i-Dが選ぶ、ルポールの『ドラァグ・レース』で必見のルック9選

ヴァイオレット・チャチキからビミニ・ボン・ボウラッシュまで、数々のファッションアイコンを輩出してきた人気番組から、9ルックを厳選

by Tom George; translated by Nozomi Otaki
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19 March 2021, 5:40am

Still from RuPaul's Drag Race UK

ファッション誌のポージングをまねるヴォーギングから、2019年メットガラのテーマ〈キャンプ:ファッションについてのノート〉まで、ドラァグとファッションはずっと持ちつ持たれつの関係性を築いてきた。

 ドラァグアーティストたちはランウェイ、レッドカーペット、誌面のイメージのモノマネをし、その代わりにジャン=ポール・ゴルチエやジェレミー・スコットなどのデザイナーは、芝居がかった、ジェンダーを超越するドラァグからインスピレーションを得てきた。しかし12年前、『ル・ポールのドラァグ・レース』の放送開始をきっかけに、本番組で描かれるドラァグと、ファッション業界におけるドラァグの境界線は徐々に曖昧になっていく。シーズンが進むごとに、Coachのバッグのリメイクや、Alexander McQueenの1999年春夏コレクションで観客を驚かせたスプレーペイントロボットの再現など、数々のクイーンたちがアップサイクル・ルックを生み出していった。

 番組卒業後、そのクイーンたちはSavage X FentyやMoschinoのショーに出演したり、PradaのキャンペーンモデルやOpening Ceremonyのコレクションのキュレーターを務めるなど、ファッション業界で広く活躍している。

 『ドラァグ・レース』ユニバースの発展と、そのファッション業界への他に例を見ない貢献を祝して、i-Dが本番組の歴史に燦然と輝く9つのルックを紹介する。

シーズン12 ジジ・グッドのブラック・ウェディング

 「絶対に自分のルックでヘマはしない」。i-Dのインタビューで、番組中で気に入っていないルックはあるか尋ねられたさい、LA出身のクイーン、ジジはこう断言した。ドラァグレースのかの有名なブルーのランウェイに登場するたびに最先端のアイテムで視聴者を魅了してきたジジにとっては当然の発言だろう。

 個人的に気に入っているという80年代のティーンの少女のプロム・スタイルから『ヘザース/ベロニカの熱い日』や『スクービー・ドゥー』を参照したルックまで、ほとんどの衣装は彼女の母親が制作したものだ。しかし、特に視聴者を驚かせたのは、ダラス・コールターがデザインした、ミニマルだが壮大な雰囲気を醸し出す、ランウェイに映える漆黒のウェディングドレスだ。Christian Diorのクラシックなシルエットにオマージュを捧げ、ギャザー入りのシルクにドラマティックなチュールを組み合わせたこのドレスは、Netflix『セリング・サンセット ~ハリウッド、夢の豪華物件~』で話題のクリスティーン・クインも結婚式で着たいとコメントしている。

Raja in RuPaul's Drag Race season 3
Still from RuPaul's Drag Race

シーズン3 ラジャのファビュラス・ドラァグ

 『ドラァグ・レース』OGのファッションクイーン、ラジャは、ハイブランドへのオマージュと唯一無二のドラァグスタイルで知られているものの、2011年の放送当時には、他の出場者にその真価を理解されることはなかった。

ラジャはパメラ・アンダーソン、ツイッギー、タイラ・バンクスなどのメイクアップアーティストを務めた経歴を存分に生かし、Vivienne Westwoodから着想を得たアイテムやブタの血で染めた『キャリー』ルック、そしてこの現代版マリー・アントワネットのルックを披露。サリー・ポッター監督『オルランド』にインスパイアされた、髪から首へと垂れ下がるパールと光沢のあるベルベットのグローブの組み合わせは、2021年のメットガラにぴったりだろう。

シーズン11 フィナーレのイヴィ・オドリィ

 フリンジのクラゲ、サイバーライオン、ダイナソーヒールなど、個性的なスタイルでシーズン11の優勝最有力候補となったコロラド生まれのクイーン、イヴィ。『ドラァグ・レース』フィナーレのリップシンクバトルは、このところ悪ふざけや露出を避けたパッとしないスタイルばかりで変わり映えがしなかったが、イヴィは自らの名声を損なうことなくみんなを驚かせることに成功した。その最たる例がラインストーンをあしらったこの奇妙な筋肉ドレスだ。砕かれた頭がい骨を模した魅惑的なヘッドピースは、まさに私たちの敬愛するフリーク・クイーンにふさわしい。

オールスターズ シーズン4 ナオミ・スモールズの”純白の天使”

