エル・ファニングのファッション変遷
RodarteのグラディエータードレスからLoeweのエッグシューズまで、エル・ファニングの意外にアバンギャルドなレッドカーペットスタイルをプレイバック。
Photos by Gisela Schober/Getty Images; Stephane Cardinale - Corbis via Getty Images; Frazer Harrison/Getty Images
エル・ファニングは、レッドカーペットでの冒険を恐れない。2010年、ソフィア・コッポラ監督『SOMEWHERE』でブレイクして以来、ワクワクするような実験的なルックで、カンヌからベルリンまで世界各地の映画祭のレッドカーペットを華やかに彩ってきた。全身プレタポルテやオートクチュールに身を包んだ彼女を思い浮かべてみてほしい。特に印象的なのは、Rodarteのグラディエータードレス、Miu Miuのスーツ、Vivienne Westwoodのコルセット、Loeweのエッグヒール、Diorのアイコニックな〈ニュールック〉だ。
幼い頃から自身も認めるファッション好きだったエルは、スタイリストのサマンサ・マクミレンとともに、確かな目と遊び心をもってデザインに対する尊敬の念を深めてきた。そして何よりも、エルのファッションセンスは楽しさと新鮮な息吹に満ちている。今回はエルのベストルックを振り返りながら、10代のスターからレッドカーペットのトレンドセッターへと成長を遂げるまでのファッション変遷を追う。

2010年 『SOMEWHERE』ニューヨークプレミア
わずか2歳で演技の仕事を始めたエル・ファニングは、姉のダコタ・ファニングとともに出演した2001年の映画『アイ・アム・サム』で女優デビューを飾る。それから約10年、エルはソフィア・コッポラ監督『SOMEWHERE』の主役でブレイク。NYプレミアではRodarte 2011年春夏コレクションのランウェイルックをそのまま着用し、いかにもコッポラ作品のヒロインらしい着こなしを披露した。
2019年のローラ&ケイト・マレヴィとの対談で、エルは前述のルックを振り返り、次のように語っている。「たしか13歳になったばかりで、本格的なドレスアップをしたのはこれが初めてだった。このドレスを着た自分をスケッチして、ふたりにプレゼントしたのを覚えてる。わたしのファッションセンスは昔からかなり奇抜で、学校ではよく服装をからかわれていた。でも、このRodarteを着たら、すごくリラックスできたの」
それ以来、Rodarteはエルのレッドカーペットの定番ブランドのひとつとなた。2012年の放送映画批評家協会賞授賞式にもRodarteのゴッホ・ドレスで出席し、最近では2020年のベルリン国際映画祭でも同ブランドの花柄ドレスを着用している。

2012年 『ジンジャーの朝 さよならわたしが愛した世界』プレミア
エルは、究極のMiu Miuガールでもある。2010年代前半から、コレクションのキャンペーンやショー出演、華やかなレッドカーペットルックまで、Pradaの奇抜な妹分であるこのブランドと多岐にわたるコラボレーションを果たしてきた。メットガラではMiu Miuのアイシーブルーのドレス、ドーヴィル・アメリカ映画祭ではこの目の眩むようなドレス、さらにカンヌでは同ブランドのムームーも着用した。上の写真は、彼女が初めてMiu Miuのキャンペーンモデルを務める2年前、すべての始まりとなったルック。2012年秋冬コレクションの70年代インスパイアのパンツスーツだ。

2014年 『マレフィセント』公開記念パーティー
2014年、エルは『眠れる森の美女』の前日譚『マレフィセント』でアンジェリーナ・ジョリーと共演。本作のプレスツアーでは自身が演じたオーロラ姫にオマージュを捧げ、エルはAlexander McQueenのシフォンドレスや上の写真のGeorges Hobeikaの刺繍ドレスなど、まさにディズニープリンセスらしいドレスを着用した。この『マレフィセント』期以来、優美なロングドレスと花冠は、エルのレッドカーペットでの定番アイテムとなる。その最たる例が、カンヌで着用したZuhair Muradのコルセットドレスや、『ネオン・デーモン』プレミアの繊細な銀細工の施されたElie Saabのドレスだ。

2016年 カンヌ国際映画祭『ネオン・デーモン』フォトコール
『マレフィセント』の2年後に公開された『ネオン・デーモン』のプロモーション期間中、エルのプレスツアーのワードローブは、再びコンセプチュアルになっていく。このニコラス・ウィンディング・レフン監督によるファッション・ホラー映画は、エル演じる田舎出身のモデル、ジェシーが、ロサンゼルスの過酷なファッション業界で徐々に転落していく姿を描く。ローマ、パリ、カンヌのプレミアやフォトコールで、エルは周囲の視線を釘付けにするミニドレスやシンプルなスパンコールルックで、本作のヒロインの二面性を表現した。

