少女たちの友情を30年間撮り続けたフォトグラファー、カレン・マーシャル interview

1980年代半ば、十代の少女たちの絆を捉えようとしたカレン。しかしプロジェクト開始の10ヶ月後、ひとりの少女の悲劇的な死によって、物語は思わぬ方向へ向かう。

by Zoe Whitfield; translated by Nozomi Otaki
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28 October 2021, 3:00am

1970年代、高校生だったカレン・マーシャルは、米国のフェミニズム運動の真っただ中に学生時代を過ごした。「周りの女性は皆、女性であることの意味について考えていました」と彼女は当時を振り返る。「1985年になると、それを話題にするひとはすっかりいなくなりました」

そのことに落胆したカレンが始めたのが、〈Between Girls〉だ。このアイデアは、十代の少女たちに芽生えた友情を追う30年ものプロジェクトへと発展していく。長年にわたって蓄積された写真、音声メモ、映像、インスタレーションは、今年10月に1冊の本にまとめられ、Kehrer Verlagから出版される。かつて「米国とは何か、米国を象徴するのは誰か」と問いかける、被写体に馴染み深い場所でのストリートポートレートに取り組んでいたカレンは、80年代半ば、公の場から離れたところで撮影し、もっと内面を掘り下げたいという願望に気づいた。「ドキュメンタリーの概念を活用することで、もっと心理学や社会学に関するものに目を向けようと思ったんです」

そこで彼女は50年代のローライフレックスを軽量の35ミリカメラに持ち替え、ニューヨークで16歳のモリー・ブロヴァーと出会い、女友達たちを紹介される。当時25歳だったカレンは、その後30年にわたって彼女たちを撮り続けることになる。

a young woman in a tank top leans against another woman sat on a chair
Jen and Leslie, September 1986 © Karen Marshall from 'Between Girls'

「最高だったのは、彼女たちと過ごした最初の日から、私は壁のハエのような存在だったことです。誰も私のことを気にしていなかった。もちろん、彼女たちとはずっといろんな話をしていましたが、私がいることを全く気にしていなかったんです」

自然に育まれた親近感とお互いへの信頼によって、カレンはバスルームでマスカラを塗ったり、ブランコで遊んだり、地下鉄に乗ったりという、彼女たちの何気ない日常を美しく捉えらえることに成功した。「高校卒業後、プロジェクトの映像を撮るために彼女たちを家に招きました。もう私が彼女たちの世界を訪れたり、彼女たちを呼び集めたりするのではなくなった。それが私とカメラとの異なる対話を生み出しました」

〈Between Girls〉で最も心を打つのは、突然の悲しみが少女たちに与えた目に見えない影響だ。プロジェクトが始まって10ヶ月、モリーは夏休み中に交通事故で亡くなった。17歳だった。彼女を喪った痛みは少女たちに決して消えない傷を残し、遺された少女たちの関係にひずみを生じさせた。「彼女たちはもう、これまでと同じような友人同士ではいられなかった。それはあまりにも難しいことでした」

明るく活発だったというモリーは、彼女が写る写真に添えられたエピソードから、写真集の表紙に使われた赤く光る彼女のポートレートまで、プロジェクトを通して存在感を放っている。「とてもつらいことです。今もモリーが生きていたらどうなっていただろう、と思います」とカレンは語る。

「プロジェクトを終わらせていた? それとも2、3冊の雑誌にエッセイを書くだけで終わっていたかも。そのまま乗り越えるられたかもしれない。でも、あの出来事によって(このプロジェクトは)立ち直るきっかけになり、感情と向き合うこともできた。あの出来事で意味ががらりと変わり、私たち全員にとってずっと強力なものになりました」

a young woman and man pose for a picture in formal prom clothing
Prom pictures, 1987 © Karen Marshall from 'Between Girls'

彼女は少女たちの最終学年まで、特別なイベントをカメラに収め続けた。だいたい週に一度のペースで行われていた撮影は、月に一度になった。彼女たちが二十代になると、カレンはインタビューのために彼女たちを再び呼び寄せ、さらに20年にわたってパーティーからパートナー、妊娠まであらゆる瞬間を撮影し続けた。当時、女性の物語は明らかに不足していたとカレンはいう。

「目にするものといえば、極貧生活を送る女性や非常に裕福な少女の話ばかりでした。社会の階層にばかり焦点が当てられていた。でも、私は自分が信じるものについて話したかった。それは文化的背景が異なる女性同士でも、誰もが同じような道を歩むという奇妙な風習についてです」人生における重要な年頃に築かれた絆について、そしてたとえトラウマ的な体験や長年の別離を経てもその絆が損なわれないことについて熟考しながら、カレンは本の制作に取り組むため、自分自身の友情についても思いを巡らせ、プロジェクトを振り返った。

「彼女たちの絆はとても象徴的です」と彼女はいう。「私自身にも、何十年も続く友情があった。7年話していなくても、3回言葉を交わすだけでお互いが今どんなことを体験しているかがわかる。そんな繋がりがあるんです。女性たちの成長を目の当たりにして、私自身、それがどれほど大切で、どんな軌跡をたどってきたものかを理解しました。あの頃の私の直感は正しかったと認められたような感じでした」

three women sat on a sofa talking
Leslie, Jen and Blake, 2000 © Karen Marshall from 'Between Girls'

モデルとなった女性のひとりは、若い頃は全く雑誌を読まず特に興味もなかったのに、20代後半で2冊のティーン雑誌のニュースエディターになったという。「彼女は私に感化され、あの年代の大切さに気づかされた、と言っていました」とカレンは数多くの録音から編集されたエピソードのひとつを共有してくれた。「あの年頃の彼女たちが、私を受け入れてくれたことを心から光栄に思います」

9月末にZoomでカレンにインタビューしたとき、この女性たちのうちの何人かがちょうど写真集を受け取ったばかりだった。緊張の瞬間だったが、返ってきた反応はとても熱烈なものだったという。「2人から連絡があったんですが、とても感動していました」とカレン。「今朝メッセージが届いたんです。『私たちの生活からこんなに美しいものを引き出してくれたなんて!!』と。私も同じ気持ちです」

Molly, Leslie and Jen © Karen Marshall from 'Between Girls'.jpg
women in a kitchen talking and holding drinks, the women in the middle is pregnant
Blake with her mother, Jen and friends, 1997 © Karen Marshall from 'Between Girls'
two women hug surrounded by people dressed formally
Blake, 1994 © Karen Marshall from 'Between Girls'
two women leaning on the wall that borders a river
Jen and Molly 1985 © Karen Marshall from 'Between Girls'
two young women sat on subway seats facing each other
Molly and Zoe, 1985 © Karen Marshall from 'Between Girls'

Credits


All images © Karen Marshall from Between Girls

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