小袋成彬「我々が価値観をアップデートさせていきましょう」【離れても連帯Q&A】

シルバー民主主義や若者人口の少なさーーこれまで日本に絶望を感じていたミュージシャンの​小袋成彬​​はしかし、コロナ危機をきっかけに希望を見出しはじめているという。「新しい価値観」による変革へ。〈離れても連帯〉シリーズ第29弾。

by Nariaki Obukuro
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30 April 2020, 4:54am

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大によって、日本ではいま、多くの文化施設が休業を強いられ、感染防止対策として、あるいは政府による“自粛の要請”によって。また「ステイ・ホーム」や「ソーシャル・ディスタンシング(距離をとること)」が求められ、人と人とのコミュニケーションはいまだかつてなく制限されています。

こうした中でわたしたちには何ができるのでしょうか。文化を維持するために、好きな人や場所を守るためには何が? 離ればなれであっても連帯するには? この"非日常"を忘れないためには? さまざまなジャンルの第一線で活躍している方々にアンケートを実施し、そのヒントを探ります。

今回は、本日29歳の誕生日を迎えたミュージシャンの小袋成彬が登場。人口ボリュームが圧倒的に少ない若者たちが日本の社会を変えるために必要な「ある武器」について。

離れても連帯, KEEP-DISTANCE-IN-SOLODARITY

──コロナのビフォー/アフターで、変化した自分の考え方は?

今回のパンデミックを受けて、社会を見渡しているとどうしても書き残しておかねばならないと思い立って、この企画に遅れて参加します!

まず、亡くなられた方々に心から哀悼の意を表します。また、この戦いの最前線に立っている医療従事者に対して、この場を借りて改めて感謝を。ありがとうございます。あななたちに思いを馳せることで、20代最後の誕生日に友達に会いたい気持ちをなんとか飲み込んで、ロンドンの自宅でひとり、この文章を打っています。

私の住むイギリスでは、COVID-19によってすでに26,097人(2020年4月30日現在)が亡くなっていて、東日本大震災をはるかに上回る死者数になっています。二週間前はよく救急車のサイレンも聞こえていたし、今でもテレビからは逼迫した医療現場と分断された世界の叫び声が、絶え間なく流れ続けているのが現状です。

平成3年生まれの日本人である私にとって、これまでの29年間の現実はいつも厳しくて、絶望を感じることばかりでした。しかし今、長く暗かった現実に少しだけ変化の兆しが見え始めていて、今までよりも希望を感じはじめています。これからの新しい日本の中心を担うのは、間違いなく我々の世代だという希望です。

私たち若い世代が日本に希望を持つには、政治という手段はあまりにも無情です。土偶みたいな形の人口ピラミッドを見るたびに、シルバー民主主義が日本の若者にとっていかにアンフェアで破綻したシステムかを痛感させられます。若者が政治を通じて日本を変えるのは、超ハードモードなんです。わかっていても、誰も言わないですが。ちなみに私は2016年に諦めたので、移住して、イギリスに税金を払っています。(ちゃんと在外選挙人名簿登録してるし、日本には所得税も法人税も頑張って納めてるから叩かないでねっ!)

ちなみにイギリスでも、若者たちは別の理由で、政治に対する無力さを感じています。どれだけ若者がブレグジットに反対しても、与党・保守党が1987年以来の圧勝を実現する世の中です。その絶望を、俺はまさに目の前で見てました。

しかし俺たち若者は、世界を本当に変えることができる唯一無二の武器を持っています。先人たちが絶対に持っていない、最強の武器を。

それは「新しい価値観」です。

コロナショックであらゆる価値観が一変したのは、もはや説明不要でしょう。議会制民主主義のクソみたいな立ち回り、中間財の多いサプライチェーン、非効率な働き方。現代文化の復興には、新しい価値観が必要になります。

