Photo via Anthony Harvey - PA Images/PA Images via Getty Images and Instagram.

腰のタトゥー〈トランプ・スタンプ〉が空前のリバイバル

かつて性的な奔放さの現れとみなされていた腰のタトゥー。なぜ女性やクィアの若者は、今こぞってこのタトゥーを入れているのだろう。

by Laura Pitcher; translated by Nozomi Otaki
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14 May 2021, 1:11pm

Photo via Anthony Harvey - PA Images/PA Images via Getty Images and Instagram.

2003年、ブリトニー・スピアーズは、フェドラハットに、腰から妖精のタトゥーがのぞくローライズスカートという出で立ちで、レッドカーペットに登場した。当時〈トランプ・スタンプ〉と名付けられたこのタトゥーは、その持ち主と同様、世間からはふしだらで低俗だとみなされ、性差別的なジョークの定番となった。2005年の映画『ウェディング・クラッシャーズ』では、ヴィンス・ヴォーンが演じるキャラクターが、腰のタトゥーは「大当たり」だと豪語している。

 しかし、ドリュー・バリモア、ブランディ・ノーウッド、クリスティーナ・アギレラ、ニコール・リッチーなども、この位置にタトゥーを入れていた(その後消したひともいるが)。2009年には、トランプ・スタンプ入りのバービー人形まで発売されている。それから10年、誰もが愛するこの時代への究極のオマージュとして、トランプ・スタンプは見事復活を果たした。

ドキュメンタリー『Framing Britney Spears』のおかげもあり、2021年現在には、ブリトニーが公の場で激怒したことはもう悲劇とみなされていない。しかしブリトニーのこの反応こそが、彼女がメディアと音楽業界から受けていた、ミソジニーに満ちた扱いの現れだった。

今、ローライズジーンズからTバックまで、ありとあらゆる2000年代のファッショントレンドがリバイバルを遂げている(ミレニアル世代はがっかりするかもしれないが)。私たちのゼロ年代への不滅の愛こそが、腰のタトゥー・ブームへの道を開いたのだ。SNSではすでにその〈種〉があちこちで芽吹いている。Tank Air StudiosPaloma Woolなどのブランドは、Instagramでタトゥーシールを公開。さらにタトゥーにインスパイアされたTバックまで登場している。

それだけではない。今、トランプ・スタンプを永続させたいと願う人びとが、タトゥーアーティストのもとに殺到している。ニューヨークのタトゥーアーティスト、カイル・イングランドは数週間前、何年かぶりに腰のタトゥーの施術をしたという。その絵柄は子羊だったが、夏に向けて、さらにワイルドなデザインの注文が増えると彼は予想している。

 21歳のモデル、ネオンは昨年7月、カリフォルニアへの初旅行を記念して、腰に複雑な柄のタトゥーを入れた。彼女は〈トランプ・スタンプ〉という呼び名に嫌悪感はなく、自分の腰のタトゥーを心から気に入ったという。

 「(この言葉を蔑称として使う人には)街をわが物顔で練り歩く(※tramp around)のは最高にイケてる人だけ、って言いたい」とネオンは主張する。「このタトゥーのレッテルはまったく気にしてない。アイコニックだし、トレンドはトレンドに変わりないから」

ブルックリンを拠点とするデザイナーでRhee Studioのファウンダーのチェリー・キム(Cherry Kim)も、このタトゥーのレッテルに特に関心はないという。

「ここにタトゥーを入れることに不快感はないし、目立ちたがりだとも思わない。十代になる前に、トランプ・スタンプを入れた年上の女の子たちがローライズのトラックパンツやジーンズとTバックを履いているのを見て、ずっと憧れていた」と彼女は回想する。「私はただ、自分の夢を叶えたかっただけ」

 チェリーの腰のタトゥーは彼女のブランド名である〈Rhee〉だが、これは母親の苗字でもある。彼女は先月、思いつきでこのタトゥーを入れたという。

 「ずっとRheeっていうタトゥーをどこかに入れたいと思っていたんだけど、次のキャンペーンの撮影が迫っていて、それを写真に入れたら面白いんじゃないかと思って」と彼女は説明する。「ちょっとした皮肉を込めて、タトゥーアーティストにロゴの上に炎を描いてもらったの」

