ヒップホップが次に向かう先とは。拡張し続けるkZmの音楽性。

ジャンルレスで予測不能。いまのkZmのビビッドな感性をパッケージングしたインタビュー。常にカッコよくて面白いカルチャーを探し求めているkZmのアンテナはいまどこに向いているのだろう?その嗅覚が生み出す、次なる新たな音楽とは?

by Tsuya chan
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28 July 2022, 8:00am

POP YOURSでのkZmのパフォーマンスに対する会場の熱狂はすごかった。連発されたヒット曲はもちろんだが、それ以上に、観客はkZmというラッパーの自由自在で予測不能な身体感覚に陶酔したのではないだろうか。ステージを駆け巡り、シャウトし、歌い、ラップする。その表現は、様々な音楽ジャンルを吸収し拡張し続けるいまのヒップホップの姿そのものだ。常にカッコよくて面白いカルチャーを探し求めているkZmのアンテナはいまどこに向いているのだろうか?そして、その嗅覚が生み出す次なる新たな音楽とは?ビビッドな感性に刺激される、いまのkZmをパッケージングしたインタビュー。

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──POP YOURS、大盛況でした。パフォーマンスから少し経ち、振り返ってみての感想は?

当日もMCで言ったけど、あれは楽しすぎて毎日やりたいよね。あのエクスタシーはなかなかない。天井が高くて、会場のヴァイブスもすごかった。

──大きい箱でどうなるんだろうって思ってましたけど、音響もロウがけっこうしっかり出ていて。

そうそう。アリーナ特有の、わざとリバーブで出せない感じの反響もあったし。自分のやってる音色(おんしょく)にすごく馴染んでた気がします。これまで作ってきた音楽をちゃんとああいう場で表現できて嬉しかった。

──MCでは「俺の出番早くない?」とおっしゃってました。

最初順番を聞いた時は、舐められてるなぁって(笑)。でも、それが外から見た俺の評価なので一回受け止めてから、じゃあ何を見せてやろうかと建設的に考えていきました。おかげでフルパワーでいけてありがたかった。

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──ステージを駆け抜けながら、アドリブを入れたりシャウトしたり、予測不能なステージが大盛り上がりでした。当日パフォーマンスで意識されたことは?

最近はもう自然体です。昔はもっとかっこつけてて。でも、いまは周りにいる5lackくんとかBIMくんとか、かっこつけてるのかもしれないですけど俺からすると本当にそのままの自然体でやってるように見えるんですよね。そういうところは見習わないといけないなって。全体的に、自分もありのままを出そうってモードになってる。

──kZmさんがフロアで踊ってたという目撃情報をいくつか聞いたんですが、特に印象に残ったステージは?

5lackくん。あとはTohji。リリース前の曲をいくつかやってましたけど、「Super Ocean Man」とかはスタジオで聴かせてもらってたので、改めて会場で聴いてブチ上がった。

──私はPOP YOURSを観て、今の日本のヒップホップは無理やりポップにならなくとも、王道に寄せなくとも、十分に今のままでユース層にポップなものとして受容されていると感じました。

世界的にもうヒップホップがそのままポップミュージックになっているしね。USは完全にそうなっていて、でも自分の場合、今年のXXLの Freshman Class2022って一人しか知ってるラッパーいなかったんですよ(笑)。自分が中学くらいの時に出会ったヒップホップってアングラなもので、「人と違うもの聴いてるぜ」っていう高揚感があった。自分はやっぱりその匂いが好きなのかもなって。

──最近のヒップホップがちょっとメインストリーム化しすぎちゃったと。

なので、最近はテクノやトランスなどのダンスミュージックに傾倒していて。やっぱり、自分の場合はポップになりすぎると興味が薄れてそこから逃げちゃうんですよね。でも、一生そこから逃げ続けるのも良くないと思ってる。自分がいまやってる活動は大きくなってきてるし土壌も広がってきてるから、やっぱり新しいことを追いかけつつも地盤を固めることもしないとって。その両方が最近はせめぎ合ってる。ずっと同じことをやってられないタイプだから。

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──国内でも、それこそTohjiやゆるふわギャングなど、ダンスミュージックに傾倒しているラッパーが増えていますね。kZmさんが最近ハマっているダンス系の音、足を運んでいるパーティはどのあたりでしょう?