2017年 Instyleアワード
エル・ファニングも、2010年後半のヴィンテージVersaceブームに一役買っていた。それはキム・カーダシアンやデュア・リパが、このイタリアブランドのヴィンテージアイテムを取り入れたルックを披露する何年も前の話だ。エルは同ブランド2018年春夏コレクションのヴィンテージインスパイアなドレスでInstyleアワードに出席。厳密にはヴィンテージとは言えないが、ジャンニ・ヴェルサーチによる1991年春夏コレクションのデザインを再現したアイテムで、ドナテラが兄の没後20年を記念して制作したドレスだ。

2018年 ベルリン国際映画祭
ふわっとしたチュールドレスから優美なAラインのミニドレスまで、エルの初期のValentinoルックは、10代のスターにぴったりな、スイートでかわいらしいアイテムが多かった。しかし2018年、彼女はより洗練された、指向性のあるルックへと移行する。繊細なレースや刺繍は卒業し、彫刻的なシルエットとはっきりした色合い、さらにそれらを結びつけるリボンが目を引くスタイルだ。

2019年 メットガラ
2019年のメットガラのテーマについて訊かれたエルは、「キャンプというのは、誇張表現や遊び心がすべて」と『Vogue』のインタビューに語った。エルが解釈するキャンプは、Miu Miuのシフォンのケープと、Coors Liteのボトルやマクドナルドのハンバーガーといったキッチュなチャームのついたネイルで表現する〈マリブ・バービー〉だ。エル自身によれば、このルックは80年代にチャームをコレクションしていた母親から着想を得たものだという。

2019年 カンヌ国際映画祭
2019年、エルは史上最年少でカンヌ国際映画祭の審査員に任命される。大役を任されたエルは、カンヌのすべてのプレミアに出席し、そこで多様なレッドカーペットルックを披露。古き良きハリウッドに着想を得たルックで、過去のスターたちにオマージュを捧げた。それがこのヴェロニカ・レイク風の胸元が大きく開いたGucciのサテンドレスや、ヘディ・ラマー風のシフォンケープ、そして1950年代半ばのDiorの〈ニュールック〉インスパイアの、当時一世を風靡したこのドレスだ。
2021年 インディペンデント・スピリット賞
2020年、Huluの〈アンチ・ヒストリー〉コメディドラマ『THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~』で主役エカチェリーナ2世に抜擢されたエルは、小さなスクリーンでそのスターパワーを発揮した。この役でノミネートされた翌年のインディペンデント・スピリット賞で、エルは「エカチェリーナ2世のパールへの愛にインスパイアされた」Vivienne Westwoodのドレスを着用。「みんなも知ってる通り、コルセットといえばWestwoodでしょ!」とInstagramに投稿した。このVivienne Westwoodのコルセットがエルの大のお気に入りなのは、誰の目にも明らかだ。カンヌで二度も着用しただけでなく、深夜のトークショーでも、『THE GREAT』最新シーズンのプロモーションでも着用した。

2021年 LACMA アート+フィルムガラ
エルはこれまでにもGucciを着用していたが、こんなルックは初めてだった。2019年、彼女は『マレフィセント2』のプレミアで、このイタリアブランドのエレガントなドレスを着用。指を針で刺す象徴的なシーンを花びらやリボンなどの装飾で表現した軽やかなドレスは、エルが演じたディズニープリンセスへオマージュを捧げてデザインされたものだ。しかし2021年、エルはオーロラ姫というよりもマレフィセントに近い、同ブランドのブラックのシフォンドレスに身を包んでLACMA アート+フィルムガラに参加した。

2021年 InStyleアワード
LoeweのエッグヒールからBalmainの巨大なチェーンのクロップトップまで、エル・ファニングの『THE GREAT』プレスツアーは、楽しくちょっぴりシュールなレッドカーペットルックの連続だった。上の写真はInStyleアワードでやはりシュールなルックを披露したエル。長らく彼女のスタイリストを務めるサマンサ・マクミレンは、このルックでスタイリスト・オブ・ザ・イヤーを受賞した。「サマンサ・マクミレンは毎日私のスタイリスト・オブ・ザ・イヤー!」とエルはInstagramで受賞を祝った。この先もワクワクするようなルックが期待できるだろう。
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