ことはせず、一球ごとにじっくり真摯に向き合う、それが彼女のやり方だ。今回のファッション撮影でも、積極的にフォトグラファーとコミュニケーションをとる姿が印象的だった。

「写真でも映像でも、自分の知らない表情を引き出してくれる人は心の距離が近いことが多いので、クリエイションをする上で会話を交わすことは常に意識しています。友人に撮り手が多いということもあって、私も最近趣味でカメラを手にするようになったんです。自分で撮ってみても、やっぱり親しい人はいい表情を見せてくれるから、双方で話そうって思うようになりましたね。舞台で共演した虹郎くんも同じ趣味で、お互いを撮り合う仲なんですよ」サムライやオートボーイといったフィルムカメラを愛用し、サラ・ムーンやデヴィッド・ハミルトンのダークで繊細な世界観に惹かれるという。プライベートでもクリエイティブな活動に傾倒している彼女は、自由な表現が受け入れにくくなっている時代について、強い疑問をもっているようだ。過去に賛否両論ある作品に出演し批判を受け、本人を中傷するメッセージが直接届いたこともあるというが、落ち着いたトーンは変わらずにその心の内を語ってくれた。

「どんどんクリエイションが一辺倒になっていて、とても残念に感じています。人それぞれの解釈があるのももちろん理解していますが、それを気にしすぎては面白いものは生み出せなくなってしまいますよね。いまの映画業界は、大きな制作会社のオリジナル作品が通りにくくなっていますが、それならばインディペンデントでやるのもいいよね、と映像作家や脚本家を目指す友人たちと話しています。こうした状況にただ落胆するのではなく、創作のモチベーションに転換して同世代で夢を語り合える瞬間は本当にドキドキするし、実現することができたら、まさにクリエイションの喜びです。だから、いち早く彼らと仕事をするためにも、目の前にあるものを確実に打ち返していくことが近道だと信じています。いまも映画のお仕事をさせていただいていますが、将来的には映画女優になって、語学を身に付けてグローバルな活動も視野に入れたいですね」

丁寧に言葉を選び、臆せず明確に自分の考えを伝える仁村紗和。そうした聡明な魅力も相まって、今後さらに幅のある女優として活躍の場を広げていくだろう。

Credit


Photography Tak Sugita
Styling Masataka Hattori
Text Ayana Takeuchi
Hair And Make-Up Yuko Aika.
Styling Assistance Haruna Aka, Yu Araki.

Sawa Wears All Clothing Louis Vuitton.