テクノだったら最近はRinse FMの『Jossy Mitsu』っていうMIXがカッコよかった。国内だと、みんなのきもちっていうアンビエントトランスみたいな若い子たちがいて。Circus Tokyoで観たんだけどめちゃくちゃ面白かった。それ以外だと、遊びにいくのはだいたい翠月-MITSUKI-かSPREADが多いかな。

──CHAVURL のPeterparker69とかYoyou、efeewma、宇宙チンチラとかの面々って、音はもちろんだけどアティチュードも面白いですよね。そうすると、いま作っている作品はそのあたりのダンスミュージックの要素が入ってきている感じ?

入ってきてる。

──ロックはもうやらない?

それが、実は次にリリースされる音源はGliiicoっていうバンドと作った曲で。彼らの家のスタジオに入り浸ってて、一日に3曲とか作ったりしてる。とにかく曲作ってるのが楽しすぎて、制作三昧。ハードコアアンビエントというかハイパーグランジというか(笑)、あまり聴いたことない感じになってるはず。ちょっとみんながついてこれないような音になってるかも。ちょうど自分が「Aquarius Heaven」作ってた隣のスタジオにいてそこで知り合って、かっこいいじゃんって仲良くなった。セッションしたらめちゃくちゃ波長があって、最近はほぼ毎日一緒に曲作ってます。

──kZmさんといえば、多くのコラボでヒットを飛ばしてきました。

自分はフットワークがすごく軽いので、コラボしたいってなったらもう足が動いてて、フィーリングが合えばもう一緒に作っちゃう。音楽がかっこよければ良いとは思ってはいるけど、知らない人とやるのはこわいのでまずは会ってから。

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──最近はボーカル表現の幅もかなり広がってきています。

シャウトの種類とファルセットの使い方はかなり引き出しが増えてきた。いまの若い子って全員ラップ巧いし、もうスキルがあって当たり前。だから何言うかが肝心だし、もしくは何言ってるか分からないけどフロウがめちゃくちゃかっこいいっていうのがますます重要。自分は、フロウは普段聴いているものをけっこう参考にしてて。でも、真似しようと思って真似してもその通りにならないんですよね。不器用だから、自分の色が出ちゃって結果的に真似には聴こえないっていう。良いのか悪いのか分からないけど。模倣が巧いタイプではなくて、そこに自分が絶対入ってくる。

──今後、日本のヒップホップシーンをもっとこうしたい、という想いはありますか?

それは、めちゃくちゃある。いま日本のヒップホップシーンや音楽シーンを見てると、かっこいい奴がお金持ってない。88risingに日本人は一人もいないし。俺が一番好きなアーティストは宇多田ヒカルなんだけど、ようやくこのタイミングでああやって(コーチェラに)出たけどね。特に日本のマーケットは、ダサいところに降りたものを作ってたくさん売って、っていうのをぐるぐる繰り返してる気がするけど、それやっててもしょうがないですよね。むしろ、降りるのではなくそこにいる人たちをカッコよくしていくっていうのをやりたい。ちゃんと好きなことをカッコよくやって、認知もされてて、お金も稼げてるってなったらすごく夢があるし、自分はそういう存在になっていきたい。やっぱり、正当に評価されてないかっこいい若い子たちをフィジカルなイベントで紹介していくしかないのかな。時間はかかるけど、カッコいいものをみんなの身体の中に染み込ませていく。最終的には、そういうオルタナっぽいことをやりつつもメジャーでも戦えるような存在でいたいかな。

──それは、Awichさんの立ち位置ともちょっと違う。kZmさんらしいやり方。

そう。俺っぽいでしょ。

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CREDITS


Photography Yuji Kaneko 
Text Tsuya chan
Editor Riku Ogawa