例えば、こんな非常事態にわざわざ出社させるようなハンコ文化に「アホか」と、やっと言えるようになりました。副業も、禁止どころか推奨されるようになりました。集団授業は、もはや過去の産物となりました。偏差値教育よりも、子供全員にPCを与えて個性を伸ばそうという声が、より時代に求められています。

これって実は、すごいことだと思います。

受け継いだ伝統よりも「新しい価値観」のほうが力を持つ時代って、明治維新以来、約150年間ほとんどなかった瞬間だと思うのです。

この風潮は、我々の生活の細やかな部分にさえ、変革をもたらします。

無駄な会議があれば「これオンラインでできませんか?」と、俺らから提案できるようになりました。これからは、先輩よりも仕事が早く終わったら、先に帰っていいんです。生産的な働き方が、これからの日本の復興にどうしても必要になったからです。

個性を生かし、クリエイティブな戦術を選び、多様性を祝っていくのがこれからの日本の姿だと、ラグビー日本代表が、平成の最後に教えてくれたじゃないですか。外国人風メイクなんて言ってるダサい雑誌や、やらかした芸能人を追っかけ続けるTV番組も、これからは僕らから「時代遅れ」と一刀両断していきましょう。誰かの生活を優しく想像することがより団結力をもたらすことを、今自分たちが実感しているはずなんです。

こうして「新しい価値観」を上の世代にしっかりと提示すること、その価値観に基づいて実践すること、これがすなわち、先人たちが我々に残した20年のツケを払うということだと思います。ツケというのは、誰かが払わなければいけません。つまり、我々世代の役割です。俺はコロナをきっかけに、そのツケを払おうと思うようになりました。たったそれだけで、本当に、日本が変わると思うからです。

さらに素晴らしいことに、多数・少数が意識される政治の世界と違って、たった1人の「新しい価値観」が世界を変えます。

これがまさに、我々だけしか持っていない最強の武器なのです。

いまから約150年前、新元号を「明治」に改めた日本は、明治維新と呼ばれる歴史的な大転換点を迎えました。ペリーによって半ば強引に開国させられた日本ですが、それから海外の技術を積極的に取り入れ、身分制度を撤廃し、教育制度を整え、文明を華々しく開化させました。当時活躍していた英傑たちは、実は驚くほど若いんです。大政奉還時、大久保利通は38歳、井上馨や坂本龍馬は33歳ですし、伊藤博文にいたっては29歳です。今度の新一万円札の顔になる渋沢栄一が、幕臣としてパリ万博へ随行したのも、27歳でした。彼は帰国後、フランスで学んだ株式会社という新しい概念とシステムをしっかりと日本へと広め、それが日本経済の礎となっていきます。

150年前の若い日本人は、広い国際的視野を持って、実践によって日本を近代化させたのでした。

さて、新しい時代を生きる同世代の若者たちに伝えます。

2020年、我々が価値観をアップデートさせていきましょう。

先人たちのおかげで高度な文明社会に生きている我々は、上司より効率的に仕事をして早く帰るだけで、このクソみたいな世の中を確実に変えることができます。もうこれ以上、時代や環境のせいにして文句だけ言って逃げるのはやめましょう。もちろんこういう考え方が苦手なひともたくさんいるはず(こういう考え方が、時に人を傷つけることも最近学びました)なので、そういう人こそ、その素敵な想像力を優しさに変えて、新時代を支えていきましょう。

シルバー民主主義においてはほとんど力を持たない我々ですが、SNSという道具を見事に使いこなし世論を作っているという意味では、新時代の文明において最もイノベーティブな人種なのです。さあ、自信を持っていきましょう。

俺は、この先も価値観をアップデートし続けようと思います。そして、ミュージシャンとして、新しくてかっこいいムーブを見せていくつもりです。

だって、150年に1度の大チャンスなのですから。

我々が、時代を創る番です。

最後に、状況が全く読めないうちは、STAY HOMEでお願いします。

改めて、犠牲者の方々には、心よりお悔やみ申し上げます。

小袋成彬

離れても連帯

Special Thank Kisshomaru Shimamura

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