Photography Fumi Homma

『セックス・エデュケーション』主演エイサ・バターフィールドが明かす、地元の学校に通い続ける理由

話題沸騰中のNetflixドラマ『セックス・エデュケーション』の主演スター、エイサ・バターフィールドがシーズン2、セレブの世界、ハリウッドとの距離感について語る。「セレブカルチャーとか、それを持て囃す風潮は好きじゃない。だからいつもちょっと居心地が悪い」

by Douglas Greenwood; translated by Nozomi Otaki
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25 February 2020, 6:05am

Photography Fumi Homma

22歳のエイサ・バターフィールドには、観客をホッとさせるような親近感がある。彼の13年にわたるキャリアを考えれば、それも当然だろう。

ホロコーストを描いた2008年の映画『縞模様のパジャマの少年』でフェンスを乗り越え、私たちの心を引き裂いたネズミ色の髪の少年。マーティン・スコセッシ監督『ヒューゴの不思議な発明』の幼いけれど勇敢な主人公。SF大作『エンダーのゲーム』の聡明な主役サリー・ホーキンスも出演した、過小評価されている名作『僕と世界の方程式』の天才数学少年。数々の作品で主役を演じてきた彼は、少なくともスクリーン上では、英国の典型的な〈負け犬ヒーロー〉だ。

「ヒーローって何だろう?」。1月のどんよりとしたある日、ロンドンのホテルの一室で、エイサは問いかけた。

「マッチョで力強い男っていう典型的なイメージは完全に変わった。もう誰もそんなイメージは持たない。今はもっと幅が広がったんだ。僕自身も幅広い役をこなせるといいんだけど、ちょっと不器用な役を演じるのが得意みたい」。すなわち、私たちの愛する謙虚なヒーローだ。「それがしっくり来るんだ」

Asa Butterfield for i-D January 2020 Sex Education Netflix

しかし、〈しっくり来る〉役ではないからといって、彼が興味深い作品を選ばないわけではない。Netflixの青春ドラマ『セックス・エデュケーション』は、これまでの彼のキャリアにおける最大の挑戦だった。

エイサが演じる主人公のオーティスは、一筋縄ではいかない性格の高校生。ジリアン・アンダーソン演じるセックスセラピストの母親ジーンから、自然とセックスにまつわるノウハウを身につけているオーティス。しかし、母親からの賢明なアドバイスにもかかわらず、なぜかうまく機能しない男性ホルモンやオーガズムに悩みを抱えている。

当初はムーアデール高校で存在感の薄かったオーティスだが、校長の息子(立派なイチモツを持っているが、オーティスと同じように絶頂に達せないという悩みを抱えている)が課題のために彼の家を訪れ、彼の母親の職業を知ってしまったことで、大きな転機が訪れる。

学校中をうわさが駆け巡った結果、オーティスは突然、全校生徒がこっそり性を悩みを打ち明ける相談役になる……。『セックス・エデュケーション』は優しさに満ちているが感傷的すぎず、スマートだがわざとらしさはない作品だ。

「シーズン1が終わったあとは手応えを感じた」とエイサは疲れた目であくびをこぼしながらも、はきはきと語った(昨夜遅かったんだ、と彼は謝罪した)。「撮影が終わったとき、この作品はきっと成功する、話題になる、っていう自信があった。この作品が提示するトピックはかなり画期的だから。でも、世界中からここまでポジティブな反応をもらえるのは予想外だった」

オーディエンスの好奇心と、思わず夢中になってしまう脚本の化学反応によって、シーズン1はスマッシュヒットを記録。Netflixでの公開後1ヶ月で、視聴者数は4000万人にのぼった。そして、シーズン2でキャストたちが再び帰ってきた。

ネタバレは避けるが、シーズン1の最終話を観たひとなら、それと同じくらい衝撃的なシーズン2の幕開けにワクワクしたはずだ。エイサは、このやや気まずいシーン(彼の共演者たちにとっては慣れっこだが)のために準備を重ねてきた。

「シリーズもののキャラクターを演じたのは今回が初めてだったから、作戦を立ててからシーズン2の撮影に入ったんだ」と彼は得意げに笑う。「だから1回目よりは心の準備ができてた。セットも周りのひとたちも同じだから、サマーキャンプに戻ってきたみたいな感じだった」