 タトゥーを入れる前夜に、位置について考え直したというチェリーだが、それは単に「自分の好みが数年おきにガラリと変わる」からだという。

 チェリーにとって、トランプ・スタンプを讃えることはエンパワーメントにつながる。しかし、もし男性が彼女のタトゥーを説明するために〈トランプ・スタンプ〉という言葉を使ったら、他の女性やその体を指す差別用語と同様に不快になるだろう、と語る。

 ここで彼女は重要な問題に触れた。それは、女性がタトゥーを入れる位置が、常に性的対象とされてきたという事実だ。そもそも、男性の体におけるトランプ・スタンプに該当する言葉は存在しない。

 女性の性的な奔放さとトランプ・スタンプを関連づける考えは、ゼロ年代の文化をめぐる対話にあまりにも深く浸透していて、2013年には、フランスの精神科医ニコラ・ギュゲンが、トランプ・スタンプを入れている女性の初体験年齢の低さを調査したほどだ(メディアがブリトニーが処女かどうかにこだわり続けていたことを思い出してほしい)。

しかし、腰のタトゥーを取り巻くイメージは、実際にその人自身のイメージに影響をもたらすこともある。ある研究によれば、タトゥーのある女性は男性に言い寄られやすく、性に奔放だとみなされやすいという。さらに、男性は、トランプ・スタンプを入れている女性に対し、不健康、モチベーションが低い、不誠実、心が狭い、信仰が薄い、知性がない、芸術を理解しない、というイメージを抱くことも明らかになっている。

そのルーツは女性蔑視に満ちているものの、今、女性やクィアの若者を中心に、腰回りのタトゥーやトランプ・スタンプのレッテルを見直す動きが広まっている。このムーブメントは、ティーンエイジャーたちが、かつて性的な奔放さや知性の欠如をほのめかすために使われた女性蔑視的なステレオタイプ〈ビンボ(※bimbo:外見は良いが知性に欠ける女性)〉を覆そうとしている現象と深く関係している。

 新時代のビンボと現代的なトランプ・スタンプは、セクシャライゼーション(※性的対象として扱うこと)を逆手に取り、次世代の極左派フェミニストに、客体化されてきた自分自身の体を取り戻す力を与えているのだ。

 TikTokでビンボを自称する19歳のエライオナ・クリエジウ(Eliona Kryeziu)は、90年代に人気のあったタトゥーから着想を得て、カスタムの蝶のトランプ・スタンプを入れた。「入れたのは19歳の誕生日の1週間前。よくローライズのパンツを履くから、何かキュートなものを見せたくて」と彼女は語る。

 「下品な感じで〈トランプ・スタンプ〉って言ってくるひともいる。私が気を悪くすると思ってるのかもしれないけど、そんなことはない。母は最初は反対したけど、今はかわいいと言ってくれる」

 18歳のミュージシャン、シマ(Shima)も、ゼロ年代にインスパイアされ、17歳のときに腰にタトゥーを入れた。「きれいだと思ったから、できるだけ早く入れたかった」と彼女はいう。シマが選んだのはハローキティのデザイン。その理由は「真面目に考えすぎないようにしたかった」からで、成人するときに腰にハローキティが描かれていたら面白いと思ったという。

シマ自身はトランプ・スタンプという言葉を気に入っているが、タトゥーが彼女の評判に与える影響を指摘した友人もいたという。「こういうタトゥーを入れると、男性に〈娼婦〉とか〈尻軽〉だと思われるから考え直したほうがいい、と諭してきた子もいた」と彼女は語る。

 「腰にタトゥーを入れることの影響とか、人からどう見られるかは考えていなかった。でも、私は自分がハッピーになれることをしたかったし、他人からどう思われるかなんて気にしたくなかった」

 トランプ・スタンプの復活によって、私たちはゼロ年代を代表するアイコニックなスタイルを讃えると同時に、かつてのタブーと体のセクシャライゼーションを改めて振り返る機会を得た。

 もちろん、このような現象が生まれたのは、現代社会に今なお蔓延している構造化されたミソジニーやスラットシェイミング(※社会が押しつける女性観に基づいて女性の性行動を批判する性差別)を解体し続けてきた結果だ。

2021年、彫ったばかりの腰のトランプ・スタンプとその下のヒップラインに沿うジーンズを通して、若者は自らの腰を解放しようとしている。そして、このムーブメントに続くべきは〈#FreeBritney(ブリトニーを解放せよ)〉だ。

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