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岡山天音インタビュー:自分の可能性を信じること

TOMOKO OGAWA

作品の役柄に寄り添いながらも、確実に鮮明な印象を残してきた23 歳の俳優・岡山天音。デビューから8 年。映画、ドラマ、CM で引っ張りだこの彼は、役を取り巻く世界を楽しんでいる。

岡山天音が役者の道へ入ったきっかけは、NHKでおなじみの教育ドラマ『中学生日記』だったという。もともと目指していたのは、漫画家。近所の古本屋で漫画を買っては、家で読むのが日課だった15歳の頃、ファンだったという『中学生日記』の全国オーディションの開催を知る。落ちることはあまり考えてはいなかった。「なんで好きだったかは考えたことないですけど、いろんな中学生を見るのが楽しかったんだと思います。ずっと東京で育って、学校の知り合いくらいしかいない狭い社会の中で、会ったことはないけど、どこかにこういう顔をした人がいる、こういう喋り方をする人がいるんだなっていうのが面白かったのかもしれない」晴れてオーディションに合格した岡山は、「15歳、漫画家志望の中学生・岡山天音」として出演を果たす。このたった3週間の体験が、彼の人生を変えた。

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「夏休みに名古屋で撮影したんですけど、15年間で一番楽しい時間だった。非日常だったし、全部が新鮮でした。それで演技をやってみたいと思って、事務所のオーディションを受けて、そうしたらすぐ決まった。でも、やってみたらキツかったですね。とんでもないところに入ってしまった!と。仕事としてやるという一線を越えたときに、すごく窮屈になってしまって。何かに責任を負うこともそれまではなかったので、緊張して身動きとれない状態がずっと続いていました」ただ楽しいという衝動から入った芝居の世界で、頭で理解はできても技術が追いつかずに悔しい思いをする日々が何年も続いた。転機となったのは、20歳で主演を務めた短編映画『チキンズダイナマイト』(2014)の飯塚俊光監督との出会いだった。自作の詩を朗読し、聴く人の心をどれだけ揺さぶるかを競い合う「詩のボクシング」をテーマにした青春映画『ポエトリーエンジェル』(2017)にて、ふたりは再びタッグを組むことになる。

「飯塚さんとはお互いキャリアが浅いなかで出会って、最初は僕も勝手に追い詰められていたし、監督も余裕がなかったと思う。でも『ポエトリーエンジェル』ですごく話すようになって、監督と役者という括りではなく一緒に作っている感覚がすごくありました。これまで自分が体験してきた監督と役者の距離感は、限界値じゃなかったんだなと。もっと向き合い方は詰められるというか、違う関係性が築けるんだということを飯塚さんとの作品を経て発見しました」

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2017年は、映画7本にドラマ7本に出演。KDDI auのCMでも愛すべき弟キャラとしての印象を強くお茶の間に残し、NHK朝ドラ『ひよっこ』ではヒロイン・みね子が暮らす「あかね荘」の住人、漫画家の新田啓輔という個性的な役を好演し……と活躍を見せるが、本人曰く、何かが劇的に変わった感覚はないという。「始めたばかりの頃は、オーディションに行っては落ちまくっていましたし、受かることも考えてなかった。途中で、受かるために行ってるんだと思い出すくらい(笑)。そのときに比べるとさすがに状況は変わりましたけど、年齢や価値観も変わってきているので、以前と今を横並びにして考えることはできないですね」

作品の中で岡山が演じる役はとにかく幅広い。妄想癖のある青年、引きこもり、ゆとり代表、爽やかな大学生、年上妻を持つ若手社長と、学生からフリーター、社会人まで様々だ。世間から「次世代の名バイプレイヤー」などと呼ばれていることに対しては「特に何とも思わないです」とさらりと笑う。「以前からそんな風に言われてたんです。だから、新鮮味がないのかもしれない。僕は特にバイプレイヤーになりたいわけでもないですし。でも、最近はいろんな役をもらうことが多いので、物理的にスケジュールが詰まってきていますが」

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ドラマ、映画と多数の役柄を同時にやる上で心がけているのは、つらい状況でも楽しむ方向へと意識を転換することだそう。「現場にいるのが楽しい作品もあれば、自分の人生に返ってくるものがあって楽しいものもあるし、作品や役柄によって面白さがまったく違いますね。自分から台本にないアイデアを出して足し算の芝居を仕掛けていくのが面白いときもありますし、その逆でどれだけこの役柄の元々ある役割をまっとうできるのかという部分に面白さを感じることもあります。目標にしているのは、残っていく映画を作りたいということなんで。今、僕らが古典を観返すようにずっと観てもらえるものを」プライベートで物心つく前から変わらず続けているのは、絵を描くこと。エゴン・シーレ、ミュシャなどアール・ヌーヴォー作家のドローイングが好きだという。最近のオフは、何も考えずリサーチもせずに友達と旅行に出かけるのが楽しいと話す。最後に、自分の人生を楽しくするための信条について訊いてみた。

「自分の可能性を信じるってことですかね。年齢を重ねると自分の身の丈がわかってくるから、まだ可能性や未知なことがあるってことを忘れていくような感覚があると思うんですけど、なくなっていく自信をそれでもどうにか保ち続けることですかね。僕は、またこれができていない、という悔しさがずっとあるので、今日はできなかったけど、明日は……って。それでまた明日もできなかったら、また明日は(笑)と。へし折られて自分の可能性が信じられなくなってしまうと日常がどんどんつまらなくなって絶対進化できないと思うので、ポジティブなエネルギーみたいなものをどんどん蓄えていくことですね。そういうポジティブな強い意志を持っている人は格好いいなと思いますし、そうあることを一応目指してはいます。でも、なんだかんだ言ってまだまだですね(笑)」

Credit


Photography Yuichi Akagi
Styling Hayato Takada
Text Tomoko Ogawa
Hair And Make-Up Yuka Fujigaki
Photography Assistance Hidetoshi Narita