1984年の映画『プリンス/パープル・レイン』のプリンスにオマージュを捧げ、フリルシャツ、ポンパドール、エレキギターでジェンダーの固定観念を覆したナオミ・スモールズ(名前の由来は伝説のスーパーモデル、ナオミ・キャンベルと、人気ラッパーThe Notorious BIGのあだ名ビギー・スモールズ)。「〈Erotic City〉が現実のものになった」と彼女は特徴的なゆったりとした口調でルックについて説明した。「天国でも私はセクシーなマザーファッカーなの」 もちろん、ちょっとした厚かましさがなければプリンスのトリビュートなんて不可能だ。優勝は逃したものの、スキンヘッドを披露するなど、2シーズンにわたる大胆なランウェイによって、彼女は本番組で最も愛されるファッションアイコンのひとりとなった。

 

シーズン10 アクエリアのマーメイド・ファンタジー

 人魚と聞いてすすで汚れた顔、水かきのある指、ズタズタの尾びれを思い浮かべる人はそういないだろう。しかしアクエリアが扮する、ボロボロになった不気味な海のクリーチャーは、石油流出、汚染、魚の乱獲によって海を破壊している資本主義の問題の本質を突いている。アーティストSsik Kiss(代表作は『Chromatica』リリース時のレディー・ガガの衣装)が手がけた首と胸を覆う黒光りするシリコン、毒々しいネオンブルーの涙からも、そのメッセージは伝わってくる。「いちばん無気力だけど、雑誌映えするマーメイドに変身した」と彼女は説明するが、まさにその言葉通りだ。

 シーズン13 シモーンのトレインルック

 米国版『ドラァグ・レース』のここ最近のシーズンには、ファッション感度の高いクイーンが多く出場している。なかでも一際注目を集めたのが、毎週ブラック・ファッションを讃えることに注力していたLA出身のクイーン、シモーンだ。自らの名前をかたどるヘアビーズがアクセントのビーズのツーピーススタイルに、グラマーなダイアナ・ロス、そして忘れてはいけないのがジゼル・ブンチェンのポラロイドドレスを彼女なりにアレンジしたルック。〈トレインルック〉がテーマの回では、リゾもお気に入りのマルコ・モンローがデザインした長く引きずるシアンカラーのシルクのデュラグを着用。デュラグが本番組に登場したのは史上初で、審査員たちを大いに沸かせた。

シーズン8 フィナーレのヴァイオレット・チャチキ

1年前のシーズン7で優勝を果たしたヴァイオレット・チャチキが再びLA中心部のオルフェルム劇場に戻ってきたとき、『ドラァグ・レース』きってのファッションクイーンが何を見せてくれるのか、オーディエンスの期待は高まる一方だった。フェティッシュなサブカルチャーへのファッション誌的なアプローチで知られ、アリアナ・グランデに「オーマイゴッド!」と叫ばせたヴァイオレットは、その期待を裏切ることなく、虫が這い回る血の気のない、静脈が浮き出た肌がのぞく、植物の複雑な刺繍が施された森の魔女のようなドレスで登場。上の動画の0:31の観客のように、私たち全員の目を釘付けにした。

オールスターズ シーズン5 〈自分の肌を愛して〉シア・クーリー

 スワロフスキーが全身に散りばめられ、だまし絵が描かれたボディスーツは、ボッティチェリによるルネサンス絵画《ヴィーナスの誕生》のオマージュ。海から現れ、成熟した体をあらわにするローマ神話の女神のストーリーを、黒人女性であることへの祝福を通して再解釈したシアは、首と手首のゴールドのアクセサリー以外何も身につけていないように見える。「〈自分の肌を愛して〉という言葉を受け入れられるようになるまで長い時間がかかった」と本シーズンの優勝者でSavage X Fentyのモデルを務めたシアは自身のInstagramで明かしている。「あなたは美人と呼ぶには肌の色が暗すぎるし、縮れ毛だし、フェムすぎる、とずっと言われてきた。だから今回のランウェイでは、黒人のありのままの美しさを受け入れたかった」

UKシーズン2 先史時代のビミニ・ボン・ブーラッシュ

 『ドラァグ・レースUK』の最新シーズンに登場したこのイーストロンドン生まれのクイーンは、パンクロックの美学、抜群のファッションセンス、一風変わった笑いのツボで、視聴者の心を鷲掴みにした。愛のこもったプリンセス・ジュリアのオマージュや、シアーなレースのヴィクトリア風のシーサイドドレス姿を披露し、ケイティ・プライスのモノマネでは司会者のル・ポールを大爆笑させた。しかし、一番の見所は番組後半、先史時代がテーマのランウェイで、他の出場者が骨やアニマルプリント、ボサボサのヘアスタイルやフェイス/ボディペイントを選ぶなか、ビミニがあらゆる生物の母なる存在、単細胞生物を模したドレスで登場した瞬間だ。腕の羽を揺らすとドレスのプリーツが緩やかに波打つ、このIris Van Herpenへの明らかなオマージュは、まさに目から鱗のアイデアだった。ビミニこそが真の女王にふさわしい。

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