制作するアトリエ。常に手を動かさなければ、と思う。(中瀬萌)

美術作家・中瀬萌「日本の自己責任論、文化のあり方を考えなおす必要がある」​【離れても連帯Q&A】

「フリーランス」に対する貧しい理解によって、日本の多くのクリエイターは補償を受けられない状況にある。美術作家の中瀬萌は、こうした状況を生み出しているのは、"自己責任論"と文化に対する認識の低さにあると指摘する。〈離れても連帯〉シリーズ第18弾。

by Moe Nakase and Sogo Hiraiwa
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20 April 2020, 2:00pm

制作するアトリエ。常に手を動かさなければ、と思う。(中瀬萌)

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大によって、日本ではいま、多くの文化施設が休業を強いられ、感染防止対策として、あるいは政府による“自粛の要請”によって。また「ステイ・ホーム」や「ソーシャル・ディスタンシング(距離をとること)」が求められ、人と人とのコミュニケーションはいまだかつてなく制限されています。

こうした中でわたしたちには何ができるのでしょうか。文化を維持するために、好きな人や場所を守るためには何が? 離ればなれであっても連帯するには? この"非日常"を忘れないためには? さまざまなジャンルの第一線で活躍している方々にアンケートを実施し、そのヒントを探ります。

今回は美術作家・中瀬萌が登場。日本の「文化」や「フリーランス」に対する無理解や自己責任論について。

離れても連帯, KEEP-DISTANCE-IN-SOLODARITY

──新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、今あなたが属している業界や産業はどんな打撃を受けていますか? 応援・支援するにはわたしたちに何ができるでしょう?

中瀬:現時点での2020年に展示予定をしていたものがすべて延期/中止になりました。夏にロンドンでのアートフェアへの参加や、台湾やアメリカでの展示企画のお話もいただいていたのですが、今のところペンディングになっています。日本での個展もなかなか立てれずにおり、今後の見通しが全く立っていません。

海外はもちろん、日本でも新型コロナウイルスの影響によって美術館や博物館の休館、アートフェアなどの開催中止や延期などが続いています。アートバーゼルの中止など、社会的経済影響も大きいです。そしてアーティストに限らずですが、所謂「フリーランス」「個人事業主」という立場の個人での活動を行っている人々の収入減への補償対象の狭さや給付額の少なさは、まさに死活問題になっていると思います。「フリーランス」の生き方自体が「自己責任」論として、非常事態が起きる前にリスクヘッジをしておくことが必要とまでも言われたりしています。

しかし、その様々な国民のリスクを救い上げていくのも国の仕事のひとつではないのでしょうか。たしかに、限られた財源のなかで何を優先するのかは非常に難しい判断であり、一人一人に対しての手厚い補償というのはもはや期待できないかもしれません。しかし、文明や文化なくして経済は動きませんし、成長しません。

具体的な支援の方法は、クラウドファンディングでの寄付や、たとえば作家の作品をオンラインなどで購入したり、音楽であればアーティストに還元のされやすいサブスクを選択利用し聴いたり、大きな額ではなかったとしても小さなことからサポートができると思います。そして前提として何よりもすべての文化、それに伴う経済の発展のためにも、私たちは文化の恩恵を受けることによって心身、思想、そして今この瞬間から始まっている未来が明るく豊かになっていることを忘れないようにいるべきだと思っています。

──自宅待機以降に新しく始めたこと、もしくはポジティブな影響・変化がありますか?

中瀬:もともと都内から離れた田舎で一人で制作していたので、外出自粛・自宅待機となった今でも制作環境や生活はほぼ変わっていません。ただ、都内にいる友達になかなか会いに行けなくなったり、日々チェックする情報に疲弊してしんどくなってしまっていたので、人に連絡を取る回数が多くなりました。前は自分から連絡するということをほぼしない人間だったのですが、こんなときだからこそ人との会話や、テキストだったとしても「言葉」を日常で用いること、そしてその声と言葉によって、自分の心がどれだけ安心と思考の整理ができるのかに気づくきっかけになりました。人と人に生きているのだと実感しています。寂しいと思える感情があってよかったと思いました。

──今の気持ち・気分を音楽で表すとしたら?

中瀬:きのこ帝国「明日にはすべてが終わるとして」

──コロナのビフォー/アフターで、変化した自分の考え方や、社会への認識があれば教えてください。

中瀬:私たちは常に政治下に生きています。そのなかで、国に対して訴えかける必要性・権利・意味があることを再認識しました。「フリー」の名がつく職種に就いている私たちは、何に対して自由を求めているのか、そもそも自由は創造から生まれるものであり、求めるべきものではないのか。日本における「自己責任論」について、まずは文化の在り方と認識を改めて考える必要がありますし、考えてこなければいけなかったことであると思います。

──自宅隔離中の人に試してほしい、オススメの行動やコンテンツを教えてください。

中瀬:無理に学ぼうとしない。無理に難しい本を読んだりしない。「学ぶ」の意識下から外れた、どうでもいいしょうもないことを楽しむ。お風呂に浸かって、あったまったら、Twitter見ないでさっさと寝る。

──2020年2月の自分に伝えたい・教えてあげたいことは?

中瀬:時間は戻せないので、特に伝えたいことはない。

──コロナ禍で人間の「良い面」も「悪い面」も浮き彫りになりました。あなたが見聞きしたなかで、忘れたくないと思う、印象的な出来事やエピソードがあれば教えてください。

中瀬:マスク2枚。

──コロナ禍が落ち着いた後、日本の社会にはどう変わっていってほしいですか?

中瀬:もちろん私自身も含めですが、一人一人が政治、そして選挙に対して意識・関心・緊張感を持ち続け、日本という国と向き合うことを諦めない社会。

@moe0814n

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