Asa Butterfield Sex Education Actor Interview i-D January 2020

本作はアップビートで先の読めない展開を繰り広げながらも、ある貴重な要素を大切にしている。それはセックスの意味、性的嗜好、恥ずかしいハプニングを描くだけでなく、それらと誠実に向き合うことだ。視聴者にとって意義深い作品を楽しむエイサのような俳優にとっては、またとない贈り物のようなドラマだ。

「特定のコミュニティやグループのひとたちにこれほど大きな影響を与えるなんて、想像もしてなかった」。本作でいちばん驚いたことを尋ねると、エイサは笑顔を浮かべてこう答えた。「改めて観返してみたら納得したよ。だってこの作品では、社会から追いやられた多くのグループに声が与えられてるし、彼らの姿がしっかりと描かれてる。すばらしいことだよ」

『セックス・エデュケーション』のもうひとつのすばらしい点は、シーズン1の軸となるストレートの白人青年オーティスと、快活で魅力溢れるンクーティ・ガトワ演じる、彼の親友のゲイの黒人青年エリックの友情が、特に詳細を明らかにすることなく描かれていることだ。核心を突きながらも押し付けがましくない、本作の脚本はそんな絶妙なバランスを保っている。本作は、オファーされる作品の力に関する彼の考えかたにも影響を与えたのでは、と私は尋ねた。

「ありがたいことに今は作品を選べる立場にあるから、本当に気に入らなければ断るようにしてる。自分がつくるものには情熱を持ちたいから。この脚本は、読んだ瞬間によく練られているとわかった。いろんな脚本を読んでいれば、良いものと悪いものの見分けがつくようになる」と彼は肩をすくめる。「だから、確かにそうかもね。この作品の脚本を読むのは本当に楽しかった」

作品を吟味し、共感できないものについては出演を断る立場にあるということは、正真正銘のセレブに近づいた証でもあるが、そんな肩書きはエイサにはふさわしくない。彼はこの業界の派手な副産物のことなど一切考えずに、映画やドラマ制作のプロセスそのものを楽しんでいるようにみえる。街で会うひとびとの反応は変わったのだろうか。

「みんなすごく良くしてくれるし、優しい言葉もかけてくれる。作品の感想を聞くのも楽しい」と彼は明言する。「でも、セレブカルチャーとか、それを持て囃す風潮は好きじゃない。だからいつもちょっと居心地が悪いんだ。俳優との、まあ俳優に限らないけど、誰かとの関係っていうのは……」と彼は言葉を詰まらせた。「とにかく変なんだ。変な関係。僕はそういうもののために演じてるわけじゃない」

Asa Butterfield i-D January 2020 Sex Education Actor Netflix

多くの英国の若者にとって、ハリウッドの魅力は今もなお健在だが、エイサはロンドンに残ることを選んだ。彼は多くの俳優仲間と違ってホームスクーリングは選ばず、ロンドンの学校に通い、普通の感覚を失わずにいたいと願っている。

「もしLAに住んでたら、生活はまったく違ったと思う」と彼はいう。「LAはめちゃくちゃな街だから、若い俳優なら業界について自分なりの考えを持ったりとか、何を期待されているかを考えなくちゃいけない。みんなが次の大物を目指してる。でも、ロンドンではそんなことは誰もあまり気にしてない」

反感を買うことも少ないですよね、と私は付け加えた。「それにLAはエンタメ業界を中心に成り立ってる」と彼は指摘する。「演じることは大好きだけど、仕事をしていないときまで演技のことは考えたくない。何もかもが業界中心で回ってる場所に住むなんて、想像もできない」

『セックス・エデュケーション』の現場は、エイサにとって俳優と脚本家双方向の関係が成り立つ、安全な場所だったようだ。「彼らは僕たちを信頼してくれてる」と彼は断言する。

「ロウリー(・ナン:鋭い観察眼を持つ本作の有能な脚本家)はすばらしくて、ユースカルチャーや若者の言葉をよく理解してる。シーズン2には、シーズン1で僕たちが話したことが取り入れられてた。会話の内容とかリズムとか。それがシーズン2の脚本に採用されたんだ」

今のところ、エイサは優しい煌めきに満ちたキャリアを突き進んでいるようだ。彼は小さなことに思い悩むことなく、今この瞬間に集中している。将来についてはあまり考えていないという。「計画を立てるのは、長くても1年先くらいまで」と彼は笑う。「あとは風の吹くままに任せるんだ」

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This article originally appeared on i-D UK.

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